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星戦のフェリシア  作者: 重力小波
LORD OF STARGAZE
4/12

邂逅、そして覚醒 3

捜索するにつれ、京介はフェリシアという人物に興味を持ち始めていた。


フェリシアがヴァーゴの表舞台―裏社会でもあるが―に現れた時期ははっきりとしていない。とにかく腕っぷしの強い、キレるやつ、というのが専らの評判だ。年少や同年代のストリートチルドレンたちのリーダー格として知られるが、本人はどこの派閥にも属しておらず、孤高の一匹狼を気取っている。スリや窃盗で生計を立てているらしいが、他にも仕事をして稼いでいるらしい。普段、ヴァーゴのことなど放っている警察でさえ、一度はしょっぴいてせめて前科者データを残そうとしたらしいが、証拠も、姿も残さないために一度も捕まったことがない。フェリシアは名前らしいが、名字は不明で、定住先も分からないという。


単純に考えれば、フェリシアは取るに足らない犯罪者であり、チンピラであり、ストリートチルドレンだ。だが、それだけには留まらぬ何かが、京介には感じられた。


「君は何者だ、フェリシア。」


彼が、最重要物品を「財布とともに」すったのはただの偶然だったのか?作為的なもの、あるいは運命だった、というのは考え過ぎだろうか。もしも彼が「星に導かれし者」だとすればその時、自分はどうすればいいのだろうか…。


京介は自分の気持ちを払いのけるかのように首を振った。いずれにせよ、フェリシアに会えばわかることだ。目的地のバスケット場はもう目と鼻の先にある…。


曲がり角を曲がろうとした時、突如、京介の目の前に風を切る音とともに一撃が振り下ろされた。


「え…?」


とっさに後ろにのけぞったとは言え、避けることが出来たのは奇跡の一言だった。振り下ろされた物体の正体は鉄パイプであった。もし直撃していればただの怪我ではすまなかっただろう。


「よぉ。お前か?オレをしつこく探して回っているっていう、怪しい野郎は。」


声とともに、曲がり角から鉄パイプの持ち主が現れた。黒髪の碧眼…。一瞬だったが、消え失せることのないインパクトを与えた少年。見間違えるはずもない。フェリシアだ。


「なにを嗅ぎまわっているのかしらねぇが、うざってぇから、少し痛い目見てもらうぜぇ!」


強力な一振りを、京介は紙一重で交わした。何故彼が攻撃を、という疑問はすでに京介の頭にはなかった。フェリシアは黙って追跡されるのを好まず、逆に叩きのめそうと襲い掛かってきたのだ。


「ま、待て!僕は怪しいものじゃない!」


「ハッ!子どもを金で買収した、誘拐犯もどきが怪しくないわけねぇだろ!」


「子どもって…クソッ!あのガキどもか!」


思わず口が悪くなる。純粋な天使かと思いきや、したたかな小悪魔であったのだ、あの子供たちは。子どもごときにしてやられた、油断した、という悶悶とした気持ちが京介の心を蝕んでいた。


振り下ろされる一撃、薙ぎの一振りを避け、狭い路地に京介は入り込んでいく。フェリシアは追撃に向かうが、狭いが故、長物の鉄パイプを使いづらく、攻撃の量は目に見えて減った。


「落ち着け!まずは話し合おう!」


「話し合うって、なにをだ?オレには話すことなんて何もないぜ!」


「僕の顔をよく見ろ。覚えてないか?」


「テメェの顔?お前なんか知ら…。」


フェリシアの目がやや見開かれた。何かに気づいた、という表情だ。


「なるほど、テメェ、さっきのマヌケか。」


挑発するようにフェリシアは八重歯を見せた。


「ようやく思い出してくれたか。それなら話は早い。要件は分かるだろ?」


「ああ、こいつだろ?」


フェリシアがポケットからサイフを取り出し、見せびらかした。間違えようもない。京介のものだ。


「それだ。ありがとう。」


にこやかに京介は手を差し出す。フェリシアもにこやかに応対し…財布を持った右手の反対の手で握られた鉄パイプを京介の差し出した手に振り下ろした。


「なんで!?」


その攻撃を京介は避けることが出来た。先ほどの奇襲と違い、完全に予測できていたのだ。それでも驚きの表情をフェリシアに向けざるをえなかった。


「取返しに来たってわけか!いい度胸だ、気に入った!ぶっ殺してやろうと思ったが、半殺しにしといてやる!」


攻撃的な笑みを返したフェリシアが鉄パイプを乱打する。その攻撃は嵐そのものだ。正確性など欠片もないが、当たればたとえ急所に当たらずとも致命傷になるであろう荒々しさ、そしてその機会を増やす数の暴力がある。



その攻撃を京介はかわし続けた。一見してぎりぎりのところでかわしているように見える。しかし、当事者たちにはどういう状況かわかっていた。事実は最小限の動きで京介が攻撃を避け続けているのだ。


だが、避け続けるだけではいつか追い詰められるであろう。事態のまずさを早々に見切った京介は「最も手早くかつ穏便に終えられるであろう」方法に訴えかけることにした。胸元に当たる固く、重い感触があることを確認すると、大きく後ろへ下がり、フェリシアと距離を取るとその物体を一気に引き抜き、フェリシアへ向ける。


「動くな!」


京介が向けた黒い物体によって、フェリシアの動きはにわかに止まった。京介の手に握られた拳銃の介入が二人の戦いを一旦休戦せしめたのである。


「動くな。なるべく撃ちたくはない。サイフを返してくれ。」


「テメェ…どういう了見だ…。ケンカに拳銃持ち出すたぁよ…」


「大人げない、ってことかい?僕もそう思うよ。でもソレは大切なものでね。返してもらわないと困るんだ。」


「へっ!そうかい…。」


これでフェリシアは大人しくなり、サイフを返すものだと思っていた。だが、どういうことだろうか。フェリシアは大人しくなるばかりか、殺気をたたえた目をギラギラとさせて猛然と歩み寄ってきたのだ。


「動くな!止まれ!撃つぞ!?」


「撃てるものなら撃ってみやがれ!だけど覚悟しとけよ?その銃の弾はテメェのタマだ。放ったら最後、半殺しじゃすまねぇぜ。」


「脅しじゃないぞ!本当に撃つぞ!」


再び警告するがその歩みは止まらない。


まともじゃない、と心の中で京介は呟いた。彼が見てきた中でこうも捨て身の相手は見たことがなかった。


「仕方ない…。」


額から頬に汗が流れるのを感じながら、京介は一発発砲した。むろん、フェリシアは狙わず、近くの缶を撃ち抜いた。威嚇射撃だ。


「これで本気だってことが分かっただろう?次は本気で撃つぞ。さぁ、早くサイフを返すんだ。」


「…オーケー。わかったぜ。テメェが死にてぇってことがな!」


叫ぶとフェリシアは鉄パイプを振りかざしながら走り寄ってくる。


「クレイジー!」


思わず京介は呟き、固く決意した。撃つ!いや、撃たざるをえない。このままでは自分は怪我ではすまないだろう。それになりふりかまっていられる状況でもなかった。


距離はおよそ数m。十分だ。拳銃をしっかりと握りしめ、フェリシアの…右足に狙いをつける。引き金を引けば確実に右足を撃ち抜き、動きを封じることが出来るだろう。


京介が引き金に指をかけた瞬間、フェリシアがその手に握られていた鉄パイプをなげつけた。


避けるか、撃つか一瞬迷いながらも前者を京介は選んだ。風を切り裂きながら鉄パイプはわずかに体を右へ移動させた京介の頬をかすめ、すぐ後方のダストボックスに音をたててぶつかった。ほぼ同時に京介は再びフェリシアに狙いをつける。外しようもない距離。発砲。銃声が響いた。


「なに?」


京介は思わず呟いた。弾丸はフェリシアに当たらず、はるか後方の電灯に弾かれたのである。


外したのか?疑いを持ちながら、確実な結果を認めざるをえなかった。フェリシアの鬼気迫る迫力に恐怖し、手元が狂ったのだろうか?だが、次に当てればいいだけだ。もはやフェリシアは眼前。しかしながら彼の手にはもう鉄パイプはなく、全ての優位は京介にある。怯えようもない。再び発砲。


銃弾は今度こそフェリシアを捉えた…はずだった。だが、銃弾は再び外れ、後方の壁にめりこんだ。


―何が…?


京介の呟きは銃弾が外れたことにではない。なんと眼前まで迫ったはずのフェリシアが忽然と姿を消したのだ。


「一体何処に…?」



疑問が答えに変わるのは一瞬だった。左側に殺気を感じた京介が銃ごと体を向けると眼前にフェリシアが迫っていた。


「なに!?」


銃を発砲しようとするが間に合わない。フェリシアは左足で壁を蹴って京介に急接近すると、右足で京介の拳銃を持つ手を蹴り上げる。反動で引き金が引かれるが、弾は空に放たれ、拳銃は宙に飛んだ。


蹴られた右手を抑えながら京介は即座に反撃を試みた。右足でのローキック。しかしフェリシアは驚異的な跳躍力で避ける。京介は諦めず、ほぼ同時に左の強烈なストレートをかます。空中にいるフェリシアは避けようがないはずだった。だが、フェリシアは壁を蹴り上げ、反対側の壁へ飛ぶと、またその壁を蹴り、高く飛び、そのままの勢いで京介の脳天へ向け、ギロチンのごとく踵を振り下ろす。


「ぐぅ…。」


なんとか頭上で腕をクロスし、直撃をさけた京介だったが、重い攻撃を受けて苦悶の声を漏らした。なおも反撃を試み、こちらもかかと落としを振るうが、フェリシアはまたも壁を利用し避けると、京介の後ろへ飛ぶと、着地と同時に無防備な背中を蹴り飛ばした。


「さぁ!第2ラウンドだ、クソ野郎!今度はデスマッチだ!」


吹き飛ばされた際に、ぶつかったゴミ箱から溢れたバナナの皮を京介は投げ捨て、自らのダメージを確認した。身体的なものはもちろんだが、精神的なものの方が大きかった。


なんなのだ、この少年は?


こいつはヤク中でも、狂人でもない。壁を利用したスポーツの存在-パルクールといったか-は聞いたことはあったが、それを応用し、戦闘術にまで昇華させるとは…。信じられないが銃弾を避けたのもこの技術に違いない。この少年はただのチンピラではなく、熟練した戦士だと認識を改めねばならなかった。


立ち上がる際に足はかすかに震えたが、すぐに収まった。周りの状況を京介はすぐに確認する。銃も、鉄パイプも拾いに行くには遠すぎる。周りは壁や物体だらけでフェリシアのパルクール戦闘術には最高のフィールドだ。先ほどとは打って変わり京介には不利なことばかりだった。


「なぁに、呆けてやがるんだ?脳天入って気がイっちまったか?」


フェリシアは威嚇するようにその場でジャブを振るい、軽くジャンプを繰り返す。その挑発に京介は動じなかった。右目のモノクルを一度はずし、汚れを拭き取るとまたつける。


「なに、少し驚いただけだ。心配しなくていい。」


「あぁん?ぶるっちまってたのか。大丈夫かよ、小便ちびってねぇか?」


「生憎だが、幼稚園の時以来その経験はなくてね、今後もない。もう一度言うがサイフを返せ。」


「あ?まだ言うのかよ、お前。寝ぼけているのか?」


「寝ぼけているのは君の方だ、フェリシア。分からないのか?痛い目を見る前にサイフを返した方がいいと言っているんだ。」


「オーケイ。それじゃあ…ぶち殺すぜ!そのお洒落なメガネごとテメェの顔を砕いてやるよ!」


刹那、フェリシアが密林のジャガーの如く飛びかかってくる。獰猛なハンター相手に文明人は無力であるかに見えた。


_______________________________________________


京介とフェリシアの戦闘から2,3ブロックほど離れた場所に先刻、ヴァーゴに足を踏み入れた男がいた。スラム街の住人からしてみても帽子にマフラー、羽のついた服、その全てが黒で塗りつぶされた姿というのは奇怪に映るようだ。皆、彼から視線をそらし、なるべく関わりを持たないようにしている。

そんな中、この漆黒の狂人に絡んだ者たちがいる。


「よぉ、兄ちゃん。」

黒ずくめの男が振り返ると三人組の男。剣備京介がこの場にいれば、先ほどカツアゲを受け、そして返り討ちにしたチンピラたちだとわかっただろうが、見覚えのない黒づくめは首をかしげるばかりだった。


「なんだ、お前さんら?」


「俺らのことはどうでもいいんだよ。それよりお前のカッコの方が気になるぜ。」


「俺らよぉ、さっきムカツク野郎にボコボコにされちゃってさ、痛くて仕方ないから治療費欲しいんだよね。」


「ん?というか、お前よく見ると…。」


三人組の一人、小柄な男が黒ずくめの男の顔を覗き込む。男の顔を確認すると小柄は怒りと嘲笑とをないまぜにした表情を浮かばせた。


「こいつ、よく見ると日本人だぜ!間違いねぇ!」


「なんだよ。くっせぇ、くっせぇと思ってたら道理でな。」


「さっきの野郎も日本人でさ、こりゃ同胞のお前に責任とってもらうしかないね。」


詰め寄る三人に対し、黒ずくめは目に見えて狼狽しているように見えた。


「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくれんカァ?責任ってなにしてくれちゃうわけ?」


「そりゃ色々だよ。色々借りやら貸しやらあるからさ。ま、とりあえず金目のものと、そのお洒落な服と、骨の二三本程度でいいぜ。」


「いやいやいや、ちょっと待ってくれよォ…。なんで俺ちゃんがそんなことされにゃあ、いカァんのよォ…。大体そいつホントに日本人だったのカァよォ…。中肉中背でサラリーマン風のお堅いスーツ着てるとカァよ…。右目に金の片眼鏡をつけてるとカァよ…。そんなんじゃねぇだろ?」


黒ずくめの必死の抗議を嘲るように三人組の男たちは下卑た笑みを浮かべた。

「おいおいおい。そのまさかだぜ、カラス野郎。」


「なんでお前、そんなに知ってるんだ?まさかあいつの知り合いか?」


「なら一層、ケジメ取ってもらわにゃいかん…なぁ!」


三人組のうち、最も大柄な男がその太い右腕で黒ずくめの男をいきなり殴りつけた。黒ずくめの男は盛大に吹き飛び、後ろの壁に身を打ち付けて短いうめき声をあげた。その様子に幾分か溜飲を下げた男たちは嗜虐的な笑みを浮かべて、更なる欲求を満たすべく、本格的なリンチに取り掛かろうと歩み寄ったが、大柄な男が自らの体に異変を覚え、動きを止めた。


「なんだ…こりゃ…。」


男の右腕の肘から先が消えてなくなっていたのだ。そしてその代わりに壊れた蛇口のごとく赤い液体が勢いよく噴き出していた。


「なん…いってええええ!いてぇよォ!」


遅れてきた痛みに耐えきれず男は叫ぶが、何が起きたのか理解出来えない。他の二人も同じで、痛々しく叫んでいる仲間を呆然と見つめるだけだ。その混沌とした状況に、不自然なほど明るい笑い声が響く。黒ずくめの男の笑い声だ。


「かっかっか!やカァましぃぜ、豚野郎。いきなり殴っちゃってくれてさぁ…めちゃ痛かったぜ。痛かったからよォ…つい手ぇ出しちゃったぜ。ま、これでお相子にしといてやるよ。」


そういって黒ずくめの男は手に持っていたものを投げ捨てた。…腕だ。彫られている特徴的なタトゥーは大柄な男が常日頃自慢していた特注のものだった。


「おま…なん…どうやって…。」


「妙なこと聞くな?その答えを言ってやったところでお前さんがたに理解できるとは思えねぇし、意味もねぇんじゃないカァ?」


「ヒ…。」


「ま…サービスで教えてやるか。お前さんがたにもわかりやすい方法でな!」

恐怖にかられた三人組の一人が踵を返して逃げ出す。だが、黒ずくめの男は文字通り目にもとまらぬ速さで男を追い抜き、その正面に立ちふさがった。チンピラは恐怖で叫ぶことも、あるいは別の方へ逃げ出すこともしなかった。もはやそれが出来ぬ体となっていたのだ。黒ずくめの男の手にそのチンピラの頭が収まっていた。


黒ずくめの男はその頭を振り回すと、未だ狂ったように叫び続けている男の頭めがけて投げ飛ばす。勢いよく投げ飛ばされたそれは大柄な男の厚い胸板を易々と貫き、大砲を穿たれたかのような大穴を開けた。男は叫ぶのを止めるとゆっくりと体を崩し、続けて頭を失ったチンピラの体も倒れた。


「一体なんなんだ…なんなんだよ!お前!人間じゃねぇ…悪魔、悪魔だ!」


「失礼な野郎だぜ。テメェはカラス様のエサにしてやる。」


黒ずくめの男が指を鳴らすと、不気味なカラスの声が響いた。声はやがて大きくなっていき、次第に空を埋め尽くす黒い群れが現れた。


「悪魔…悪魔…悪魔ァ!」


うわごとのように叫び続ける男へカラスたちが急降下する。男の体は黒によって埋め尽くされ、その身は啄まれて赤くそまっていく。男の声は次第に小さくなっていき、短く甲高い断末魔をあげると、静かになった。


「しっぽ掴んだぜ、京ゥ介クンよォ!待っててくれよなぁ、もうすぐ愛しのクラウスさまが会いにいくぜぇ…カッカッカ!」


残虐なる狂宴を道一つ挟んだ建物の影から見ていたものがいる。…キオとユニカだ。したたかな少年少女の二人組は傍目から見ていかれた黒ずくめの日本人に、先ほどのマヌケな同族にしたことと同じく、商品と情報を売りつけようと機会を伺っていたのだが、諍いが発生したせいでタイミングを逸してしまった。そして惨劇が起こったのだ。


「キオ…。」


「大丈夫だ、ユニカ。」


目の前で起きた惨状にユニカは声を失い、青白い顔で、今にも気を失いそうなほどだ。現実を認めたくない思いが、彼女の心を揺さぶっていた。一方でキオは息を荒くし、額に冷や汗を流しながら、内心では冷静に現状を分析している。


「ヤツはあの日本人の仲間なのか…?」


「だとしたらフェリシアさんが危ないよ…。早く教えにいかないと。」


「分かってる!でも俺たちも危険な目にあう。どうしたら…。」


もう一度、虐殺者の様子を伺おうとキオは建物の影から顔を覗かせた。だが、なんということだろうか、あの目立つ黒ずくめの男の姿は消え失せていたのだ。凄惨な死体はその場に残されているというのに!


「悪い子ちゃんたちだなぁ…。」


突如かけられた背後からの声に、キオは身を震わせた。何故、どうして?ユニカと同じく現実を認められない気持ちがキオの中にも生まれだした。背後にはあの黒ずくめの男が、黒い羽をまき散らしながら立っていた。


「カラスが鳴いたら帰らなきゃいけないんだぜ、悪ガキども。お前ら、何か知ってそうだな…。オシオキしとッカァ!」


邪悪に、男は笑った。



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