シンデレラの逆襲
5年前くらいに書いたのを手直ししました。余談なんですが、ずっと姉達が3人かと思ってました。
「姉さん達、掃除するからそこ退いて下さい。」
「ああん?」
掃除中のシンデレラは姉達が邪魔なので注意した。しかし、姉達はシンデレラの態度が気に入らないらしく退こうとはしない。
「てめぇ、シンデレラ…誰に向かって口を聞いてやがる?」
姉Aがシンデレラの服を掴み、口答えする。
「お姉様達です。」
姉Aの態度に恐れず、淡々と答えると服を掴んだ手を退ける。
「そう、“姉”という事は私達はお前より立場が上って事…」
「そうですね。」
姉Bが姉Aの意見に加わる。シンデレラは姉Bの意見にしれっと同意した。
「何だ?その態度は!ムカつくんだよ!!」
姉Cがシンデレラに殴り掛かってきた。
「ふう~…やれやれ。」
シンデレラは、姉Cに呆れながら攻撃を交わす。交わされた姉Cは、そのままの勢いで壁に激突した。
「コノ!やりやがったな!!」
(そっちが勝手に攻撃して自滅しただけでしょ!何で私のせいになるのよ?)
姉Bが姉Cの自滅を見てシンデレラに怒り襲いかかってきた。シンデレラは心の中で呆れながらも姉Bの攻撃を交わす。
だが…
「はん…馬鹿め!」
交わした所に姉Aが構えて反撃してくる。
(ああ…うぜぇ。もう良いか。)
姉Aの攻撃がシンデレラの頭に届く瞬間…シンデレラは逆に姉Aの腹を殴りかける。
「!?」
姉Aは驚き、攻撃を止め避けようとしたが…
「遅いです。」
シンデレラの方が早かった。姉Aはまともに攻撃を喰らい地面に叩きつけられる。
「も~う、お姉様達ったら…毎回毎回、飽きもせずに私に攻撃してきて…元気なのは宜しいですが、有り余りすぎですよ?」
何事も無かったかのように笑顔で言うシンデレラ。
「だから、嫁の貰い手が居なくなるんですよ。」
グサっ!
姉達は精神ダメージを受ける。
「良い年なんだから、良い加減お転婆も卒業して下さいね?」
グサグサ!
更に精神ダメージが加わる。
「あぁ、もしかして…私に嫉妬されてます?私、まだ若いですもんね…。」
「おい、調子扱くなよ…。」
シンデレラの言葉に姉Aが反論する。しかし、精神ダメージが未だ響いてるので弱気な姉A。
「あら?事実を言ったまででしょ?もう年をサバ読んでも無駄なくらい老けてるんだから年相応に大人しくするのが的確だと思いますが?」
グサグサグサ!
姉達の精神を更に追い詰めるシンデレラ。
「……。」
姉達には、もう反論する元気が無い。静かになった姉達を見てシンデレラは掃除を再開しようとする。
「では、掃除するので退いて頂けますか?」
黙って部屋を出て行こうとする姉達。そこへ…
「此はいったい何の騒ぎですの?」
中年の女性が物音に気付き駆けつけてきた。
(また、面倒なのが来た…)
「お母様!」シンデレラは肩を竦めながら女性…継母を見る。その女性に駆け寄る姉達…
「シンデレラが苛めるの!」
「私達は、ただ話をしてただけなのに…」
「早く懲らしめて!」
口々にある事や無い事を言い出す姉達…
「まあ!シンデレラ、どういう事ですの?」
継母の大袈裟に声を上げる様に、ウンザリするシンデレラ。
「私は、ただ掃除をしようとしただけですが?」
「本当に?でしたら何故、子供達は泣いてるのかしら?」
(子供達って…良い年して、コレだから馬鹿親は…)
シンデレラは事実を述べたが、継母は怪訝そうに見る。そんな継母を見て、心の中で毒づくシンデレラは溜め息を吐いた。
「兎に角、私は掃除するんで皆さん退いて下さい。」
「ちょっと!私の質問に答えなさいよ!!」
更に声を荒げる継母に、シンデレラは…
「…ったく。さっきからうるせぇな。」
キレた。
「何ですって!」
「うるさいって言ったの。聞こえなかった…お・ば・さ・ん?」
口調が急に変わり、本音を吐くようになったシンデレラを継母は信じられない顔で見ている。
「き~!何よ、その態度!!」
「ちょっと、いちいち甲高い声を上げないでよね?幾ら自分の耳が遠いからって私に超音波をぶち撒けないでよ。」
「むき~!」
怒りの余り叫ぶ継母。
「もう許せませんわ!こうなったら追放して差しあげますわ!!」
最終手段とばかりに宣言する継母にシンデレラは余裕の態度で…
「どうぞ、御自由に。」
「ふふふ…。路頭を彷徨って後悔するが良いわ!」
勝ち誇ったように笑う継母にシンデレラは…
「ああ、でも私が出て行って此処が“ゴミ屋敷”って言われても知りませんから。」
「別にお前が居なくても使用人が…」
「知ってますか?」
継母の言葉を遮りシンデレラは続ける。
「使用人は、この屋敷に居ないんですよ?」
「は?どういう事?」
「其れはですね~…貴女達の高飛車な態度に耐えきれず皆、辞めていったのですよ…あの程度で辞めるなんて本当に骨の無い奴ら…。」
キョトンとする女達を差し置いて、一人嗤うシンデレラ…
「仮に私が出て行ったとして、使用人を募集しても誰も来ないと思いますけど?」
「そんな事無いわよ。給料だって…」
「高収入でも此処で働くくらいなら他に行った方がマシだと思いますよ?」
ワザとらしく…
「…と“元”使用人達が申しておりました。」
「……。」
「さ~て、此処で問題です。使用人が居ないという事は誰が貴女達のご飯などの御世話をするのでしょうか?」
………。
沈黙。
「答えられないのでしたら、用はありませんね?では…」
「待って!ゴメンナサイ!!シンデレラですわ!!!」
慌てたように答える継母に意地悪っぽく…
「シンデレラ…“様”でしょ?継母様?人に物を頼む時は礼儀を弁えると習いませんでした?」
「だ…誰が、貴女なんかに…!」
「あら?別に私は良いのですよ?どちらでも…ただ困るのは貴女達ですから、関係無いですし。」
「くっ…!」
「なあに、その態度?」
すっかり立場が逆転したシンデレラと継母。
「ほら、早く…シンデレラ様、辞めないで下さい…って言ったらどう?」
「うぅ…!」
娘達の手前、下手には出られない継母。
「もう焦れったいな。とっと、言えよ?」
「……!」
悔し涙を流す継母。そんな継母を見ても冷徹なシンデレラ。
「あれ~?泣いてるの?…泣けば誰かが助けてくれると思ってるわけぇ?」
「ちょっ…シンデレラ。」
継母の様子に耐え切れず庇うように制止してきた姉達。
「言い過ぎよ!」
「妹の分際で!調子に乗らないでよ!!」
姉達はシンデレラに反論するが…
「はあ?調子に乗ってるのは貴女達でしょ?コレでも優しくしてる方だけど?」
「コレのどこが優しいのよ!」
「え?もしかして…厳しい方が良かった?」
「シンデレラ!」
姉達の意見に鼻で笑い飛ばすシンデレラ。
「もう一度、頭の悪い貴女達に言いますね。私はどちらでも構わないの。早くお願いしたら?」
「…うぐ!」
「簡単でしょ?それとも私に頭を下げたくないのかしら?」
シンデレラは再度、女達に忠告する。すると…
「…お、お願いします…。シンデレラ…様。ど、どうか此処に、居て下さい…。」
継母だ。
シンデレラにしどろもどろながらも土下座し、小さな声で言う。
「まあ、継母様。顔を上げて下さいな?お姉様達が見てますわよ?」
クスクスと笑いながら、ワザとらしく継母を敬うシンデレラ。言われて顔を上げた継母は、顔を真っ赤にしてシンデレラを睨む。
(覚えてなさい!シンデレラ!!)
すると、視線に気付いたシンデレラは継母の頭を足で地に着け始めた。
「…でも、視線が気に入りませんね。それに声が小さいです。」
「なっ…!」
「はい、では気を取り直してもう一度!」
継母を踏みつけながら笑顔で言うシンデレラ。
「嫌よ!言うわけないじゃない!!」
そんな意見にシンデレラは冷たく…
「あら?今なら貴女の頭を潰せるんですよ?」
「!!」
「コレはもう、脅しじゃない事くらい分かりますよね?」
足に力を込めると下から情けない声が聞こえた。
「ギャアアア!」
「ほ~ら?早くしないと貴女達の大事なお母様が潰れちゃいますよ?」
今まで声を掛けなかった姉達に命令するシンデレラ…
「それとも、自分の方が大事?」
「は、早く、シンデレラに…」
「誰が呼び捨てしろって言ったの?」
継母が悲鳴に近い助けを娘達に求める。シンデレラは継母の態度が気に食わなかったらしく更に力を込めた。
「痛い痛い痛い!」
「ねえ?黙ってても意味無いでしょ?さっさとしなさいよ!」
痺れを切らしたシンデレラの口調は荒くなっていく。だが、次の瞬間には何事も無かったかのように楽しそうな口調で…
「もう一つ、貴女達には関係無い事を言いましょうか?」
ビクっと強張る姉達。
「明日、ゴミの日なんですよね~♪」
「…!!」
「言ってる意味がわかりますか?」
すると、姉達はそれぞれの視線を合わせシンデレラに…
「無礼な態度を取り、申し訳ありませんでした!シンデレラ様。どうか、愚母を解放して下さい!!」
姉達は土下座しシンデレラに言う。
「合格です。」
シンデレラは満足したのか継母を解放する。解放された継母の下に急いで姉達は駆け寄る。シンデレラを睨みながら…
「もう、嫌だな~。冗談ですよ~?さっきの…」
信じられないという顔の女達。
「する訳無いでしょ?犯罪者に成り下がりたくないし~?」
何事も無かったように掃除を再開し始める。
「…という事で退いて頂きます?」
こうして、シンデレラは無事掃除をし始めた。もう、それはピカピカに。しかし、数日後…結婚する羽目になるとは、この時の彼女はまだ知らなかった。
久し振りに投稿。コレ書いてる時、某シスターの歌が頭から離れない…