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離郷の二人  作者: 勝華麗
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 一八六七年。

 南北戦争が終了してから、わずか二年後の時代。



 万を超える住民がいるキャロルトン。

 巨大な綿花プランテーションがあり、住民の三割以上がそこで働いている。



 そんな町に、ビル・バークホルター少年も住んでいた。



 空き地。



「うわっ!」



 視界が赤く染まった。



 一秒にも満たない時間差で、訪れる鼻への衝撃。



 堪えきれずに、ビルは倒れた。



「ルーザー! ビル・バークホルター!」



 審判が敗者の名を告げた。



 試合に勝った少年は、グローブをビルへ突き出す。



「相変わらず弱えなビル」

「何だと!?」

「柔らかい肉ばっかり食ってるから、顎が弱くて、身体もなよなよしてんだよ。いいとこの坊ちゃんはこれだから」



 見下され、蔑まれた。



 悔しくて、ビルは睨みつけながら立ち上がる。



「この勝者に挑む次の相手は――」

「ブラックがやる」



 審判の申し出に答えたのは、敗者のはずのビルだった。



 言い切ると、ビルたちを囲んでいた集団から、男が現れた。



 彼の名前はヘンリー・ウェルズ。



 その黒い肌は、周囲が白い肌だらけの中では異質だった。



 近づいてきたヘンリーへ、これまた白い皮膚のビルは自分のグローブを渡した。



「ブラック。こいつはぼくを馬鹿にした。やっちまえ」

「……はい」



 ビルの命令に、ヘンリーは頷いた。



 ビルが抜けて、空間がヘンリーと勝者の少年のふたりきりになると、ゴング代わりのバケツが叩かれた。



 カランカラン。



 少年はジャブを打つ。

 ガードするヘンリー。



 少年は隙間を通すような鋭いパンチを連打する。



「おらおらどうしたアフリカン! ビビッて手も出せねえのか!」



 革が勢いよく衝突し、鞭みたいな音を立てる。



 防御しているヘンリーの腕が内出血によっていくつも赤い痣が出来る。



「……」

「いくら法律で守られてようが、こと喧嘩じゃ別だ! いくらてめえが喚こうが誰も来やしねえよ! 家族も仲間もいねえてめえじゃな!」



 耐えられなくなってきたのか、ガードが開いてきた。



 少年は右拳を握りしめる。



「あいつには使えねえが、てめえなら遠慮はいらねえ! これでどっちが上か思い出しな――奴隷(スレイブ)!」



 放たれる右ストレート。



 届くより早く、ヘンリーはそれを潜り、下から拳を出した。



 レバーへの一撃に、少年は倒れかかる。



「……ま、まだだ。ルールは、顔に当てたら終わりだ」



 踏ん張って、負けを認めない少年。



「……」



 ヘンリーは態勢を下げると、逆側の脇腹を殴った。



「ぐふっ」

「……」



 まだ踏ん張る少年へ、何度もボディブローを見舞う。



 その光景に、観戦していた子供たちは青ざめていた。



 ついに少年の口から液体が迸った。腐った牛乳のような匂いが広がる。



 それでも続けようとするヘンリーだったが、強烈な力で首を後ろから引っ張られた。



「ブラック! ぼくの友達に何てことするんだ!」

「ぼ、坊ちゃん……」



 ビルが背後で鎖を掴んでいた。繋がれた首輪がヘンリーの喉へめり込んでいく。



 ヘンリーは動きを止めた。



 少年は無言で倒れる。とっくに気絶していたのが、拳によって浮かされていることで立っているように見えたのだ。



 勝者が告げられた。






 夕方、ビルとヘンリーは家への帰り道を進んでいた。



 ヘンリーは首輪を引っ張られながら歩いている。



「やりすぎだ馬鹿」

「申し訳も立ちません」



 頭を下げるヘンリーの顔は凸凹に腫れていた。

 試合後、その場にいた子供たちから袋叩きにあったのだ。



「向こうが許してくれたからいいが、ぼくの面子が傷つけられたどうするもりだった?」

「……自分が全てやったと謝り、がっ」

「おまえがいくら謝罪したって、道の邪魔にしかならないんだよ」



 話している途中で鎖を引かれ、詰まるヘンリー。



「いいか二度とこんなことするなよ! 次やったら首輪の内に棘でも仕込んでやる」

「わ、分かり、ました」



 喉が抑えられているせいで、つっかえながらヘンリーは答えた。



 ビルは鎖から力を抜く。



「ゼエ……ゼエ……」



 膝をついて、大きく呼吸するヘンリー。



「あの、坊ちゃん」

「ん?」

「わたしがボクシングを教えましょうか? 坊ちゃんも自分でリベンジしたほうがいいでしょうし」

「なにくだらないこと言ってんだおまえ?」

「……出過ぎたことを言いましたね。すみません」



 ヘンリーは詫びた。



 そのまま道に倒れていると、横に馬車が止まる。



 馬車から人が降りてきた。



「父さん」

「やあビル。友達との遊びの帰りかい」

「はい。今日はボクシングで、一番強いやつに()()が勝ちました」

「そうか。ビルは強いな」



 綿花プランテーションの経営者アダム・バークホルターは、そう言って息子を褒めた。



 アダムはビルに手を伸ばすと、髪をなでる。



 微笑む父を前に、ビルは嬉しそうにはにかんだ。



 手を放すと、アダムは隣へ目を向けた。



「ブラック……」

「何でしょうご主人様」

「貴様何をしていた!」



 持っていたステッキをヘンリーへ叩きつけた。



 地面に転がるヘンリーを、冷たい目で見下ろす。



 そこに先程までの優しい父の姿はなかった。



「わ、わたしは坊ちゃんの言う通りに……」

「それは当たり前だ! おまえがそんな顔になったということは、あのろくな教育も受けていないガキどもがビルの強さに腹を立てて襲ってきたってことだろ!」

「ち、違います」



 訂正するが、聞く耳を持たないアダムはさらにステッキを振り下ろす。



「ではビルの鼻が腫れているのは何でだ!? 何のためにおまえを雇っていると思っている! 盾の役目も果たせないのかこのニガーは! マザーファッカーは! クロンボ!」



 うずくまって震えることしか出来ないヘンリー。



 そうしている内に、ついにステッキが折れた。



 感触でそれが分かったヘンリーが安心した時、



「ぐわぁああ!」



 背中に二本の折れたステッキが刺されていた。



 地面をのたうち回る。血が土に撒かれる。



「はっはっはっ。黒人はそうやって踊ってればいいんだよ!」

「ところで父さんは何でこんなところに来たんです」

「レストランへ食事に行くのさ。当然おまえも来るよなビル?」

「はい」



 ヘンリーを気にすることなく、ふたりは馬車に乗る。



「ブラック。私たちが帰るまでに家の掃除を済ませとけ」

「……分かりました」



 馬車はヘンリーを道端に置いたまま去っていった。



 車内にはふたりの他にもうひとりいた。



 マシュー・バークホルター。ビルの弟だ。



 マシューはビルを目にすると、目を輝かせる。



「ここにいらっしゃったのですね。お兄様」

「ボクシングの帰りさ。連勝無敗のぼくをおまえにも見せてあげたかったね」

「うわー。すごーい」



 マシューは自分を疑いもなく尊敬しているので、とても可愛い弟だ。



「いいのですか? ブラックを追いていって?」



 別にマシューは同情したわけでない。逃げられる心配がないのかと訊いていた。

 

 アダムが答える。



「問題ない。奴隷じゃなくなったことで働き口が無くなったあいつが、自分から召使いとして雇われたのだ。他に行くあてもあるまい」



 奴隷解放後、着用義務は失われたはずなのに首輪を着けたまま自宅を訪ねてきたヘンリー。

 首輪の鍵は以前の主人が失くしてしまったらしく、ずっと外れない。



 帰る場所もなく、一緒にいる仲間もいなく、結局、現地人にタダみたいな金で雇われて奴隷のように扱われる。

 ヘンリーのような黒人は、この時代、珍しくもなかった。



 揺れる車体。



 バランスを保てず、アダムは壁に頭をぶつけた。



「運転手! 何をやっている!」



 何度も頭を下げた後、運転手はスピードを落とした。



「まったく。馬の扱いもろくに出来んのか。果たしてこの仕事を何年やってる……綿花プランテーションの従業員もそうだ。人手が足らない設備が足らないと言い訳ばかり並べおって。無いなら無いで工夫しろ。何のために給料を払っていると思ってる。貴様らの給料が高いから新しく人も雇えないし、道具も買えないのだろ」



 ブツブツと独り言を始めるアダム。



「それもこれも黒人どもが使えなくなったせいだ。あの北側の将軍め。常に目を配らせておって……いったい何のために私が高額の税金を我慢して納めていたと思ってる。本当に国家のことを考えているのなら、あの黒人どもを踏み台にして、もっと産業を活性化させるべきだ。どうせ使いつぶしたところでゴキブリのように湧きあがるほど数はいるのに。いや、いっそカラードどもなんかはいないほうが使える土地も増えて、世界は美しくなるはずだ」



「父さん。疲れているな」

「奴隷制度が廃止されたせいで働き手が減って、収益が赤字続きになりましたからね。土地を売って事業を縮小すればいいんですけれど、肝心の父が許容しませんから……それでも充分、お金持ちなのに」



 父には聞こえないように、兄弟は小声で話している。



「なあマシュー。夜の間、頼んでもいいか?」

「何をです?」

「少し出かける。ブラックも連れていくから、もしどっちかが呼ばれたら誤魔化してくれ」

「別にいいですけれど、結局、何で行くのですか?」

「父さんの仕事を順調にするためさ」



 ビルは窓から空を覗く。綺麗な夕焼けが広がっていた。

 やがて日は落ちて、天は黒く染まる。






 住民のほとんどが眠りについたと思われる時間。

 


 ビルとヘンリーは、ピケンズ郡庁舎前まで来ていた。



「なぜ夜中にこんなところへ?」

「ブラック。おまえはピケンズ郡庁舎の伝承を知っているか?」

「『窓ガラスに焼きつけられた顔』のことでしょうか?」



 じゃあ〝顔〟を傷つければ願いが叶うことも分かっているな?



 訊かれると、ヘンリーは頷く。



「今日は父さんの綿花プランテーションが成功しますようにって願いにきた」

「はあ」

「何だよその唖然とした顔は? ともかく行くよ。朝になったら願いが叶わなくなる」



 正面扉までヘンリーを急かす。



 ガチャガチャ。



「鍵まで用意していたのですか」

「いつかすることは決めていたからな。父の限界が近くなった。これで安らいでくれればいいが……父さんのストレスが軽減されたら、おまえがいじめられることも少なくなるかもしれないから、頑張ってくれよブラック」



 コピーの鍵で、閉じられていた扉を開いた。



 手持ちのランプで前を照らしながら、中に入る。



 受付に誰もいないことを確かめると、カウンターを越えて、奥へ進んでいく。



 廊下を移動していると、光が床に現れた。



「誰かいます」

「宿直だ。対策は準備してる」



 光が漏れている元の部屋に、職員がひとりいた。



 椅子に座って、コーヒーカップを口元で傾けている。



「どうするのです?」

「睡眠薬を持ってきてる。ちょうどコーヒーを飲んでいるから、そこに入れてやりたいが……場所が悪いな」



 職員は部屋の奥にいる。このまま過ぎ去っても気付かれないかもしれないが、もし途中でバレた時のことを考えると眠らせておきたいとビルは思った。



 どうやって睡眠薬を仕込むかと考えていると、職員は立ち上がってふたりに背を向ける。



「今だ。行けブラック」

「え?」

「おまえのほうが、足が早い。ほらさっさと行け」



 戸惑うヘンリーに粉袋を持たせると、部屋へ押し込んだ。



 姿勢を低くして、職員が飲んでいたコーヒーまで近づいた。



 職員は本棚で資料を探しているらしく、カップとは反対方向を見ている。



 素早く包装を解いて、中の睡眠薬をコーヒーに溶かした。



 床にしゃがんでいたヘンリーの目の前に、ペンが落ちた。



 音に反応して、職員は振り返った。



「やばっ」



 職員はペンを拾おうと、戻ってきた。

 


 下へ顔を向けて、床を探す。



 机の角に手をつく。

 その先にはヘンリーがいる。



 職員の視界が机の側面を映す直前、ヘンリーは音もなく机をバク転で飛び越した。



 横側から後方へ一瞬で移動した。



 結局、ヘンリーの姿は発見されず、ペンを見つけた職員は何気なくコーヒーを口に含んだ。



「やってきました」

「……」

「坊ちゃん、どうしました?」



 部屋から戻ってきたヘンリーは、ビルの様子がおかしいことに気付く。



 ビルは口をモゴモゴと何度か動かしてから、言いたいことを声にした。



「……よくやった」

「え?」

「だからおまえはよくやった! さっきの動きもすごかった!」



 ついビルは声を大きく出してしまった。職員に気付かれなかったのは、不幸中の幸いだった。



 ヘンリーは慌てる。



「すみません。聞こえてはいたんです。でも、初めて褒められたものですから、どう反応すればいいかが分からなくて」

「ふーん」



 恥ずかしくなってかしこまるヘンリーへ、ビルはカブトムシの死骸を見つけたような目をする。



 部屋を覗いていると、すぐに職員は居眠りを始めた。



「じゃあ行くぞ」

「うぐっ」



 ヘンリーの鎖を引っ張りながら、ビルは堂々と部屋の前を通り過ぎた。



 廊下の奥を曲がると、先に階段があった。



 新設された建物では、すり足で登っていけば大音が鳴ることもなかった。



 二階へ着いたビルたちは最北端の部屋へ行く。



「屋根裏部屋は『資料室』の上にあるんですか?」

「ないよ。ぼくが来たかっただけ。こんな機会でもなければ覗けなかったし」



 困惑するヘンリーを連れて、ビルは部屋に入る。



 アメリカ全土についての資料。有名な小説や絵本。町のありとあらゆる歴史の記録。様々な本が整理されて、少年たちの頭よりも高い位置まで置かれていた。



 ビルは適当に本を取って、読み始める。



 鎖を放されたことで息苦しさから解放されたヘンリー。彼は何もしないまま、そこに突っ立っていた。



「読まないのか?」



 ビルが尋ねると、ヘンリーは頷いた。



「はい。字が読めないのもあるんですけど、何よりも自分は本そのもの読んだことがなくて。興味自体、持てないのです」

「もったいないな」



 ビルは本を片手に持って、本棚を紹介するように両腕を広げた。



「いいか。本を読むと世界が広がるんだ」

「世界?」

「ああ。人間っていうのは自分で見たことあるものが世界なんだ。だけど本を読めば、実際に目にしたことが無い場所でも知ることが出来る。つまりそれは、自分の中の世界が増えるということだ。人間ひとりが世界全てに出向くことは無理だ。だけど知ることで世界を広げていけば、この地球を自分の世界にすることも、いや、宇宙すらも可能かもしれない」

「……」

「どうしたブラック?」

「いえ。何も」



 願いが叶うと信じていたり、坊ちゃんって意外にロマンチストですね。



 喉まで出かかった言葉を引っ込めるヘンリーだった。



 読書を再開するビル。



 ヘンリーは部屋の中を見回す。



 本棚を眺めるが、何の本なのかすら分からない。壁や床は綺麗に掃除されている。



 唯一あった窓へ目をむけた。



「ん……?」



 人影があった気がした。



 ランプをかざすと、窓の外の暗闇が映るだけだ。



 人が立てるようなところもないため、単なる錯覚だとヘンリーは考えた。



(第一、黒い人影がこんな暗闇で映るわけもないか)



 ヘンリーが見たと思った人影は、暗闇よりも深く黒かった。



 その内、満足したビルはヘンリーと一緒に外に出た。



 彼らは屋根裏部屋への階段に向かった。



「ここは何の部屋なんです」

「牢屋の監視室。屋根裏部屋は町で犯罪をしたものを一時的に入れる場所」

「大丈夫なんですか?」

「昼間、入れられた犯人たちはみんな刑務所まで護送されたからね。そもそも犯罪者がいるなら、ここに保安官のひとりふたりいるから」



 安全を確認すると、ビルたちは屋根裏部屋まで上がった。



 掃除がろくにされてないのか、臭い。おそらくカビなのだろうが、ランプ程度の光源では詳細までは分からなかった。



 壁をつたいながら歩き回っていると、ひやりとする感触を覚える。指先が窓ガラスに触れていた。



「〝顔〟なんてありませんよ?」

「外側にあるんだ。だからおまえを連れてきた」

「え?」



 窓の外から上半身を出したビル。その両足を、ヘンリーが抑えていた。



「ランプが重い! 地面に引きずられる!」

「だから自分がやりますって坊ちゃん!」

「おまえが父さんの幸せを願うわけないだろうが! どうせ金を置いて死んでしまえとか思ってるだろ……ぼくがやらなきゃ、意味ないんだよ」



 壁とくっついていた体を起き上がらせる。



 苦痛を訴えている形相の〝顔〟にナイフで傷つけた。



「やった」



 同時に喜ぶふたり。



 力を使い果たしたビルを、ヘンリーは中へと引き戻した。



「やりましたね坊ちゃん」

「うん。これで父の仕事が順調になればいいな」



 開いていた窓を閉じる。



 目的を終えたビルたちは帰ろうとする。



 その時だった。



 障害物に足を取られて、ビルは転倒し、ランプが手から離れて、床へ落ちた。



 ガラス玉が割れて、板に火が点いた。



「うそだろ!?」

「火の回りが早すぎる! 坊ちゃん、とりあえず今は逃げましょう!」



 脱いだ服で覆うが、それが火種になって余計に燃えてしまう。



 ふたりは急いで部屋から逃げる。



 階段を下りても火が追ってくるため、出口へ向かう。途中でヘンリーがあの職員を抱え、ピケンズ郡庁舎を彼らは脱出した。



 寝ている職員を放り出し、燃え上がる建物を見上げるふたり。



「ぼ、ぼくはこんなつもりじゃ」

「……」

「いくら綿花プランテーションの息子でも、こんなことしたら捕まっちゃう。それどころか父さんの足まで結局引っ張ってしまう……どうしよう……どうしよう……」



 震えた声をあげるビル。



 後悔と予想される悲惨な未来に苦悩している。



「逃げましょう」



 隣にいたヘンリーが言った。



「え?」

「しばらくこの町から出て、姿をくらましましょう。そしてほとぼりが冷めた後に、帰ってきましょう」

「で、でもそんなことしたら……」

「しなければ、坊ちゃんも、ご主人様も、ご家族みんなが辛い目にあうことは確実です」

「……」



 焼け落ちていく壁や柱。ピケンズ郡庁舎は崩壊した。

 


 この夜、ビルとヘンリーはキャロルトンからいなくなった。


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