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母の日である

『本日は、母の日、というものであるそうです』


 と、突然メナードが切り出した。

 ここはアヴァロンの泉のそばにあるピクニック用広場。

 そこにアヴァロンの使い魔達や精霊が勢揃いしていた。

 何故か?


 とある国での行事、『母の日』という存在を知ったからである。


 ちなみに今アヴァロンはこの国の上を通過中なので、その行事は適応される。


 手を上げる大福とわたあめ。


『『ハハってなーに??』』


 それにグロウが答えた。


『そりゃ、俺たちを生み出した存在だろ?……だよな?ヒウロ、母って創造者の別称だよな??』 

『不安げに僕を見ないでくれないかい?』

『コホン』


 メナードが席払いひとつ。


『ということでウィル様にひとつプレゼントを用意しようと思っております』


 ざわつく使い魔達。


『まてまていきなりすぎるだろ』

『こんなに急じゃ、良いものが贈れないわ!』

『なんでこんなにいきなりなんだ!!』


 使い魔達からクレームが入る。

 そのクレームを手で一旦静め、メナードが答えた。


『私もそれを知ったのが今朝だからです』


 堂々とした返答に、クレームを飛ばしていた使い魔達はスンと怒りを静め『じゃあ仕方ない』と諦めた。

 基本的に争いを好まない精霊の性質である。

 そう、そもそもプレゼントが嫌なわけではなく、良いものを用意する時間がないといういう憤りなので仕方がない。


 ちなみにメナードはウィルがマリにこの国にこういう行事があるという説明をたまたま聞いて知った事である。


『プレゼント…』


 クーが悩む。


『プレゼントねぇ』

『プレゼントォォ…』


 クーに釣られてみんなが頭を抱えて悩み出す。

 せっかくなら良いものをあげたい。

 役に立つものが良い。

 そして出来ることなら、サプライズをしたい。


 みんなの考えていることはほぼほぼ一緒であった。


『料理やお菓子作るのは?』


 ロックの提案にメナードは首を横に振る。


『今、ウィル様が使用中であります』

『あちゃー』


 ウィル様が台所入りすると、長い。

 グロウがメナードの近くに座るアヴァロンに声をかけた。


『おい、アヴァロン。お前は良い案ないのか?』

『ん? んー………』


 考え込むアヴァロンが、『あ!』と声をあげた。


『いま下をみてたらねえ!人間達がお花をたくさん買ってたよ!』

『花?』

『花ですか』


 なるほど、その手があったかとメナードが感心した。


 では、花を贈るとしてどの花が良いものか。

 花をむやみに摘むのは禁止されている。

 花は妖精や精霊のご飯でもあるから。


 花、花、と呟きながら一同考え込む。

 妖精達のご飯じゃなくて、綺麗で、量があって、ウィル様の役に立ちそうな花…。


『 お困りかな? 』


 そんな文字が書かれたスケッチブックを掲げた、ある者が現れた。

 全身茶色のタイツで、頭は巨大なリンゴ。

 そして何故か白い花で作った王冠を被ってた。


 アップルマンである。


 それを見て、メナードはハッ!!と思い付いた。









『『母の日おめでとう!!!!』』


 あちこちでクラッカーが鳴らされ、吃驚しているウィル様に花束を差し出した。

 花束の作り方なんて知らないので、枝を少し拝借してそのまま包んだ。

 アップルマンに協力して貰って、その枝だけ盛大に花を咲かせて貰った。

 赤いリンゴもハートマークにして貰った。

 良い匂いだし綺麗だしリンゴを食べれば魔力が回復して役に立つ!!


 ウィル様が我に返って花束を受け取った。


「わぁー!これみんなが??ありがとう!」


 ウィル様の笑顔に使い魔達は癒される。そして誇らしい。

 魔力を回しすぎてアップルマンがやつれていたけど、彼も本望だろう。


「実はね、僕もみんなのために用意したんだよ。はい、プレゼント」


 そう言ってウィル様が使い魔や妖精達にクッキーを配り始めた。

 花の模様があるクッキーだ。

 そうか、だから朝早くからウィル様が台所に籠っていたのかとメナードは納得した。


 そして感動した。


『ウィル様、ありがとうございます』

「私も手伝ったのよ」

「マリさまもありがとうございます」


 こんな方々に仕えられてなんて幸せなのだろうか。


『メナード泣いてる』

『泣いてるー!』

『泣いておりません!』


 ウィル様がコップを持ち上げた。


「さ!お祝い事だよ!楽しくいこう!

 かんぱーい!!」

『『カンパーイ!!』』



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