表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/10

ふつりあいかっぷる

 遠山春と交際することになった。

 それを調子に乗って咲哉に話したところ、一瞬で学校中に広まったので許さない。

 祟ってやる。

 そんな事があり、今やこの学校NO.1の不釣り合いカップルとなってしまったわけだ。

 まだ付き合い始めて三日目。

 特に変化は無いが、あるとすればお互いの呼び方が変わったくらいだろうか。


「あっ、秋斗くん、おはようっ!」

「あ、あぁ。おはよう、春」


 ぎこちない、特に俺が。

 人生で初めての彼女といっても、ここまでテンパって震えることはないだろう。

 自分で自分が情けない。

 教室でもついついよそよそしい態度を取ってしまう辺り、本当に大バカ野郎だと思う、俺が。

 それにしてもどうして俺なんだろうか?

 付き合っている彼女に対して、疑いの気持ちが無い訳ではない。

 だって美人が影のような男子と付き合うなんて、新手のイジメと疑ってしまうではないか。

 本当に謎だ。

 また機会があれば聞いてみよう。




 放課後になった。

 今日が最後の午前授業になるので、クラスのみんなはガッカリしている。

 お昼から遊べるというのは嬉しいからだろう。

 そんな暗い雰囲気の学校の中で、恐らく俺だけがドキドキして立っていた。


「どうしよう……」


『彼女からの呼び出し』だなんて初めてだ。

 まあ、彼女がいなかったのだから当たり前だが……

 こんなにドキドキしているのには理由がある。

 ちゃんとしたやつだ。

 俺は放課後に多目的室で待っているように、と春に言われたのだ。

 青春だね、まったく。

 いったいどんな話なのだろうか。

 相談か何かだろうか?

 それとも、デートのお誘い?

 どちらでも最高じゃないか!

 ───といっても、既に待ち合わせ時間から十分もオーバーしているが……


「来ないなぁ……」

「お、お待たせ……ッ! はぁ……はぁ……」

「うおっ!? ビックリしたっ!」


 ポツリと呟いた瞬間、凄まじい足音と共に多目的室のスライドドアが思いきり開かれた。

 現れた春はゼェゼェと肩で息をしている。

 よっぽど急いできたのだろう。

 見ればわかるほどに疲れていた。


「はぁ……はぁ……私……うっかりしてて……時間……忘れちゃってて……」

「だ、大丈夫だから! とりあえず息を整えようかっ!」

「ひっひっふー……ひっひっふー……」

「それは妊婦さんのやつね!?」


 あ、この子天然だ……

 察してしまった。

 春は凄まじく天然だ、多分。

 でも、それがかわいい。

 俺的に点数が高い。

 この多目的室は一面畳張りだ。

 元々柔道部が使っていたそうだが、現在は廃部になり空き部屋と化しているらしい。

 とりあえず、壁に三角座りでもたれかかった。

 静まり返った部屋で二人。

 しかも、隣にいる彼女は息を荒らげている。

 何やらいやらしい想像が頭をよぎった。

 いかんいかん。

 そういうのはまだ早い。

 というか、早すぎる。

 まだ付き合って三日だぞ?

 しかも相手は恐らくピュア。

 何も知らないだろう。

 そんなもの汚すわけにはいかない。

 三分程経って、やっと息を整えた春が口を開いた。


「待たせちゃってごめんね?」

「いや、大丈夫」

「ありがと。で、話っていうのはね……」

「うん?」

「デ、デートに行きたいなぁ……と思いまして……」

「デ、デートですかっ!」

「さようにございまする……」


 考えはしていたが、まさか本当にデートのお誘いだったとは。

 春も緊張しているのか、話し方がおかしくなっている。

 敬語になった俺が言うのも変な話だが……

 デート。

 こんな可愛い女の子とデート。

 やばい、ここは夢の世界か?

 夢じゃなければ、現実か!

 まじか! おかしいぞ。

 俺はこんなに幸せになれるようなことはしていない!


「それでね……行きたい所があるの……」

「どこ?」

「水族館に行きたいの!」

「へ? 水族館? どうして?」

「実は私、小さい頃からあんまり外に出なくってね……水族館行ったことないの」


 なるほど。

 初水族館がデートか。

 なんだか素敵だ。

 俺は幼い頃によく行っていたが……

 春の目が期待でキラキラと光っている。

 かわいい。

 絶対に賛成だ。

 こんな可愛くお願いされて断るやつは男じゃない。


「もちろんいいけど……どこの水族館がいいとか、大丈夫な日とかある?」

「だ、大丈夫な日……!? いきなりどうしたの秋斗くん……」

「ちげーよッ! どう考えたらいきなりそんな話になるんだよッ!」

「はっ! そういうことかっ! ごめんごめん……ついっ!」


 てへっと舌を出す春。

 かわいい許す。

 意外と変態か、春は。

 知識がありすぎるのもどうかと思うが、程よくあるくらいなら俺は良いと思う。

 女の子とそういう話をするのは意外と楽しい。

 彼女とするのはどうなんだって話だけど……


「そういうのはまた後日決めよっか! 私この後予定あるから、またね! 今日は来てくれてありがと!」

「お、おう……またな」

「バイバーイ!」


 ピューンという効果音が鳴りそうな感じで出て行った。

 自由気ままで天然のようだ。

 ますます可愛い。

 というか、俺はいつから春にベタ惚れになっているんだ。

 でもまあ、一応彼氏だしそれくらいでもいいか。

 そうだ、俺は春の彼氏なんだ。

 自信を持とう!

 明るい雰囲気の方がきっと春も楽しいだろう。

 悩んで暗い雰囲気を出すのは得策ではない。

 明るくいよう、明るく。

 決意して立ち上がる。

 外はまだ明るいし、帰り道に本屋でも寄ろうか。

 新しく出版された小説を買わなければ。

 続きが気になるし。

 と、多目的室を出た瞬間、目を見開いた。


「春……?」

「はぁ……はぁ……」

「おい春! 大丈夫かッ!?」

「はぁ……秋斗……くん……」


 春が廊下に倒れていた。

 息を荒らげるほどしんどいようだ。

 額に手を当てると、確実に熱のある温度が伝わってきた。

 顔を真っ赤にした春が、苦しそうにしながら俺の手を握りしめる。


「お願い……救急車……」

「あ、あぁッ! すぐ呼ぶからッ!」

「あり……はぁ……はぁ……がと……う……」


 急いでスマートフォンをポケットから取り出し、119と入力する。

 すぐさま発信ボタンを押し、耳に当てた。


「もしもし! 聞こえますか!?」

『はい。どうしました?』

「女の子が一人、とんでもなく高熱で倒れました! 場所は都立第四高校! お願いしますッ!」

『分かりました! 可能なら冷やしてあげてください。すぐに行きます!』


 ブツンと電話が切られる。

 全身冷や汗が止まらない。

 どうしよう……本当にまずいのではないか……?

 あんなに水族館を楽しみにしていた春はどうなってしまうんだ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ