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黄金の

黄金のリンゴ。

さまざまな伝承に出てくるそのリンゴは、諸説ある。

そもそもリンゴというのは木に生る全ての果実という意味があった。

なので、リンゴといっても国によって黄金のリンゴはオレンジという説や、トマト(果実??)という説もあった。

だけど。


「リンゴだなぁ」


どの角度から見てもリンゴ。

しかも金属のような艶がある。


「どれ」


指で指し示して、風を発生させて落とす。


つむじ風に乗ってやって来たリンゴは、やはり金箔貼られたのかと思うほどに金色だった。

そこまで固くはない。一般的なリンゴ並み。


伝説では不老不死になれるって言うのもあるけど。


「毒味はしといた方がいいよねぇ」


得体の知れないものだし。

僕なら魔力防壁でなんとかなる。


一口かじってみた。

何これ凄い美味しい。


一つ数千円もする高級果実があるじゃない?

まさしくあれ。


毒はない。

魔力は一気にMAX状態。


これでリンゴジュース作ったら間違いなく魔力補完薬になる。


「これはとんだ棚ぼただ。さてさて、問題はこれだね」


木は完全にラ●ュタの木。欠片が中の隙間に嵌まってて、ゆっくりと成長を始めている。

いずれすごく大きくなる。

となると、この木は表に同調させられないな。森を圧迫しちゃう。


「うーん、裏のままで、一ヶ所だけ繋げて道を作ればいいか」


次元を切り離す訳じゃないし、僕の魔法で作り上げた空間と繋げるだけだから簡単で安心。


もう二つリンゴをもいでから、道を作りつつ表に戻った。


色鮮やかになる景色。

裏だとどうしても色彩が落ちちゃうから仕方ないけどね。


「ゲート、……鳥居みたいなのでいいかな」


いかにも異世界への入り口ですって感じだし、何より楽。


手を振り上げると、土から盛り上がるように鳥居が生える。

ついでにしめ縄やらなんやらをトッピングして。


こんなもんかな。


「そこで覗き見してるお二人さん、おいで」


『!』

「!?」


ビクッと茂みを揺らす。

気付いてますよ。


おずおず出てきた二人。

リンリンとマリちゃんの頭に葉っぱが乗っかっていた。


「あああああのっ、悪気はなくて!」


怒られると思ったのか言い訳を始めるマリちゃん。


もー、そんなことで怒るわけないじゃん。

僕は心に余裕のある人だからね。それにきっと僕なら同じように視るし。


「はいどうぞ」


へ?と肩透かしを食らった顔のまま僕の差し出したリンゴを両手で受け取ったマリちゃん。


「リンゴ?」

「そ。食べていいよ。リンリンもね」

『ありがとう!』


艶々の黄金のリンゴを……ってあれ?


「あれ?」

「?」

『どうしました?』


色が、光沢のある赤に変わってる。


もしやと思って、食べかけのリンゴを見ると、なんとそちらも黄金から赤に変わっていた。

なんで?


「いや、大丈夫。なんでもないよ」


不思議そうにしながらもリンゴにかじりつく二人。


「んー!美味しい!」

『凄く甘い!わわっ、汁が垂れる…っ』


後ろを振り返ると、存在を同調させていない為に、元の姿のままのリンゴの木。実っているリンゴはどれも艶やかだ。

それを見ながらリンゴを齧るが、相変わらず美味しい。だが、効果は薄まっていた。


有効範囲があるのかな?


まぁ、いいや。

二人は美味しいっていってるし。


「ささ!それ食べたらマリちゃんとリンリンは僕と修行だよ」

「はい!」

『え!?私も!?』


リンリンが吃驚している。


「二人とも覗き見が好きみたいだから、その魔法さらに進化させて、遠目まで会得してみようか」


そう言えば青ざめるリンリン。

気付いてましたよー!

千里眼程ではないけど会得してれば何かと便利だ。


その後、怒られると思っていた二人の誤解を解きつつ、望遠鏡のようにピントをさらに遠くに合わせる方法を教えてやれば、国の隅々にまで見渡せるまでに成長したのだった。


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