ぷろろーぐ
荒城秋斗、現在三十六歳。
仕事は大手企業の係長、人望はそこそこ。
主婦として働く妻と二人の子供に恵まれた、平凡な家庭で過ごしている。
とりあえず我が子達を紹介しよう。
まず、長男の幸也。
俺に似て比較的高身長の八歳だ。
最近小学校の運動会のかけっこで一位になった事が自慢らしい。
そして、長女の桜。
こっちは妻に似ていて、明るく笑顔の絶えない六歳。
趣味は折り紙で、休みの日は一日中折り紙をしている時もある。
そんな何の変哲もない、幸せな家庭だ。
ある秋の日の夜。
俺は仕事帰りに同僚と居酒屋で呑んだくれて帰宅した。
酒には強いので少しフラフラとしていたが、意識はしっかりとある。
リビングのテーブルに腰掛けると、台所から妻がやってきた。
「秋斗、大丈夫? 呑みすぎよ? これ、お水」
「あぁ、ありがとう。久しぶりに騒いじゃって」
「もう……子供じゃないんだから。子供達の見本になるような立派お父さんになるんでしょ?」
「そうだなー。そんなこと約束したなー」
妻が出してくれた水を一気飲みし、ふらりとリビングの隅にある本棚を目指す。
三段ある内の一番上の段の右端から、一冊のアルバムを抜き取った。
アルバムの表紙には『Memories』と書かれている。
俺はふらつきながらテーブルに戻り、イスに腰掛けてアルバムを開く。
中には大量の写真が貼ってあり、どの写真にも共通の人物が写っていた。
それが何ページも続き、最後のページには一枚の手紙が挟まれていた。
「また懐かしい物を見つけたのね」
「あぁ……本当に懐かしい……」
「なに? 泣いてるの? みっともないなぁ……」
「今晩だけ……今晩だけだから……」
「全く、仕方ないお父さんね……」
俺は自然と零れる涙を他所に、写真を一枚一枚目に焼き付けていく。
この記憶は、決して薄れることはない。
ずっと心の中で俺の支えとなってくれている宝物なのだから。




