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夢オチ戦記  作者: MAΩ
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夢の始まり

ある夢を見た。

俺は最強の勇者で、世界の平和を守る唯一の希望。平和を脅かす魔王と戦い、勝利し、世界を救った。何の特徴も無いファンタジー作品の様な夢だった。だが俺はこれを夢だと思わなかった。寧ろ、いつか本当に勇者となって魔王と戦う"運命"を感じ—。


「まーたそんな変な事言ってんのか」

クラスメイトの影山(かげやま) 弾人(ばれと)が俺の壮大で素晴らしい夢の話を遮る様にして言った。

「へ、変とはなんだ!俺はただ夢の話をだな...」

「お前の語り口調はクセが強いんだよ。特に最後のとこ、運命感じなくてもいいだろ」

「う、うるさい!」

「はいはい分かったよ。そうだ宇宙(そら)、お前今日誕生日だろ。これやるよ」

「えっ、おっととと......ん?おい何だよこれ!?」

確かに今日は俺の14歳の誕生日だ。しかし、弾人が俺に投げつけたのは包帯と傷薬というとてもプレゼントとは言えない物だった。

「包帯は"中二病"のお前に似合うと思ってな、傷薬はおまけだ。それに...お前が"あの世界"に来るならそれは必要になるだろうしな...」

「あの世界?何のことだよ弾人」

「冗談だよ、どうだ?ちょっと中二病っぽかっただろ?」

「...ったく、冗談かよ」

弾人は良い奴だ。勉強もスポーツもできてクラスメイトからの人望も厚い。その上、イタい発言をする俺によく付き合ってくれる。

そう言えば包帯を渡されて思い出したが、弾人は時々怪我をしてるのか包帯を巻いてる時があったな...



放課後、弾人以外に仲の良い友達がいない俺は一人で家に帰る。決して寂しくはない。...決して。

帰路の途中、この街で一番大きな建物が見えた。その建物はパワードメモリーズ社、人の脳に関する研究で近年急成長中の企業、その支部だ。支部長は俺の父、夢神(むがみ) 天十郎(てんじゅうろう)。母もそこの研究員だったそうだが、俺が幼い時に病気で死んだ、と父から聞いた。俺はいずれ父の跡を継ぐ事になっている。将来が約束されているという現実に対して、本当は自分の夢を追いかけたい、そんな事を考えたりもする。

「夢、か...」

「...あの.........あの!」

「えっ...!?は、はいっ......何でしょう!?」

「さっきから呼んでたんですけどっ!」

「ご、ごめん...考え事してて。えっと確か...霧隠さんだよね?」

クラスの女子とはほぼ接点がない俺だが、霧隠(きりがくれ) 千里(ちさと)、彼女はクラス一可愛いと言っても過言ではないので、名前は覚えていた。

「そっ!同じクラスなんだから、さん付けしなくてもいいのよ。ところであんた、今日誕生日らしいじゃん」

「そ、そうだね。弾人に聞いたのかな?」

「そっ!それでねそれでね、あんたって中二病らしいじゃん、ほんと?」

「...それも弾人から聞いたのかな?」

「そっ!で?中二病なの?ねぇ?」

弾人め...女子とも仲が良いからって俺を話のダシにしやがって...

「自分では中二病と思わないけど周りからは中二病ってよく言われるwww」

「ふぅん...やっぱり中二病なのね」

ヤケクソでネットで有名な構文で返したんだけど完全スルーですか。まぁそりゃそうだよね。

「なら...今夜が楽しみね」

「え?それってどう言う意...」

「ようこそ、夢の世界へ」

彼女は俺の耳元でそう囁くと、走り去って行った。突然そんな事をされて、女子への耐性がない俺は赤面して、彼女の後ろ姿が小さくなっていくのをただ見ているだけだった。



その夜、家のベッドで仰向けになりながら、彼女の言葉の真意について考えたが、それらしい答えは出なかった。

弾人に俺の事を霧隠に言ったことを問い詰めると『悪かった、だが"必要なこと"だったんだ』と答えた。どう必要なんだよ!もう分からないことだらけだ!俺は思考を停止させ、眠りについた。心のどこかであの素晴らしい夢の続きを見たいと願いながら。



「ん・・・?もう朝?大して寝てないはずだが...」

日の光の眩しさに目を覚ました俺だったが、その眼前には、見慣れた部屋の景色ではなく、見た事もない世界が広がっていた。

「...は?一体どうなってんだよこれ......」

夢だと思った。だが明らかに夢ではない。自分の顔をつねってみたが痛い。痛覚がある。訳が分からない。俺はこれからどうなる。俺は...。

「来たわね、新たな勇者」

「............俺?」


こうして俺の「夢オチ戦記」は始まりを告げた。

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