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でーと・その2

 いや、まさかな……

 水族館なら都内でも近郊にでもあるだろう。

 それなのに、目の前の駅の看板には『大阪』と書いてある。


「やっほー! 来たよ大阪!」

「どうして大阪に!?」


 俺と春は水族館デートに来ていた。

 場所は東京から新幹線で8時間の大阪。

 だが、集合時間が朝だったため、時間は午後5時。

 そして、何故大阪に来たかというと……


「夢のジンベエザメに会えるよ!」


 と、ジンベエザメを見たかったらしい。

 たしかに大阪の有名な水族館『海遊館』はジンベエザメで有名だ。

 都内で住んでいても、その情報は耳に入る。

 まあ、ジンベエザメは良しとして、大阪に来たのもお年玉が余っているから良しとしよう。

 もう今から帰っても日付が変わるのはどうすればいいのか。


「よし、秋斗くん!」

「ん、ん?」

「ホテルに行くよ!」

「ふぁっ!?」


 こ、この子は何を言っているのか。

 高校生がホテル?

 しかも男女で?

 いや、早まるな俺。

 その気を起こしてはダメだ。

 まだ高校生……まだ高校生……

 必死に自制する。


「き、聞こえてるの?」

「え、あ、ごめん……」

「もー聞いてよ-! 行くよ-?」

「りょ、了解ー……」


 あーもうこうなったら流れに身を任せよう。

 どうとでもなってしまえ。




 そのまま俺は予約しておいたらしいホテルに春と2人で泊まった。

 食事は外でお好み焼きを食べに行った。

 せっかくの大阪なのだから、『粉もん』というのを食べてみたいじゃないか。

 ホテル代ももちろん払ったので、財布がかなり寂しい。

 事前に「お金はたくさん持ってきてね」と言われていたので、かなり持ってきたつもりだったのだが……

 帰ったらバイトを始めないとやばいかもしれない。

 ちなみに今はホテル内の温泉から上がり、部屋でゆったりしている途中だ。

 部屋は1人で、春はまだ温泉でリラックスしているだろう。


「本当に……どうしてこうなったんだ……?」


 天然ガールの春の事だ。

 きっと明日も大いにはしゃいでくれるだろう。

 でも、それはそれで楽しそうだ。

 今まで恋人がいた事のない俺からすれば、正しいデートなんてわからない。

 どうすれば春は楽しんでくれるだろうか?

 本当に悩ましい。

 それに、明日は学校だ。

 こんなに堂々と学校をサボるなんて人生で初めて。

 正直ドキドキしているが、それはそれでまた面白い。

 ボーッとそんなことを考えていると、部屋の扉が開かれた。


「戻ったよー」

「おかえりー」

「やっぱり温泉はいいねー!」


 温泉上がりだからか、まだ肌がほのかに赤い。

 さらに、ポニーテールに浴衣姿というのが破壊力抜群。

 春がはにかみながら手でパタパタと扇ぐ。

 その雰囲気が何だかとても色っぽくてついつい見とれてしまう。


「明日が楽しみだね!」

「そうだなー。あんまりはしゃぎ過ぎないようにな」

「分かってるって、もー! 前のはほんとに久しぶりだったんだってばー!」


 むすーっと頬を膨らませる春。

 なんというか、感情表現が豊かだなぁと思う。

 とりあえず「ごめんごめん」と謝っておく。

 それから気付いた。

 待てよ、これから寝るんだよな……?

 眠れる気がしない。


「じゃー……寝よっか!」

「お、おう……」

「……? じゃあおやすみー! とうっ!」


 春は電気を消してからぴょーんっとベッドにダイブする。

 それからピクリとも動かなくなった。

 え……寝てるの……?

 寝てるのか気絶してるのかわからないレベルで微動だにしない。

 それに、よく良く考えれば、この部屋はベッドが一つしかないではないか。

 流石に2人で寝るのもなぁ……

 正直気が引ける。

 致し方ないが、椅子に座って寝るとしよう。

 そう思って、部屋の奥にある椅子に腰掛けた。

 思ってたよりもふかふかだ。

 これなら心地よく眠れるだろう。

 だんだんと眠くなってきて、瞼が重くなる。

 意外と眠れるんだな俺って……

 意識が夢の世界へ旅立つその瞬間、椅子に何かが乗った感覚。


「ん……?」

「ねぇ……」

「は、春!?」


 椅子に乗りかかったのは寝たはずの春だった。

 浴衣がほんの少しだがはだけていて白い肌が見える。


「本当に……何もしないの……? 二人きりなのに……?」

「な、何言ってるんだ!?」


 いきなり何を言い出すかと思うと、両手を俺の肩に置き、グイッと顔を近づけてくる。

 その顔は暗闇でも分かるくらいに赤く染まっていた。

 かわいいというか色っぽい。


「ダメ……?」

「お、落ち着こうか!?」


 どんどんと近づいてくる。

 鼻と鼻がぶつかりそうな距離まで迫った途端、ふわっと春の力が抜けた。


「いでっ!」

「すかー……」


 ゴスンッと鈍い音を立てて、春の額が俺の額に激突した。

 めちゃくちゃ痛い。

 何のつもりか、と聞こうと思ったが爆睡している。


「え……どういうこと……?」


 春は心地よさそうな寝息を立てているし……

 しかも一番困るのが、体を全部俺に預けているというか、ベッタリと俺に引っ付いているということ。

 まあ、いわゆる抱きつかれている状態なのだ。


「う、動けない……振りほどくわけにもいかないし……」


 困った。

 本当に困った。

 なにより、かわいい。

 春の幸せそうな寝顔が可愛くてやばいのだ。

 夜。ホテル。二人きり。

 こんな条件が揃えば世の中の男子高校生全員が衝動に駆られるだろう。

 俺だってそうだ。

 悶々とした地獄だ、これは。

 だが俺は、このまま日付が変わり、春が目覚めるまで耐えるしか無かったのだった。

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