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星の管理者からの誘い

週2回程投稿予定。

エタらないよう頑張ります。

──2050年、日本


 この年、散々崩壊の危機が叫ばれていた年金制度が遂に崩壊する。

 それまで65、70、75歳と引き伸ばされていた受給も年金制度崩壊によりストップする事になった。


 早くから崩壊を予想して貯金を貯めてきた人はまだ良いだろうが、堪ったものではないのはワーキングプアと呼ばれる低収入で貯金どころか日々の生活がやっとの人達だ。


 この物語の主人公、田中一郎、75歳も年金崩壊の煽りを喰らった一人であった。

 

 一郎は受給スタートの75歳になって、申請をした月に年金崩壊のニュースだ、それまでやっていた仕事も申請月に辞めてワクワクしながら自身の口座に年金が振り込まれるのを待っていた一郎にとって年金崩壊は国からの死刑宣告にも近かい。

 

 

 一ヶ月後、貯金も底をつき、食事もままならない悲惨な生活を強いられていた一郎に遂に限界が来てしまう。


 風邪を拗らせた一郎は栄養失調と心労が重なり、回復する事もなくこの世から去るが、死に際にかすれゆく意識の中、自分の人生を思い返していた。


(俺の人生はなんだったんだ・・・・・・大切な人も居ない、楽しみもない、退屈で日々飯を食うためだけに働き生きた人生に何の価値が有るんだ? 次の人生は──やりがいのある仕事をしながら『のんびり』生きたいな)



 独身を貫いて家族も居なかった一郎は、孤独にひっそりと生涯を閉じたのだった。


 しかし──彼の人生はまだ終わらない。


──誰だ? 俺を呼ぶのは・・・・・・。

 

 永眠についた筈の一郎を覚醒させたのは、男とも女とも言えない中性的な声を持った人物? だった。


「起きて・・・・・・起きてください一郎さん・・・・・・」



 意識を呼び起こされ、覚醒した一郎の視界は謎の人物と、真っ白な世界に覆われる。


「・・・・・・何処だ此処は?病院?」

 

 自分の状況に疑問を口にした一郎は違和感を覚えた。

 

 (あれ? 声が若い?)


「あーいーうーえーおー」


 発声練習で自身の声を確認した一郎は確信する。


 (やっぱり声が若返ってる! それに、あんなに重かった体も絹の様に軽い! やっぱり今時の医療は流石だぜ!)


 此処は病院、目の前いるのはお医者様、そして自分の体の不思議も医療のおかげだと勝手に決め付け納得した一郎は、先程から表情を一切変えず、にこやかに自分を見つめる女性とも男性ともいえない人物に向かって、心の底からお礼の言葉を言った。


「いやー、本当にありがとうございます。お陰で体もすっかり元気です。しかしですな、俺金持っとらんのです・・・・・・年金崩壊の煽りを受けて無一文のすっからかんなんです──でもっ! 必ず払いますから! もうすぐ面接なんで仕事が決まり次第払いますから! 流石に一括では無理ですが・・・・・・」


 一方的に自分の気持ちをぶつける一郎に対して、これまた一切表情を変えずにこやかに微笑む人物はゆっくりと口を開く。


「一郎さん──私はお礼を言われる様な事はまだ一切してませんよ。それにね、此処は病院でも有りません。一郎さん、貴方は死んだんですよ」


「・・・・・・わ、悪い冗談はよして下さいよ」


「いえ、冗談では有りません」


 にこやかに微笑えんでいた人物は急に真剣な顔になると一郎を諭す様に見つめてくる。


「え、いや、死んだ? 俺が?──じゃあ此処は天国ですか?」


「天国でも有りません」


「じゃあ、何処だって言うんですか!? それに貴方は誰ですか!?」


「申し遅れました。私、星の管理者です。主に地球と何ヵ所かの星の管理をしているものです」


「・・・・・・それで、俺が死んだとしてこれから何が? 閻魔様の所にでも行くんですか?」


 やけに素直に納得する一郎を、星の管理者は感心した様に此方を見てホーっと呟く。


「自分の死をやけに早く理解するんですね」


「貴方の目は嘘、言ってないから」


「成る程、それって一郎さんの特技ですか?」


「ええ、あんまり得した事無いんですけどね・・・・・・」


「それはそうと、これからですよね! 説明しても?」


「ええ、お願いします」


 一郎の了承を得た星の管理者は、待ってましたとばかりにすらすらと説明を始めた。


「貴方には二つの選択肢が有ります。一つはこのまま眠りについて星の輪廻に戻り、生まれ変わるのを待つ──二つ目は私の代理としてある星の管理をして欲しい。私としては是非、此方の二つ目を選んで頂きたい」


 星の管理者の簡素な説明を聞いた一郎は、浮かんだ疑問を率直にぶつける。


「一つ目はなんとなく分かりますが、二つ目はさっぱりです。星の管理とはどういった事をすれば良いんですか?」


 一郎の疑問を聞いた星の管理者はニヤッといやらしい笑顔で答える。


「食いついて来てくれて嬉しい限りです! では、詳しくご説明しますね」


 星の管理者のいやらしい笑顔に不安が沸き上がった一郎だが、ゴクリと唾を飲み込み緊張した面持ちで説明を聞き逃すまいと耳を傾ける。


「星の管理と言ってもそう難しい事はありません! 一郎さんには、地球の環境とよく似た星で人口を増やし、文明を築いて頂きたいのです」

 

「特に期限も無いですし、あれしろこれしろとも言いません! まあ、一応目標は与えますが、無理にやれとも言いませんから一郎さんには『のんびり』やって頂いて結構です


 それと、一郎さんには特典として不老不死の若く強靭な肉体と飢えや渇きも感じない様に致します! 勿論、嗜好として食事も出来る様に致します。それともう一つ、人を増やす道具を授けますので是非活用して下さい」

 

 「最後に、先程期限はないと言いましたが──この仕事に終わりは有りません。人にとっては永遠に感じる時間を過ごす事になるでしょう──なので、一郎さんがそれを苦痛に感じて来たら途中でお辞めになって頂いても結構です。以上、説明を終わります! 何か聞きたい事が有れば是非」


 星の管理者の説明を一通り聞いた一郎は、説明が嘘ではない事を理解し、思案する様に手を組み目を瞑る。

  

 数分思案に耽った一郎はとりあえず聞きたい事を聞いてから決めるかと挙手をして星の管理者に質問を投げ掛ける。


「何点か聞きたい事有ります」


「どうぞ、納得出来るまでお聞き下さい」


 

「では──まず、その星に現在住んでいる人はどの位ですか?」

 

「いません」


「居ない!? ではどうやって人を増やすのですか?」


「先ほど申しました道具を使って頂きます」


「道具とはどのようなものですか?」


「こちらでございます」と、星の管理者が言った瞬間、一郎の目の前に子供の頃誰もが一度は回した事があるだろうガチャポンと呼ばれる物が現れた。


「こ、これは?! ガチャポン?」


「ええ、その通り──ガチャポンです。通称『民ガチャ』こちらを使って人口を増やして下さい」


 唐突な事に理解が追い付かない一郎をしりめに、民ガチャの説明を話す星の管理者は興奮した様子で鼻の穴を大きくしていた。



──以上が民ガチャの仕様です。お分かり頂けますましたか?」 



「ええ、多分・・・・・・大丈夫です」


「では、他にご質問は?」


「特に無いです」


 本当はまだ聞きたい事があった筈だったが、民ガチャの事で頭が一杯になってしまった一郎は考える事を放棄した。


「それでは今回の星の管理──引き受けて頂けますか?」


 一つ目は何処いったんだとツッコミたくなったが、まあいいかと思考を切り替え、短く『やります』と、首を縦に振った。


「良かったです! ああ、そうだ! 最初の目標ですが、人口100人の村を作って下さい! 目標が達成出来ましたら此方からコンタクトを取らせて頂きますので頑張って下さいね!」


「最後に一ついいですか? 何故私が?」


「あの子の要望通りの人だったので。まあ、細かい事は良いじゃないですか! それでは早速飛ばしますね!」



「ちょっと待って下さい!飛ばすって──


 言葉を最後まで発する事無く──

 一郎の意識は深淵に沈んでいくのだった。


面白いと思いましたら評価、感想お願いします。

ヤル気出ますので!

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