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王、ぶちギレる

コンコンコンコンコン。


部屋のなかに人差し指でノックする音が響く。

空気は重く、従者たちはとばっちりを受けないように視線を逸らしてきた。


国王、ドトリゲスは苛ついていた。

生まれてこの方こんなにも思い通りにならないことなど無かった。右と言えば右になり、白と言えば黒も白になる。

なのに。


頭のなかに浮かぶウィル・ザートソン。


いや、実際に会ったことはないから噂でしか知らないが、ふわふわの鳥のような男と聞いた。

きっと梟のような豊かな髭を蓄えた男なのだろう。

梟は森の賢者の証。

いや、余をコケにする男だ。きっとネズミのような顔をしているのだろう。


イメージ上のウィル・ザートソンが凶悪な笑みを浮かべている。


「うるぅああああああっ!!!!(怒)」

「「「!!!!!??」」」


机の皿を果物ごとひっくり返した。


なんだこの心の底から沸き上がるイライラは。


ああそうだ。

ウィル・ザートソンが余の計画を狂わせたのだ。

使者を送り返し、何かの間違いだともう一度送り込んだ使者と最高の影すらボコボコにしやがった。

そして今度は魔王と会合してただと!?


城の目の前に倒れていたシャドウを尋問して聞き出した事だが、余を差し置いて、魔王と会合っ!?

真相を確かめるべく別の影も送り込んだが、全て壁に阻まれて侵入できず、シャドウに侵入の仕方を明かせるも人間業ではない為に参考にならん。


「ヌゥゥゥゥ……」


投げ飛ばした皿とは別の皿が運ばれてくる。

果物が山盛りの皿。

リンゴを手に取りむしゃぶりつく。

ああ、腹立たしい。


手が汚れた。


近くの従者の服で手をぬぐう。


しかし、こうなるとどうしたもんか。

無理やり連れてくるのは失敗した。

誰かを人質にするにしても繋がりがほぼなく、家族も勘当されていて、しかも貴族だ。

手荒にすれば何かしらの妨害が来るだろう。

困った。


「………まてよ。あやつはたくさんの使い魔を使役している筈だ」


魔法使いであれば一匹二匹動物型のを持っているが、あやつは人型の魔族みたいなものを数えきれないほど使役している。

……実は使い魔は魔物ではなく魔族なのではないのか?


とするのなら、奴は人間側ではなく魔族側なのでは!?

そうだ!!

だから余の命令に背き続けるのだ!!


「きけええええええええいいい!!!!」

「「「!!!!!??」」」


立ち上がり声を張り上げた。


「裏切り者のウィル・ザートソンを我ら人間の敵と認定する!!即座に引っ捕らえて来るのだ!!!」








伝令伝令!と王の使者が紙をばらまきながら町を走り抜けていく。


また別の使者は手配書を壁に糊で貼り付けている。

その手配書の似顔絵には凶悪な笑みを浮かべている豊かな髭の梟に似た男。そして名前には人間の裏切り者、ウィル・ザートソンの文字。


「…ウィル・ザートソン??」


そんな中、一人の旅人が全力で首を捻った。

どうみたって似顔絵と頭の中の知っている名前が一致しない。


「他人の空似?」


手配書は瞬く間に国中にばら蒔かれ、高額の懸賞金が掛けられた。

そしてそれはウィルの最寄りの街にも張り出され、街の人全員「絵の人誰?」と呟いた。









「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」


森の中、手配書を握り締めて一人の少女が必死に山を登っていた。


「はやく、はやくお伝えしなくては…」


杖を付きながら痛む足を動かす。


「ウィルさまに…っ!」



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