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ドラゴン

クッキー、ケーキ、そしてバームクーヘンへと移ったときにようやく僕の気配探知に目的のものが引っ掛かった。


「お前、男の癖によくそんなに甘いものが入るな…」

「そんなこと言っているマジリックだってチョコレートケーキに嵌まっているくせに何を言っているんだか」


三個目なの知ってるんだよ?


「それより目的の方がいらしたよ。ほら、立って立って」

「むぐむぐ…、うし!」


残った紅茶でケーキを流し込むとマジリックが立ち上がった。

口の横に食べかす付いてるけど黙っとこう。


張り直した結界を部分的に解除し、魔力を使って誘導する。

すると、すぐに大きな影がやって来た。


「おお…、お前マジか!?」


マジリックが冷や汗流しつつそれを見詰めている。

ふっふっふっ。凄いだろう凄いだろう。

僕を尊敬しても良いんだよ?


空一杯に広がるもふもふの羽毛たっぷりの翼。

凛とした顔。しなやかな尻尾。鹿に似た角。

キラリと艶のある鱗がなんともえろい。


「いつ見ても最っ高…っ」

「…おい、ウィル目付きヤバイぞ」


羽毛と獣毛と鱗をもつ完璧な生物が降臨なさる!!!

ああ!!見よ!!この世の愛すべき生き物を寄せ集めた究極な生物!!!!煌竜(コウリュウ)!!!!!


「おい!落ち着け!ちゃんと呼吸しろ!!!」


マジリックが僕を揺すっている。

やめてーや、煌竜様がちゃんと拝見できないでしょーが。


『ん?もふもふだけじゃないんだぁ』


煌竜様がしゃべった。


「お久しぶりでございます!!!!今日は姫様は!!?」

『安眠期に入ってる。だからぼく来たの』

「あらー、そうなんですかー」


安眠期なら仕方がない。


ドラゴン種の特性のひとつなんだけど、長く生きるドラゴンは数年に一度、安眠期といわれるものが来る。数ヶ月から数年の間ずっと眠るのだ。

眠るのにも色々理由があって、成長するためや記憶の整理のため、または進化するためとかいろいろ。

姫様はどっちなんだろうか?

楽しみ。


どすんと大きな音を立てて煌竜様が着陸した。


「てか、ゴルダ大きくなった?」

『分かる!?実は二ヶ月前位に安眠期から起きたの!』

「やっぱりかー、あんまり大きくなってるからゴルダって分かんなかったよ」

『えへへへ』


道理で三年前から見掛けないと思った。

凄いなぁ、最後にあったときは大型犬位だったのに、今じゃショベルカー程だもんなぁ。


「…ウィル、ちょっと」

「ん?」


マジリックに肩をつつかれた。なんだい?

まってなんでマジリックくんそんなに顔色悪いんだい!?

貧血でも起こした!?


「なんでお前竜の王族と知り合っているんだよ!?ふつう会うことさえ出来ないんだぞ!?」

「ふふふふ、そこはほら、僕の愛のセンサーが働いたのさ」


ああ懐かしい。

姫様が崖下で動けなくなっているのを介抱したのが始まりだった。そっからアチラヘ行ったりコチラヘ来たり。


ん?なんでそんな引いた顔をしているのかな?


『今日はどうしたの?遊ぶの?』


おっとゴルダを置いてけぼりだった。いけないいけない。


「今日はね、お願いがあって呼んだんだ」

『お願い?』


ビビっているマジリックを引っ張ってくる。


「この人ね、お家無くなっちゃって、しばらくそっちでお世話してくれないかな?」

「はああ!!??」


ゴルダがまじまじとマジリックを見詰め、うんと頷いた。


『良いよ!お家がないのは可哀想だもんね!』


無邪気な笑顔。可愛い。


「ばか!ばか!何考えているんだ!?まさかお前の言う土地ってのは竜の国の事か!?畏れ多すぎるだろ!?」

「なんで?天国だよ?自然多いし、火の精霊もたくさんいるし、魔力溜まりそのものだし、なにせ竜だらけ。幸せ。それに竜のちょっとって100年200年単位だからずっと居られるよ?」

「そういう問題じゃ」


ばくん。


「あ?」


ゴルダがマジリックの服を咥えた。


『じゃあ、連れてくね』

「初めてだからいろいろ迷惑掛けるかもしれないけど、よろしくね」

『うん』

「まてまてまてまて!!!」


バタバタと暴れるマジリック。

暴れたら危ないのに。


「背中が良いって」

『わかった』

「うぉおお!?」


ポイと背中にマジリックを放り投げた。

ナイス着地。


心なしかホッとしているマジリック。


「このまま乗っていれば着くから」

「…色々問いただしたい事はあるが、本当に大丈夫なんだろうな!」

「大丈夫大丈夫。僕も何回も遊びに行ってるけど良いところだし、天国だから」

『楽しいよ』

「ほら、ゴルダも言ってる」


ビビりつつも自身に多重結界を張り、超高度対策を施した。準備万端。決めたら行動が早いのはマジリックのいいところだよね。


ゴルダの首に僕お手製のお菓子を大量に詰め込んだ袋を掛ける。

運賃代わりだ。


『じゃあウィル。また遊ぼうね』

「うん。お菓子もっもたくさん用意しているから」

『わーい!』


マジリックには弁当。

メナードが用意してくれた。


「じゃあ気を付けて」

「おう。着いたら連絡入れる。弁当サンキューな」


だいぶ落ち着いたらしい。

今じゃ座り心地の良いところを探している。


『じゃあ行くよー!』


翼を広げ、羽ばたく。

ひとつの羽ばたきだけでフワリと浮き上がり、空へと舞い上がる。


風で舞い上がる綿毛の如くとはよく言ったものだ。


『じゃーねー!』


ゴルダが見えなくなるまで手を振り続けた。

癒された。

心のそこから。


スキップしながら家に戻る。


「あ!」


思い出した。


「…そういえば使者達にマジリックの家の案内の地図渡しちゃったんだっけ?」


しまったなぁ、もしかしてすれ違ったかも。


「……………。まぁ、いっか」
















地図に従いやって来た使者ご一行。


「…………」


目の前にある家の門には【売却中】の張り紙が張ってあった。

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