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もうひとつの地の果て

「じゃあ、留守をお願いね」


人形がこくんと頷いた。


「メナードとマリちゃんも、一号のフォローお願いね。ちゃんと活動するの初めてだからさ」

『全員に通達しておきましたが、万が一に備えて見張っております』

「私も!見張り頑張ります!…それで、あの。どのくらいで帰りますか?」


どのくらいで帰れるかなぁ?

往復も瞬間移動繰り返しながらでも結構掛かるし、何せあれがなぁ…。

前にやりあったときは三日三晩掛かっちゃって大変だった。今回は前よりも力がついたからそこまでかからないとは思うけど…。


「残念なことに日帰りは出来ないかも。でも何か緊急事態があったらすぐに呼んで、その人形を通じて跳んでくるから」


勿論条件を達成していない場合、目的のものは諦めるしかなくなるけど。

そうならないことを祈るしかない。


『待って待って!』


トテテテとチビ三人組がやって来た。


『これ!お守り!』

『三人で作ったの!』

『着けてみて!』


大福が手を突き出している。

何だろうと手のひらを差し出すと、ジャラリとネックレスが。

原色のままの木製ビーズ作品で、飾りのところに針金で球体状になった中にわたあめの毛で作られたポンポンと、二人の羽根が付けられていた。

お洒落。


「ありがとう」


首に掛けてみた。

馴染むなこれ。


『よかった!』

『ね!』

『ねー』


三人の頭を撫でてやり、メナードから弁当を受け取って出発した。


空を飛び、アヴァロンから飛び出してとあることに気付いた。


ネックレスから魔力の糸が伸びてる。

これ、何処にいてもアヴァロンの方向分かるのか。

凄い。いつの間にこんな技術を??


三人の秘められた才能に震えつつ、壁の上で働いている三人に手を振りながら目的の方向へ向かった。


クルクルクルーっと、久しぶりの空中散歩に心踊らせながら飛んでたら、グリーンドラゴンからの襲撃です。

一定距離で包囲していて、そっから僕がこうやって出てくるの待ってたのかな?と思ってたら違ったようで。


『ルル、グアールルルル!!!!』


すっごい吃驚した顔のまま三体ほどに突っ込まれた。


そのまま撃退しても良いんだけど、もし発信器みたいなものとか付けられてたら嫌だな。

そんでもって僕が不在なことを知らせて襲撃されるってもはもっと嫌だ。


「せやっ!!」


なので、平和的に混乱を起こすことにしました。


三頭の内二頭に、ライバルであるイエロードラゴンの幻覚を見せ、残った一頭の目の前でミラーの魔法を発動。

僕の姿が反転し、来た道を戻っていく風に見せ、本体は透明化によって包囲網を突破。


後ろを振り替えると、正常のドラゴンが幻覚に惑わされている仲間を取り押さえようと必死になっていた。


そのまま飛んで飛んで飛びまくって、途中でワープも挟みつつ目的地の島が見え始めた。



といっても実際に見えるのは紫色の霧だ。

千里眼でようやく島の形が見える程度。


「多重結界展開」


キンキンと甲高い音を発しながら僕を囲うように防御膜と結界が展開される。

あの霧はただの霧ではない。

硫酸並みの毒ガスが霧のようになっていて、しかもその霧の範囲からあるものがこちら側に来ないように人間側から“荊の城”という鉄条網みたいな結界が施されていた。

不可視の棘だらけの檻だ。


「形状変形」


それを千里眼で確認しながら棘の薄い箇所を見付けるや、結界を銃弾のような形に変えて一気に突っ込んだ。


いやはや、なんて恐ろしい場所なんだ。

人の吸える空気はなく、棘で傷つけられた結界が霧によって溶かされる。


それでもものの数秒で霧を抜けると景色は一変する。


「着いた…。もうひとつの地の果て」


そんな名前のここには、見渡す限りの花が咲き乱れ、壁のような岩の山がそびえ立っていた。



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