前章:星輝士伝説
遠い昔、ヒトの営みが星を基準に回っていたころのお話。
かつて秩序の女神と混沌の神がこの世の覇権を巡って激しい戦いを繰り広げていた。一方はこの世の秩序を守るために、もう一方は混沌をもたらすために。千年余りも続いたこの戦いはやがて混沌の神の優位に傾き、魔の軍勢が恐怖と混沌をもたらさんと、地上を埋め尽くした。
秩序の女神とその軍勢の領地が、ついに山一つになった時、軍勢を構成する数多の生物たちの中で最も優れた知を持つ種族の長が秩序の女神に申し出た。
「女神さまよ、あの天に煌めく、星々の封印を解き、を私たちに与えてください。あれこそ唯一魔を滅ぼす聖なる力を持つものなのです。」
種族の長が指さしたのは、彼らが占いや呪文に使用していた星々が天空のキャンパスに描く聖絵、「星座」と呼ばれるものであった。様々な生物や物体、伝説を象った星座にはモチーフとなったものの全ての記憶や記録、その他、種やモノが潜在的に持つ全知全能が封じられていた。
他の種たちの反対を押し切り、女神はその種の長に星の力を与えた。星の加護を得たその種の戦士たちは「星輝士」と呼ばれ、一頭が万軍の力を誇っていた。聖なる力を有する星輝士たちは混沌の軍勢を次々に薙ぎ払い、混沌の神を追い詰めた。
「星の力を奪うとは愚かな。女神よ、貴様はこの星を呪われし地に変えたのだぞ。我いつの日か蘇り、この地に混沌をもたらさん。」
呪詛の言葉を吐き捨て、星の辺境で混沌の神は星輝士と秩序の女神により闇の奥底へと封印された。魔の軍勢は次々に消え失せ、星には輝きとマナが戻った。
だが、女神の軍勢の傷は大きかった。星の力を使うということは、その星を守護星とする動物たちのマナを使うことに等しい。軍勢の種たちは二足で歩く術を、知能を、魔法を、言葉を奪われた。女神の軍勢の中で、それらを保つことができたのは星の力を女神に求めた種族―人間のみだった。
人間たちはこの生命の星にて最強の種となる能力を手に入れた。だが、その強さ故に増長し、欲深くなった人間は女神に勝利に貢献した報奨を要求した。
「人よ、そなた達はこの星を支配する力をすでに持ち合わせている。これ以上なにを望むのだ?」
女神の問いかけに星輝士たちは答えた。
「万能の力を頂きたい。貴女のような神と同等の力を。」
女神にこの願いを退けることは出来なかった。星輝士たちが魔神との戦いで果たした割合は大きい。故にそれに報いる願いを叶えないことは、彼女の秩序の属性を否定することだった。
だが、同時にこの願いは途方もなく大きいもので、貢献との均衡に釣り合わないもので女神の権能を使えることは出来なかった。
故に女神は条件を出した。星輝士の願いを叶えるのに必要な条件を。
「よいでしょう。ですが、あなた方の多大な功績を以てしても叶えることができるのはただ一人に対してのみ。故にお決めなさい。あなた方の中で神の力を有するにふさわしきただ一人の星輝士を。」
その神言を皮切りに、ただ一人の神の座をかけて星輝士同士の戦いが始まった。七日七晩、星を炎が、闇が、嵐が包んだ。それらが明け、ただ一人残った星輝士は穢れなき魂へ浄化されて、天にて神の座に召し上げられた。
星輝士の願いを叶え、力を使い果たした秩序の女神は休眠することになった。その際、新たに神の座に加わった星輝士に言葉を遺した。
「いつか混沌の魔神が蘇る時がくる…。強大な力と闇を携えて…。その時までにお前のような力ある星輝士を集めよ…。神の座に召し上げられるほどの強さの星輝士を―。」
神の星輝士は女神の言葉に従い、創り上げる。真の戦士を選ぶ戦いを。
星々に輝きが取り戻されし時、星は自らの力を授けるにふさわしき戦士を求め、その力を星導器に封じん。星に導かれ、それを得しもの、当代の星輝士として使命が与えられよう…。そしてすべての星輝士が揃いし時、女神の力、天に宿りて再び神を選ぶ戦いが開かれよう。星輝士たちによる熾烈なるバトルロイヤル、「星戦」が…。
古代文明の伝説 出典不明
そして現代、星輝士たちの神の座を巡る戦いが蘇る―