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でーと・その1

 どうやら春は生まれつき身体が弱いそうだ。

 激しい運動をすると喘息を起こし、下手をすれば倒れてしまう程に。

 春は一週間程入院し、どうにか退院することが出来た。

 俺も毎日のように病室へ通ったが、ベッドの上で病衣に身を包んだ春は元気そうだった。

 本人曰く、「せっかく彼氏が出来たのに、待たせてしまうなんて申し訳ない」という思いだけで全力ダッシュしてきたらしい。

 これには少し驚いたが、春が本当に俺のことが好きなんだという事が身をもって知れた。

 時々病室で出会った春のお母さんには少し不安な顔をされたが、挨拶は済ませておいた。

 まあ、娘の彼氏がこんな頼りなさそうな男ならそんな顔しますよね。

 といってもそこそこは仲良くなった。

 俺は一人暮らしをしているおかげで料理にはかなり詳しいので、春のお母さんとは楽しく会話することが出来たのだ。

 春もクスクスと笑ってくれていたので、一石二鳥の話題だっただろう。

 春が退院し、それから一週間がなんの変化もなく過ぎ去った。




 今日も何一つ変わらない平凡な高校生活だ。

 だが、俺は他の皆とは違い、少し、いや、かなり充実した高校生活を送っている。

 だって、こんなにも可愛い彼女がいるのだから。

 授業中にも関わらず、俺の事を見てニコニコしてくれる。

 とてもかわいい。

 彼女自身、十分に分かっているだろうが、念の為俺も「激しい運動は控えるように!」と言っておいた。

 身体が弱いのだから無理をして欲しくない。

 それに、デートももうすぐなのだ。

 退院してから少しして、春から連絡が来た。

 デートは次の日曜日。

 時間は九時に最寄り駅に。

 と、JKにしては趣旨だけの簡単なものだった。

 まあ、わかりやすくて助かる。

 とりあえず次の日曜日まで抑えきれないニタニタを隠して過ごさねば……

 放課後、教室でボーッと過ごしていると、咲夜が俺の机をバンッと叩いてきた。


「秋斗ー? お、この顔は何かいい事があるな?」

「咲夜か。無いよ別に……」

「いや、あるな……? 恐らく来週……日曜日くらいか?」


 なんだこいつは。

 エスパーか何かなのか。

 流石の俺もこれには動揺してしまう。


「お、当たりだな! 将来はメンタリストにでもなれそうだな俺!」

「まったくだよ……」

「で、何なんだよ?」

「デ、デートだよ……」

「あ、ふーん……」

「何その反応!?」


 本当に訳が分からない。

 自分から聞いておいて何なんだ……

 まるで彼女がいる事が妬ましいような……

 まさか……な……


「俺が別れたってのに、羨ましいよなぁ……!」

「やっぱり!?」

「やっぱりってなんだッ! お前もすぐ別れるかもしれないのにッ!」

「そ、それもそうか……ちょっと嫌だなぁ……」

「いや、真に受けんなよ……お前らは長く続くだろうよ。ラブラブじゃねぇか……」


 確かに今はラブラブかもしれないが、人生は何が起きるかわからない。

 春が急に別れ話を切り出すのも、十分ある話だ。

 恋愛いうのは本当に難しい……

 でも、あの咲夜が別れるとは……少し意外だ。

 惚気話をしない咲夜がどのようなものなのか、気にならないといえば嘘になる。

 だっておもしろそうだし……


「で、どうして別れたんだよ」

「聞いてくれるか!?」

「いや、聞かなきゃ帰してくれないだろお前……」

「それがな、他に好きな男が出来たとか言われてな! 後々聞いた話だと、もう付き合ってたらしいんだよッ! 俺、二股かけられたッ!!」

「ち、近いッ!? 二股かぁ……それも嫌だなぁ……」

「だろッ!? ショックでその日動けなかった」

「だから少し前学校休んだんだな……」


 高校生で二股など、幸先が思いやられる女の子だ。

 咲夜は少ししつこいが、そこに目を瞑れば存外良い奴なのに。

 顔も良いし、コミュ力も高い。

 おまけに頭もいい。

 別れた女の子はもったいないことをしたと思う。

 俺がその子なら絶対に別れない。

 すごい稼いでくれそう。


「とまあ……そういう訳だよ……」

「お、おう……そんなに気を落とすなよ……?」

「あぁ……リスカ程度に留めておくよ……」

「ダメだからな!?」


 この日はこれで解散となった。

 咲夜が本当にリスカしないか心配だが、大丈夫だろう。

 きっと多分おそらく。




 そんなこんなで気づけば土曜日の夜。

 デートは明日だ。

 準備をしっかりと整えねば……

 カバンに折り畳み傘や酔い止めの薬、その他ハンカチなどを詰め込んでおく。

 準備は万端だ。

 あとは緊張しすぎないように……

 頬をパシパシと叩き、気合を入れ直す。


「よし、明日に備えて寝るぞ……ッ!」


 張り切ってベッドにダイブする。

 といっても、そんなワクワクしたまま眠れるわけもなく、眠るのに1時間かかったのは笑い話になるかもしれない。

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