第二話 異世界へ
とある数百、いや千人を余裕で入れる広間の中心に三つの光の玉が現れ、その眩い光で広間を照らした。
「きゃ!」「おっ!」「……何処だ、此処は?」
三つの光の玉の中から三人の男女が姿を現し、その内唯一の女の子が何故かバランスを崩され、危く転倒という所が丁度近くにある一人の男の子が救いの手を差し伸べて二人共倒れずに済んだ。
一瞬の出来事で驚いた男の子と女の子は悲鳴を上げてる中もう一人の男だけが周りを見回していた。
『マスター、どうやら此処があのメールが繋げた先のようです。』
エリーゼというものの声はこの場にいるあの男の耳に届いた。
「エリーゼ、当然だが此処は地球じゃないよな。悪いが周りの地形、建設物を元に簡易でもいいから地図を生成し、それらのデータで此処の文明がどれ程のものがを割り出しくれ。」
男は他の二人に聞えないように小さな声で囁いた。
『はい、判りました、マスター。少しだけ時間をください。』
エリーゼの声はまたその男だけが聞えた。
「あぁ、やってくれ。」
男は短く応えた。
「あの、大丈夫ですか?さっきから何やら一人で独り言を言い続けているんですけど。」
男の後ろから他の二人の中、女の子の方が話しかけてきた。
「うん、独り言?あぁ、大丈夫だ。体に不調はない。」
男は‘独り言’と言う言葉に疑問を感じたが、それが何を指した事なのか直ぐに分かり、返事をした。
「そうですか、よかったです。あの、ひょっとして貴方もあのメールで はい を……」
女の子は男に聞いた。
「あぁ、そうだが、も ていう事はお前達もそうなんだよな。」
男は女の子の質問に答え、確認をする為また同じ質問を返した。
男の質問に女の子は振り返り、後ろにいる男の子の方を見た。女の子の視線を感じた男の子もそれに応えるように女の子を見る。
「「……はい。」」
二人はアイコンタクトが取れたように互いを見ながら頷き、女の子は男の子の同意を得てまた男の方に向き、男の子も男の方に向き二人共タイミングを合わしたように同時に答えた。
「お前達はやけに息が合ってるな、ひょっとして知り合いなのか?」
妙に息ぴったりの二人に男は少し疑問に思った。
「はい!わたしとそこの彼はっ!あの、どうかしました?」
女の子が嬉しそうに男に話し、しかし未だ話は途中なのに男はいきなり後ろに振り返り、その大分先にある扉を見詰めだ。
その行動を怒らずただ理解の出来ない女の子は男に聞いた。
「ベル、気を引き締めろ。誰かが来る、しかも複数だ。」
男に代わって男の子が女の子にそう告げた。
「‼︎!」
女の子は男の子の言葉に少しの驚きを感じ、直ぐ警戒して男の子同様扉の方を見た。
ガチャ
やがて扉が開き、ぞろぞろと白一色のロープを身に纏った男と女が中へ入って来た。その白の群れの中二、三人だけがそれぞれ違う色の服を着ていた。
「¥$+×+%#°€÷〒.」
三人に近付いて行く群れの中の一人、動き易い赤のドレスの上に白銀の鎧を着た女が隣の白いロープを纏った老人に話し掛けた。
「¥€%.」
老人は短い言葉を返した。
「全く知らない言葉だな。エリーゼ、その人達の会話を録音してくれ。」
遠く離れそれて言って小さな声で会話してる女と老人の言葉は何故か男の耳に届き、男はまた小さな声で囁いた。
『最初の会話をも含め、既に録音済みです。』
エリーゼは即座に男の言葉に反応し、返事をした。
「じゃ、直ぐに解析『中です。』」
男が話す途中でエリーゼが割って入ってきた。
「……相変わらず優秀だな。なら、終わり次第即時翻訳の準備をしてくれ。」
言われるまでもなく自ら行動を起こしてるエリーゼに男は次の指示を出した。
『はい。』
エリーゼは短く返事をした。
タ タ タ タタ
大き過ぎた広間、その中心にいる男と男の子、そして女の子の三人は警戒を緩めずその場でじっと待ち構えている。
その三人に向かって来る白の群れの中、あの女と老人だけが三人の元に辿り着くまでの道中に数度言葉を交わし、他のものはひたすら歩き タ タ タ と言う足音を立たせていた。
そんな中白の群れが扉を開け、中に入って来て二分程の時間が経過し、ようやく彼等はあの三人の元に辿り着いた。
『解析完了です。地図の生成は完了し、並びに即時翻訳機能も活動可能になりました。』
エリーゼは男に報告した。
「タイミングが良過ぎるな。まぁ、良いと言う事に越したものはないしな、早速だが、翻訳機能を起動してくれ。」
男は直ぐに次なる指示を出した。
『はい、只今……起動しました。』
いきなり出された指示にエリーゼは文句を言わずそれに従った。
「よくぞ我等の世界 レ・ガリア へ来て下さった、遠い異世界の勇者よ!」
三人の目の前に立ち止まった白の群れからさっきまでかの女と会話していた老人が前へ出てきて、その両手を大きく広げ、救いを求めそしてその救いが今目の前にいるような表情で言葉を口にした。
「少し冷静になってください、大司祭様。彼等は世界を渡ったばかりでこちらの言葉を理解出来でいない筈です。」
老人の後ろに一人、その老人に仕えているような老人より少し若い男が老人の耳元で囁いた。
「おっと、そうであった。おい、誰か 圣杯 を持ってこい。異世界のものが来たのだ、その中にも 世界の血 を出せるようになった筈だ!」
老人 大司祭は隣のもう一人、白いロープを纏った男にそう指示した。
「はっ!」
指示された男は短く返事し、駆け足でその場から離れ列の最後尾へ向かった。
「……何者なんだお前達は?何でオレ達をこの世界へ喚んだ?」
その場で唯一老人達の話を理解した男は老人に指示を出された男が帰ってくるのを待たずに質問した。
「なんと⁉︎」
老人は驚いた。
「どうして⁉︎」
老人とほぼ同時にかの女も驚いて声を上げた。
「嘘だろ⁉︎」
老人の後ろにいるかの老人より少し若い男も驚いた。
「ねぇ、あの人さっき言った言葉って日本語だよね?」
老人達の驚いた姿を見てかの ベル と呼ばれた女の子は隣にいる男の子に確認する。
「そう言う風に聞こえるんだが、でもそれじゃあの人達の反応が分からない……もしかしたらあの人精神系の天賦を持ってるかも知らない。」
男の子は女の子に自分の推測を述べた。
「そうか、確かにあの人もわたし達と同じように 天賦 を持ってる可能性があるね!」
女の子は力強く男の子の推測を押した。
「言って置くがオレに 天賦 などの類は持ち合わせていない、これ嘘や冗談じゃなく本当に持っていないんだ。」
同じ結論に辿り着けた女の子と男の子に男はその二人の熱意に水を注し、否定の言葉を口にした。
「そんな!?それじゃどうやって...」
女の子は男の言葉に驚いた。
「大司祭様、聖杯 を持って来ました。」
老人に指示され 聖杯 を取りに行ったものが手に黄金の輝きを放つコップのようなものを持ち、急いで老人の元に走り寄った。
「おぉ、持ってきたか。では早速始めるとしよう。」
老人は 聖杯 を受け取り、両手でお茶碗を持つように抱え天に捧げんがのように頭の上まで持ち上げた。
『ブリーデ』
老人は 聖杯 を持ったまま呪文を唱え、その呪文に反応して 聖杯 は一瞬だけ白金な輝きを放ち、しかし本当に一瞬でしかなく直ぐにまだその光は消え元の黄金な輝きへ戻った。
聖杯 から白金な輝きが消えた事を確認した老人は手を少し下ろし、男に見せるように男の前へ突き出して来た。
「なんなんだ、それは?」
男は老人が見せ付けるように突き出した 聖杯 の中にある赤い液体を見て、不機嫌そうに眉を皺め、老人に聞いた。
「これが 世界の血 です。さぁ、これを三人で飲んでください。」
老人はそう言って 聖杯 をより一層前へ突き出した。
そのコップの中身を見てあの三人は戸惑った。