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やっぱり地形を変えました

空から森を見渡す。

やられたところはある程度戻したけど…。


「うーん…。今回はわりと行動が早いなぁ…。王国側もだけど魔界側も」


クルクルとその場で回りながら王国側の土地と魔界側の土地を見る。

この森はちょうど国境のど真ん中に存在している。あえて此処に森を作ることで両側にどっちにも付いてないよアピールしていたんだけど、双方逆の側に捉えているっぽいんだよな。


「めんどくさ」


心のそこから。


「しかたないなぁーもおー。思いきって地形を変えちゃおう!!せっかく安定していた生態系変えちゃってごめんね!!後で埋め合わせはするから!!」


ピッ!と両手を伸ばし、魔力を放つ。


「ふぅー、……おりゃあ!!!!」


空中で見えないものを掴み、持ち上げていく。

すると、森の周りの山々が持ち上がっていく。


鳥達が驚いて羽ばたき、虫も異常を感じて逃げ出した。

ああごめんよー!僕のせいでー!

でもやめるわけにはいかない!


カルデラの様にぐんぐん持ち上げ、一気に手を振り下ろす。

ベコンと音を立てて山の反対側が深い谷となった。

そこに雨を降らせて川を作り出す。

これで天然の堀になった。


「この空好きだったんだけどなぁ。しばらくは辛抱しなきゃ」


濃霧を発生させ、結界を張り巡らせる。

渦を巻かせ、中天は空を覗かせた。


こんなのでぜんぶ防げるとは思ってないけど、せめてもの嫌がらせだ。


………これ、巨大な木を生やしたらラピュ●になるな…。

空中都市か…。あれ?なんかかっこいいな!いつかやろう!


っと、その前に。


魔力探知であるものを探す。


「いたいた」


やっぱりいた。

転移跡が複数あったから、あのラビリンガスだけじゃないと思ったんだ。


風の上を歩きながら、察知した気配へと近付いていくと、案の定寄生魔蟲が巣を作ろうとしていた。


「出たなぁー監視カメラめ。プライバシーの侵害だぞっと」


ボンッ!!と蟲が弾けて消えた。


「まずは一匹。んーと、次はあっちか」


万が一にと今ここら辺に大事な使い魔達は近寄らせていない。

この寄生魔蟲は近寄った使い魔に寄生して乗っ取ってしまう厄介な蟲だ。しかも記憶ごと。乗っ取られたら最後。死ぬまで憑いたまま。


「僕の可愛い子達にそんな汚いもの憑けるわけにはいかないからねー」


僕が本気を出せば引き剥がせる可能性はあるけど、使い魔の子達にどんな影響があるかわからないから、そんな危ないことはしない。


ブチブチっと最後の一匹も潰して終わり。


「魔力核か。………」


ちょっと考えた。

今手のひらにあるのは形を潰して残った核。


この魔力の波長を変えて作り替えれば、違う種類の使い魔が出来るかも。


「作るにしても、まだ安定してない」


そりゃそうだ。僕が潰したから。


右手に核を集め、握って魔力を流し込む。

バチバチと抵抗していた魔力がだんだん僕の魔力に根負けし、穏やかになっていく。


手を開けば、大きなビー玉になっていた。


ニマニマと口が勝手に笑う。


「これは、いけるんじゃないのか?」


長年の野望、空中要塞が。



















二日後。


「…………」

「…………」


絶句している騎士と魔法使い三人と隠れて着いてきている私、つまりシャドウ。


「…こんなのあったか?」


騎士が言う。


「ありませんでした…」


と魔法使い。


目の前には断崖絶壁。手前には底の見えない谷。水の音が聞こえているから水はあるらしいが、落ちたら助からない。

叩き付けられなくとも登ってこられないだろう、どう考えても。


様子を見ると、明らかに騎士達は狼狽えている。

こんなの、とは恐らくこの崖だろうが。


(…いくら魔術師でも地形を変えることなどできるわけ…。あ)


そういえば山を消したみたいな噂があったが、本当だったのか?


「風の魔法で飛べるか?」

「短時間なら…」

「あれを越えるのは?」

「むりむりむり」


こそこそと相談している。

相談の結果、道を探すという事になった。


ウィル・ザートソンは大の人嫌いだが、どっかしらに道くらいは作ってくれるだろう。と、思いたい。思わせて。じゃないと帰れない。と、騎士は思っていた。思っているどころか全部声に出ていたけど。


トボトボと足取り重く、使者一行はあるかどうかも分からない道を探し始めたのだった。

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