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丘陵を吹き下ろす風に、顔が強ばった。
灰色の枝葉が、うごめいて掻き鳴らす爪音が、平地よりも早い冬を感じさせた。
まだ街は遠い。
日が暮れる前に、着かないと。
ともすれば急いてしまいそうな気持ちを押さえながら、俺はめくれたフードを引き下ろした。
今日はもう、魔術が使えない。
魔力が底をついてしまった。
寒さを凌ぐ火の魔法も、風を防ぐ空間魔法も、干上がった指先では発動できない。
あとは体力勝負だ。
自慢じゃないが、根っからの文系魔術師の俺だ。
すでに気持ちは折れかけている。