1【短い平和】
「これでトドメだ、魔王!」
勇者の持つ剣がとてつもない輝きを放った。
「これで勝ったと思うなよ……。魔王は何度でも蘇るのだ……」
その剣は魔王の心臓を貫いた。魔王が消え去った。
そこらじゅうにたくさんいた魔物も、魔王の消滅と共に消え去った。
魔族は滅んだ。世界に平和が訪れた。
「王様に報告しにいこう」
見事魔王を倒し終えた勇者が帰路に着こうとすると、背後に何者かの気配を感じた。
気付いたときには時すでに遅く、勇者は致命傷を受けて、……死んでしまった。
一瞬の出来事だった。
勇者を倒した何者かは王様に報告しに、城へと急いだ。
「勇者を確かに殺しました」
それを聞くと、王様は大変喜んだ。
「ご苦労じゃった」
王様のその言葉が合図だったのか、数人の兵士がその者を取り囲み、一斉に串刺しして殺してしまった。
その死体に向かって言った。
「完全なる平和のためじゃ」
王様が思う、完全なる平和は実現した。
魔物に脅かされる事がない、人が安心できる世界。
人々は大いに喜んだ。好きな場所を我が物顔で歩いた。
戦うべき相手を失った兵士らは、テキトーに訓練するようになり、見た目も肥えていった。
それから100年が経過した。
人類は恐怖のどん底へと突き落とされた。
……魔王が復活したのだ。野には再び魔物が出現する。
人々はそれに対してあまりに無力だった。あちこちで栄えていた街や村も日を追うごとに滅んでいった。
次なる王様は頭を悩ました。答えは、出そうにない。
「勇者の血筋を引く者がいない」
ということが致命的だった。過去に魔王が現れた際に、大軍を率いて魔王討伐に向かわせていたが、ほぼ全滅していた。
しかも、今の兵士は平和ボケしており、戦闘経験も皆無に等しい。ここ100年で人口が多少増えたとはいえ、それでも足りるという保証はない。
「やはり勇者の力に頼るしかない」
それしか方法がないと思った王様は国の総力を挙げて勇者を探させることにした。
勇者と判別する方法は、実は王様自身もよく分かっていなかった。
それから間もなく、兵士に命令が下った。「どうにかして勇者を捜せ」と。兵士達は“どうにかして”が分かれば苦労しないと文句を言いつつも、渋々探しに行った。
誤字、脱字がありましたら教えていただけると嬉しいです。頑張って続きも書きます!




