エピローグ(LU3004 159の日)
LU3004 159の日。
アークライ・ケイネス宅。
――エピローグ―― One more
朝を知らせる鳥のさえずりと共にアークライ・ケイネスは瞼の重さを感じ、体全体に気だるさを覚えながら、覚醒と睡眠の合間のまどろみの中にいた。
温かく、それでいて少し湿っぽい空気がアークライの顔を撫でるように吹き、それに心地良さを感じる。
この心地よさを糧に、少し浅くなった意識をまた、深く暗闇の中でに埋めてしまいたい衝動に駆られるたのだが、1つ気になる事があった。
先程から頭の奥の何かが悲鳴あげている。
その感覚はアークライにこう告げる。危険だ、このまま、この危機から逃れる事が出来なければお前は人生最大の危機に陥ると・・・。
無視してしまいたい所だが、虫の知らせというものはアークライを何度も災難から救った事がある。
それがしこりになってアークライはその知らせを無視する事は出来なかった。
アークライは内心毒を吐きながら、安らぎに抵抗するようにして、重い瞼を開く。
そうして、アークライはその目の前に広がる光景に驚き、そしてうんざりした。
目の前には、目を瞑り、アヒルのように口を尖らせて、俺に唇を突き出す獣人のマナがいた。
マナは俺が起きたことにはまだ気づいていないのか、鼻息を荒くして唇をゆっくり俺の唇へと近づけようとしている。
俺は感じていた暖かな風の正体がどこから発せられていたのか?その真実を知った。
―――――さっきの風…これかよ…。
その光景と真実にアークライは頭痛を覚えながら、マナの額に向けてデコピンをした。
「あいて!!」
ミアはそう痛みに叫び、寝台から転げ落ちる。
それを眺めた後、俺は上半身を起こした。
体を起こす際に、先日の仕事で怪我をした腰と左腕が痛む。
「うう、酷いよ…アーちん。いきなり暴力を振るうなんて…。」
そう涙を目に浮かべながら、床に座り抗議するマナ。
「お前がやろうとしてた事のが暴力だろ。」
アークライは頭に手を当ててそう答えながら寝台から立つ。
「うう、ここ最近、アーちんのマナの扱いが酷い気がする・・・。」
「―――被害妄想だ。」
アークライ自身、マナへの立ち位置や関わり方を変えた覚えは無い。
しかし、マナはこの三日間ぐらいで、どうも何か大きな不満を持ったらしく、度々、こういって後ろ向きな発言をするようになった。
これまでマナはアークライに露骨な好意を示し、あれやこれやとアタックを仕掛けた事はあったが、ここまで直接的なものは初めてだった。
アークライはその原因が何か既に理解しており、そしてそれがさらなる頭痛を生み出していく…。
「お前、まだあの時の事に嫉妬してるのか?」
呆れたように言うアークライに対してマナは怒ったようにして言う。
「そりゃ、嫉妬するよ、アーちんの初めては全部マナのものだって決めてたのに…。」
「あのなぁ…俺はいつからお前のものになったんだよ。」
「え、駄目?」
「お前はわかりきってる答えにどう答えて欲しいだ?」
「え、勿論、マナちゃんラブリー、アイラブユー。」
アークライは一度閉口した後、呆れた視線でマナを見つめて、
「……とりあえず、何処か病院に連れてってやるから、一度頭を開いておかしい所がないか見て貰ってこい…。」
そう言って、アークライに抱きつこうと迫るマナを片手で突き放し、寝台から立ち上がる。
「あー、そうだ、アーちん、お客さん来てるよー。」
「客?」
「うん、外で待ってるってー。起こしてきてと言われたからマナはアーちんを起こしに来たんだ。」
先日の仕事の報酬を受とり少々余裕が出来たのと、怪我の療養の為、今、交渉屋の仕事を受けつけてはいない。
それはマナも当然知っていて、そういった人間が来たら追い返すように言いつけてある。
「マナ、どんな人だった?交渉屋への依頼って訳じゃないんだろ?」
本当にただの客なのか、それとももう一つの仕事の方の依頼に来た人間なのか…。
後者だとするならば、体に鞭を打ってでも働きたい所ではあるが、前者だと正直、気が進まない。
「うん、そうだね。顔がしわしわのお婆ちゃんでね、この間の仕事の依頼に来てた貧乳女の母親だって名乗ってたよ。どう見ても年が離れてたし胡散臭かったから、一応、部屋の外に追い出したけど…。ただ、アーちんを呼んで来いってしつこいし、そうしないとアーちんが後悔する事になるって言われたからとりあえずそういう知り合いいるのかなと思って、アーちん起こしに来たの。」
「ふーん、そうか…。」
聞き流すように答えるアークライ。
その後、アークライの頭からだらりと汗が流れた。
―――――――今、何か聞くべきでない言葉を聞かなかったか?
ふと、右手で頬を抓る。
右頬が痛い。
夢ではないようだ。
となると、マナ曰く貧乳女の母親とは誰なのか?
アークライの脳裏をとある老婆の顔がかすめていく。
いやいやいや、それは無い。
絶対に無い。
あってはならない。
ならば、検証しよう。
訪問者が彼女では無いという証明を行おう。
まず、しわしわの老婆とマナが言っている事は女性であり、老齢であるという事なのだろう。
アークライとしてはそういった知り合いは多くは無いが、仕事の伝手で関わる事がある。
つまり、それがアークライの脳裏に一瞬よぎった老婆であるとは限らない。
次に、この間の仕事の依頼に来ていた貧乳の女性の母親だと名乗っていたのだという。
ああ、これは難題だ。
まず、この間の仕事に来ていたという貧乳女という時点で相手はかなり限定される。
昨今、あまりいい仕事が入らずに請け負った仕事は、アテルラナから請け負った集金の交渉と騎士団から請け負った少女の奪取ぐらいのものだ。
アテルラナから自分に依頼に来たのは女性であったが、それはもうふくよかな胸の持ち主でとてもでは無いが、貧乳などでは無かった。
となると、貧乳に該当するのは騎士団の依頼者であるクレア・ローゼンという事になる。
これは逃れようがない事実だ。
となると、今回ここで、この帝都の下層区でも辺境と呼ばれるこの場所までやってきたのはクレア・ローゼンの母親という事だ。
クレア・ローゼンの母親となると、まあ、脳裏をかすめるのはやはりあの奇天烈老婆ぐらいのものだが…とりあえずそれは気のせいだから忘れることにしよう。
ここで重要なのはクレア・ローゼンは本来、ローゼン家の血筋の人間では無いという事である。
何処からかはわからないが、現在のクレアの養母が孤児であった彼女を拾ってきたのだという。
つまり、この筋、クレア・ローゼンの実の母であるというラインがあるのではないだろうか?
クレアの実年齢が20前後ぐらいで、その母親が老婆だというのは色々無理がある話だと思うが、この際は忘れる。
そもそも、なんでそんな人物が俺を訪ねてくれるのか疑問ではあるのだが、それもこの際は忘れる。
考えるだけ無駄だ、現実は小説より奇なり、この先人が残した偉大な言葉を信じよう。
つまりは、客というのはクレア・ローゼンの実の母という事か・・・。
くそ、流石に無理があるか――――考えろ、アークライ・ケイネス、ここで現実逃避をしなくてなんとするーー
そうしてそんな思考を始めたほんの1秒後にマナはアークライの抵抗の努力など知らずに口を開く。
「そのお婆ちゃんはカレン・ローゼンだって名乗ってたよー。」
「この糞馬鹿!!俺が全力の抵抗を試みてるのにその名前言うんじゃねぇ!!!!!!」
アークライは頭を抱えて絶叫した。
マナの言葉は死の宣告に等しい、これ以上ない絶望だった。
アークライの心は既に打ちひしがれ、動悸が激しくなるのを感じる。
それと同時に汗がたらりと頬を流れ、体中の細胞という細胞が悲鳴をあげはじめる。
それは一重に恐怖。
心の奥底に刻まれた絶対者への恐怖。
そんなものがアークライの胸中を跋扈する。
「どうしたの?アーちん、凄い汗…。」
豹変したアークライにマナは心配そうに声をかける。
「お前、その婆さんをこの部屋から追い出したんだよな…。」
マナは頷く。
「すんなりと出ていったか?」
マナは頷く。
「笑っていなかったか?」
マナは頷く。
「…うん、って、さっきからアーちん、何そんな重苦しそうな顔してるの?」
不思議そうに聞くマナ。
アークライは経験から、逆算して現在の状況を推し量る。
そしてアークライの顔が真っ青になる。
カレン・ローゼンが自分から他所へと足を運ぶというケースは稀である。
基本的に、「お前に会いたいから、お前が来い」と呼びつけるような人柄であり、自分から誰かを尋ねるという事はまずしない。
稀に、自分から足を運んで誰かを尋ねるのだが、その時、その労力が徒労に終わった時、彼女はそうしてきた相手を凄惨なる目に合わせてきた。
カレンが笑うというのはどう落とし前を付けてやろうかと考えているという事であり、その邪悪な思考に笑みが漏れてしまうという事である。
「くそ、時間が惜しい。」
カレンを待たせているというのならば、時間が経てば経つほど彼女の悪巧みは進化するという事である。
アークライはすぐに着替えを済ませ愛用のジャケットを羽織った。
「カレンは何処で待ってるか言ってたか?」
「うん、18番区の喫茶店ラムールで待ってるって…。」
「そうか…行ってくる。」
そう言って、幽鬼のように生気を失った顔をしてアークライは玄関の戸を開けた。
―2―
カレン・ローゼン。
クレア・ローゼンの養母にして、帝国騎士団団長。
齢80を超える老齢でありながら、未だその強さは衰えるどころかさらに常軌を逸し、名実ともに帝国最強騎士。
その強さは圧倒的で、たった一人で一軍に匹敵するとすら言われている。
過去二度の共和国との戦争に置いて、大きな戦果をもたらし、彼女がいなければ帝国は勝てなかったとされるほどの英傑である。
そんな彼女を誰もが畏怖と尊敬の眼差しで『薔薇の淑女』と呼ぶ。
もはや生きながら伝説と化した彼女であるが、彼女自身の性格はその英雄譚に相応しい性格であるというには少々、いやかなり憚れるところがある。
というのもカレン・ローゼンという人物を一言で形容するならば愉快犯であるという事だ。
気分屋かつ自己中心的、それでいて博愛主義者であり破壊魔。
そう矛盾した要素が混在するのがカレン・ローゼンという人物であった。
アークライ自身も騎士団に在籍していた時に彼女には幾度も胃に穴が空く経験をさせられている。
そういった経験から、アークライからしてみれば、彼女に対する認識は恐怖が多くを占めていた。
とはいえ、アークライはカレンに大恩がある身の上であるが為に彼女から逃げることすら出来ず、アークライは彼女の気分に散々に振り回された。
戦闘訓練だと称して、帝国近郊に根付く山賊に悪友ウォルフ・サンダーエッジと共に武器を持たされずに送り込まれたり、サバイバル訓練だと称して雪山に全裸で10日放置されたり、勉学だと言って、団長の書類関係の仕事を全部押し付けられたりと毎日そんな目にあっていた。
何より彼女はそのような苦行を前ふりもなく、おそらくは思いつきでやるのだ。
おかげで、高い精神力や危機対応能力、認識能力がついたのは事実ではあるのだが、アークライからしてみれば、思い出すだけで全身が震え出すトラウマに等しい経験だったと言える。
その時のトラウマを思い出しながらアークライは帝国下層区18番区にたどり着いた。
ここは帝都の東端になる地区であり、下層区屈指の商店街がある区域であった。
帝都下層区の中でも、かなり豊かな地区であり、騎士団による治安維持が行われている為、治安もかなり良い。
商人達が自分の店の前に立ち、道を歩く人々に声をかけ、自身の商品を売り込もうとアピールしている。
アークライは、その商店街の出口端にある少しおんぼろな喫茶店に入る。
喫茶店の奥にある、席に座って一人、鼻歌混じりに紅茶を飲んでいる老婆がいた。
老婆は枯れ枝のような腕でティーカップを持ち黄金色のした液体を口に含み満足そうな笑みを挙げている。
アークライは少し深く呼吸をして、覚悟を決めた後、老婆に声をかけた。
「カレン、一体、俺に何のようだ?」
老婆はアークライを見てにっと笑って答える。
「あらあらぁ、師が弟子を心配して訪ねてきたというのに、その言いようはなんだい?」
「―――嘘つけ。」
アークライもそういって老婆カレン・ローゼンの正面の席に座り、メニューを手にとった。
ウェイトレスが席に来て、アークライはアイスティーを頼む。
「今日は別に熱くもないだろうに…相変わらず子供みたいな猫舌なんだねぇ。」
「ほっとけ…。」
そうぶっきらぼうに言うアークライを眺めながらカレンはティーポットからカップにお茶を注いだ後、その香りを楽しんだ後、口に含める。
「ここは、みずぼらしい作りだけど出すものは上等でね。この間遊びに来た時に見つけたんだど、それ以来下層に来てはここに通う毎日さ…。」
「六家のあんたなら別に茶なんて何処からでも取り寄せて飲むことが出来るだろうに、なんて無駄な…。」
「嫌だね、風情がない。物事雰囲気が大切なのさ、あたしの家なんて無駄に装飾多すぎて、いるだけで辛くなるよ。」
ローゼンを含む六家は帝家からかつての帝宅を授与されている。
それはもう下層の人間が見たら妬むような豪華絢爛な家で言ってしまえば無駄に大きい屋敷であった。
通常貴族はその邸宅にて、自身の力を示そうとし無駄に作りこんだ豪邸を建てるのが通常である。
けれど、このカレンの価値観というのは貴族でありながらそういったものからはズレていて、そういった綺羅びやかな豪邸を嫌う傾向にある。
本人曰く、小さくわびさびの効いた家の方が落ち着くんだとか…。
それもあって、カレンは家で寝泊まりすることはほとんど無いらしい。
アークライからしてみれば、理解不能な事この上ない話ではあるのだが…この老婆はそういう人物なのだ。
ウェイトレスがアークライに氷の入ったコップにお茶を入れて持ち運んでくる。
コップが机に置かれた時、コップのガラスと氷がぶつかりカランと音を鳴らした。
「で、何のようなんだ?あんたが人を尋ねるという事は相当な事だと俺は認識している訳だが…。」
「いやねぇ、前にあんたに頼んだ件で何か聞きたい事があるんじゃないかと思って、こちらから顔を出してやったんだけど、特別聞きたい事は無い?」
「それは…まぁ、あるが…。」
アークライとしては先日の件は虚属性獲得者という奪取という件だけでも色々問題だらけだったのに、その他にも気になる事は多かった。
とはいえ、気が引けるところではある。
この老婆、ただで情報をくれるような人間では無い。
代償としてまた無理難題を押し付けられては溜まったものではない。
「先に言っておくけど、あんたには無理難題押し付けるからね、これ決定事項。」
アークライは驚きのあまり口に含んでいたアイスティーを吹きこぼした。
既にそっちが決定事項かよ!!
「いやだねぇ、汚い。飲み物粗末にしたらダメって教えなかったっけ?」
アークライは手ぬぐいでこぼした後を拭く。
「いや、無いな。」
アークライは記憶の限り振り返るがまるでそんな記憶は無かった。
「あら、そうだっけ…?」
言ってないことまで教えたというこのまるで変わらない口調に悪夢を思い出す。
「まあ、あんたに押し付けるもんの事だけど、強引に押し付けたらあんまりも可哀想なんでねぇ、ここで老婆心って奴だよ。質問に色々答えてやろうって判断さ。あんたの師匠の優しさに感謝しなよ。」
「――――拒否権は?」
「無い。聞くまでもないだろう?」
―――それは命令って奴じゃないかなぁ?
アークライはそう心で涙混じりに嘆く。
本当ならそんな理不尽な話はあるかと言ってしまいたい所ではあるのだが、カレンがこのように言ってくるという事は既に根回しも終わっているという事をアークライは察する。
この老婆は狡猾かつ用意周到なのだ。
おそらくは既に自分に逃げは無いのだろう…。
アークライはそう確信めいた予感を持った。
「それで、何を押し付ける気なんだ…。」
「それは後のお楽しみさ、まあ、あの件であんたの気になることをなんでも答えてやるよ。」
「ミアはどうしてる?」
「ふふ、元気にやってるさ、ちょっと後ろ向きなのがこの老婆には気になる所だけど、あの娘なりに頑張ろうとしているみたいだ。今度、信頼出来る所に預ける予定だよ。」
「…そうか、それは良かった」
今回の件で一番気がかりだったのはそれだった。
彼女が元気にやっている、そう聞くだけで安心出来た。
この老婆は変人ではあるが、そういった事に関しては信頼出来る人間だ。
「リカルド・ミラーバスはどうなった?」
「捕まえたさ、あいつが行ってたオークションに参加していた馬鹿も全て検挙した。ミラーバス家はこれへの対応として、リカルドの名前をミラーバス家から消しちまった。それで責任逃れしたよ。酷いねぇ、腹を痛めて生んだ子供が可愛くないのやら…。」
それは予想はしていた。
ミラーバス家が今回の責を逃れるとするならば、それが妥当と言った所だろう。
まあ、いい、あの男は確実に裁かれる。
それだけでも胸がすっとする思いだ。
「俺以外の侵入者がいたがあれの所在はわかったか?」
アークライ達以外にも現れた、謎の二人の侵入者。
騎士団ならばその所在も既に掴んでいるのではないだろうか?
「あー、あれか、あれはちょっと困った事になっててね、あんたが身動き取れなくした奴を捕らえた訳だけどすぐに舌を噛み切って自殺したよ。」
「自殺?」
「クレアはその危険性を察して猿轡を噛ませてたんだけどね、何処かの誰かさんがそれを外して自殺を完遂させやがったよ。」
アークライは眉をひそめた。
それはつまり、今回の敵の内通者か協力者が騎士団、もしくはその近くにいるという事では無いのか?
「誰だ、その協力者だか共犯者だか知らん阿呆は?」
「さあ、わからないさ。」
「わからない?らしくないな、そういう事が起こったら徹底的に調べるのがあんたの流儀だろう?」
「そうだけどね、その日、クレア以外の誰もがもう一人の侵入者と会ってないんだよ。それは見張りが言っている。」
「おい、それは――――。」
つまりクレアが逃したとそう言いたいのか?
「心配しなさんな、クレアは無関係だよ。それはこのあたしが保証する。大体あの子が本気でそんな事をやろうとしたらもっと上手くやるよ。」
「――――そうか…。」
「となると誰がやったんだろうねぇ、見張りに付けておいたのはこのカレン・ローゼンの手駒なんだからそう安々突破出来るとは思えないんだけども…。」
「神出鬼没な何か…か…それじゃあ、奴らが何処からやってきたのかはわからないってことか?」
「いや、それは問題ない。このあたしの娘がすぐに突き止めたさ。」
「クレアが?」
アークライは驚きの声をあげる。
「そう、あの子はそういう所には聡いからね、彼らの持つ道具それぞれを引っ張りだして念入りに調べた結果、聖痕が喉に刻まれているのを確認した。ちなみに、それであの娘は身の潔白を証明したというわけ。」
「―――――それは、確かなのか?」
「そう、奴らは『D』の暗部の人間だよ。」
「しかし、よく見つけることが出来たな…。」
アークライは驚き感心するように言う。
『D』教団に属する人間は体のどこかに聖痕を刻む。
それが『D』に忠誠する証である。
『D』達はそれによって己がその信徒である事を確認し合うのだ。
とはいえそれを探しだすのは困難である。
まず、聖痕は大抵、体内に刻まれる。
それもその聖痕自体のサイズは非常に小さく豆粒程のものだ。
聖痕をその身に刻んだ者同士ならば、その瞳に聖痕が火が灯るようにして見えるらしいのだが、それ以外の場合は死体を解剖して、その豆粒程の聖痕を探し出さないといけない。
それは森の中で目当ての木を探しだすような作業である。
なおかつ、聖痕は所持者の死亡から半日で消えてしまう仕様になっている。
実際の所、『D』の信徒がその死亡後、その者が『D』である事を突き止めることが出来る確率は5%程度のものであった。
その為、アークライが感心するのも無理も無い話である。
「しかし、教団か…目的はまあ、俺らと同じくミア・クイックだったんだろうか…奴らはどうやって入ってきたんだろうな…。」
そうあの競売会解除には大規模な結界が張られていた筈である。
許可の無い人間が森の中に入ろうとした時、その侵入者を強制的に排出する類の結界だ。
あれを抜けるというのは非常に困難である。
「そうだねぇ、あんたが見たのは黒装束の人間達だけだったっけ?」
「ああ、そうだ。」
「実はね、もう一人大立ち回りした奴がいたらしいんだよ。」
アークライは眉をひそめる。
「もう一人?」
「これは、あの競売会会場から逃げ延びた奴から聞き出せた話なんだけどね。競売会会場にたった一人で現れて、中にいた警備員と客の7割を一人で殺してのけた奴がいたらしい。」
「勘弁して欲しいな…。」
競売会会場で2つの肉塊に綺麗に切断された死体がアークライの脳裏をかすめた。
あれを見た時に直感的にそれを行った相手の技量は自分遥かに超える高みにいるのだと思わされた事を思い出す。
あの時からの印象を比べれば黒装束達は手負いであったという点を除いても、少々弱すぎた。
あれらは強敵であったが、あの時感じた戦慄を思わせる程の圧倒的な強敵であった訳でもない。
もし、あの殺人を行ったのが直感通りの実力者であるのならば、アークライは競売会裏口で見たあの死体と同じようになっている筈である。
「これはあたしとクレアの予想だが、恐らく、あんたが会った黒装束の侵入者っていうのは結界が破られた後に競売会にやってきた奴らだ。」
アークライは少し言葉を噛み締めるようにした後、
「つまり―――――競売会の結界の要を破壊した奴がそのもう一人、言うなら俺達以外の最初の侵入者ってのがいるって事か?」
「そういう事だね、そいつから生き延びた奴の証言ではそいつは見るのもとても綺麗な白い髪をしていたらしいよ。まるであんたみたいにね。」
イタズラめいた笑みでカレンは笑う。
「おいおい、勘弁してくれよ、俺は競売会会場に入ってないって言っただろう?」
アークライは困ったように否定する。
その光景をカレンは面白おかしく眺めて、
「ああ、心配しなさんな。あんたの実力はこの師匠が知り尽くしているよ。あんたに真正面からあれらを一人残らず殺すなんて所業が無理だって事だってね。」
そういうカレンにアークライは少し、角が立つものを感じたが、その感情を頭から消すようにしてぎゅっと左手を握り締める。
「その辺言われて、怒っちゃうのは精神修練が足りないねぇ。まあ、でもすぐに殴りかかかって来ない辺り、昔と比べて大人になったか…。」
「そういう事言われて不快に思わない奴のがいないと思うんだが…。」
「それを仮面に隠すべきさ、特にアークライあんたの場合はね。」
アークライはため息を吐く。
「それで、この第三の侵入者さんは何処へいったんだ?ミアが目的だとするならば、俺達を襲いに来る筈だろう?」
実際、脱出の際はミアもマナも満身創痍な状態にあった。
アークライも連戦の疲労で消費しており、狙うならば格好のチャンスだった筈である。
「さてねぇ、途中であんまりに簡単にことが進んでやる気がなくなっちゃんじゃないかい?」
「おいおい、あんたじゃあるまいし…。」
事実、カレン・ローゼンはたまに気まぐれで仕事を放り投げる事がある。
カレンというハイスペックな人間に振られた仕事を凡人がやる羽目になり涙を流しながら右往左往するのは騎士団時代ではもう当たり前の光景だった。
「なんか引っかかる物言いだね。まあ、『D』といったって、所属する人間はそれぞれさ。教義に忠実なもの、組織を利用するもの、そして、荒事が好きなもの、そういった有象無象の塊なんだ。あれはね・・・。まあ、可能性として聞いておいてくれ。ただね――――」
カレンが急に真剣な眼差しでアークライを見つめる。
「―――あたしの予想が正しければこの第三の侵入者、少々厄介だ。」
「厄介?」
「そう、その侵入者は『断罪者』の可能性がある。」
「―――――なんだって…。」
アークライは驚きに声をあげた。
「そう、教団を取り仕切る3人教皇達の懐刀たる十柱。一人一人が天士と同等以上の力と持つとされる奴らさ。過去に騎士団が遭遇した断罪者は3人いるが、その内一人と風貌が似通っていてねぇ。」
天士とは、魔導5層の内、4層の魔法を体得した魔導師の事だ。
第五層が魔法としてはイレギュラーなのを踏まえ、それは実質的に最高の魔導士である事を意味する。
「どんな奴だ?名前は?」
「さあ、名前は知らんさ、ただ2つ名はわかっている。『死風』・・・断罪者屈指の処刑人だそうだよ。」
「――――死風。」
アークライはその二つ名を噛み締める
「しかし、もし、もう一人の侵入者が断罪者だとするならば、教団は彼女にそこまで本気だっていうことなのか?」
「だろうね、奴らも教義の元に『虚属性獲得者』の保護は最優先だとしている。」
「とはいえたかが20歳もいかないような少女だぞ、それに彼女は――――――」
アークライははっとして口に出そうとしていた言葉を飲み込む。
カレンは興味深そうな顔をして、
「彼女は―――――なんだい?」
そうアークライに聞き返す。
アークライにはミア・クイックに会って、あの脅威の召喚魔法を見てから、ずっと疑問に思っていた事があった。
未だ推測の域を出ないが、
「正直、確証はない話なんだが…彼女は…ミア・クイックは、本当に虚属性獲得者なのか?」
「どういう意味かえ?」
カレンはアークライの言いたいことが何なのか?それを察しながらとぼけてみせる。
まずアークライの推論を全て吐き出させるつもりなのだろう。
ならばとアークライは口を開く。
「俺の知る限りでは、虚属性獲得者って言われるような人間は、基本的に『その属性以外の魔法を使えない』ものだ。これは伝承にあるミコトもそうであったとされていし、何よりスピカがそうだった。」
「――――懐かしい名前だねぇ。」
そう名前を懐かしむように、それでいて少しの後悔の色を声に乗せて老婆は相槌を打つ。
「だが、あいつはどうだ?あいつが使ったのは水の魔法だ。その規模は類を見ないものであったし、確かにあれが普通の人間ではないという事は、俺も納得は出来る。だが、本当に虚属性獲得者であるのならば、あいつはそもそも基本四属性の(・)魔法使えない筈なんじゃないか?」
「―――つまり?」
そう催促するカレンに、アークライは意を決して尋ねた。
「あいつは本当は虚属性獲得者でもなんでもなくて、ただ、桁外れの魔力を持つ、ただの魔導師なんじゃないか?と言ってるんだよ。」
「―――ふふ、面白い事を言うね、アークライ、あれだけ認知の外の代物を見せられて、そういう事を考えてるあんたをあたしは好きだよ。」
「やめてくれ80超えてるババアの好意なんて背筋に悪寒が走る。」
「ははは、まったくだよ、まったく。」
大笑いするカレン。
「それで、どうなんだ?ミア・クイックは本当に虚属性獲得者なのか?」
それはアークライがミアが召喚した水の竜を見た時からずっと抱いていた疑問であった。
もし、彼女が、ただの勘違いで襲われただけだとするならば、彼女はあまりに報われない。
自分の事を不幸を撒き散らす女だと泣いて訴えた彼女の顔が忘れられない。
もし彼女が狙われる理由が無いのだとするのならば正しておきたい。
「さて、どう答えたらいいだろうね…正直なところを言うとわからないというのが正しい。」
「―――わからない?それは一体…。」
「あんたも知ってるだろうけど、虚属性っていうのはそれぞれの術者によって得られる特性がまるで違う。有名なミコトは全てを消し去る虚であったそうだし、スピカは死人と語らう力を持っていた。つまり、カテゴリー分けが不可能な魔法をあたし達は一つにまとめて虚属性としてる訳だね。」
「ああ、知っている。」
カレンが何を言おうとしているのかはアークライには理解出来た。
しかし、それが通るのだとするのならば、スピカが言っていた言葉が全てただの妄言になってしまう。
それはアークライにとって受け入れがたい話でもあった。
「つまり、四属性を扱える新手の虚属性が現れる可能性だってある…。」
「―――でも、スピカは自分たちは生まれた時から普通の魔法を出来ないようにされていると言っていた。」
「確かにね。あの娘は言ってたね。四属に属さない魔法、つまり『虚』を持つ人間は『虚』を持つだけでそのキャパシティのほぼ全てを使ってしまっている。結果、『虚』を持って生まれた時点で、それ以外の魔法的能力は全て扱えなくなっていると…。」
「なら、ミアは虚属性獲得者じゃないんじゃないか?」
「だとするならば、どうする?」
「それを知らしめる方法を考える。ミアを狙う人間にミアは虚属性獲得者では無いと納得してもらう。」
「滅茶苦茶言うんじゃないさ…それに虚属性抜きにしたってあの子の魔力は異常だ。結局どこかで誰かに狙われるだろうさ…。しかし、あんたにそこまで言わせるとはねぇ…確かに良い娘だったけど、あんたああいうのが好みだったのかい?」
「そういう意味じゃない。ただ、あいつを見てるとあの馬鹿を思い出してさ…あいつがあのまま本当にあいつの言うとおりに不幸になったりしたら本当に後味が悪いんだよ。」
しばしの沈黙。
その後、カレンはアークライを憐れむような目で見て慰めるように言う。
「あんた、まだあれを引きずってるのかい?まあ、無理も無いとは思うけど…あれはあんたのせいじゃないよ…。」
「だとしても…あれは俺の生涯最大の失態だ。」
スピカの首筋に赤いラインが光り、噴水のように溢れた光景が未だに忘れられない。
彼女は普通に生きていたかった、ただそれだけなのに、虚属性なんて訳の分からない物を抱えたせいであのザマだ。
カレンは少し、アークライを心配するようにして言う。
「確かにスピカとミアの境遇は似ているねぇ、でもあんまり重ねるんじゃないよ…スピカはスピカでミアはミアだ、そうやって重ねて見ているといつか痛い目を見るよ…。」
アークライは頭を掻いて、大きく息を吐く。
「…わかってるよ…それでどうなんだ?あんたらの方ではミアはどう見えてるんだ?」
「さっきも言ったじゃないかい、わからないって…確かにあの娘は『虚』持ちと言われる人間でも異端だ。水を操り、治癒魔法すら扱う。それは確かにスピカの言っている事と反する。だが、それと同時に彼女は普通ならば出来ない事をやってみせている…。」
水の竜の事を指しているのだろう。
あれは確かに異常だった。普通ならば人一人で行使できないような魔法だ。
しかし――――とアークライはカレンを白い目で見た。
「いや、正直あんたがありえないとかどうこう言うのにまるで説得力が無いんですが…。」
その視線にカレンは素っ頓狂な顔をして・・・
「あたしのは人間技さ。ちょっと頑張れば誰だってあたしぐらいにはなれるよ。」
「あーはいはい、自覚ないって幸せですね。」
「はぁ、これだから、近頃の若いもんは・・・。」
カレンは呆れたようにため息を吐いた。
この流れはアークライがカレンに師事してから既に数百度繰り返されて来ている門答である。
もう面倒臭くなって突っ込む気力すらわかなかった。
彼女以外の誰もがそんな解答に納得していないのだが、彼女の人並み外れた能力の話を彼女自身が聞けば必ず『あたしのは人間技さ』『あんたも頑張れば出来る』とへそで茶を沸かすような事を平気で言う。
ちなみにカレン・ローゼンは文字通りの意味でへそで茶を沸かせる逸材である。
そもそも齢80超えてるのに帝国最強なんて呼ばれている老婆なのだ。
もはや老いによってその体は枯木のようだというのに、どこにそんな力があるというのか…。
アークライは不平等という言葉を彼女と共にいる時こそ最も感じる。
本人に言っても意味のない言葉であるが…。
「それで、あんたは彼女がそれでも虚属性獲得者であるという根拠はあったりするのか?」
「ああ、まあ、気になるところは結構多いんだよね。まずはさっきも何回か話題に出したが彼女の魔力量、あれは異常だ。虚の持ち主でないと説明が付かない。あんたはあれを桁外れの魔力を持つただの魔導師なんて言ったが、正直、そんな桁外れの魔力を持つって時点でその論調は色々破綻しているよ。」
「確かにな。」
アークライは頷く。
彼女が用いた召喚魔法。
またの名を精霊魔法といい第四層『遠』、つまりは『指定座標にある現象の操作』の秘奥とされるものだ。
座標にある物質に指向性を与え行動をプログラムし、供給された召喚物は魔力が続く限り自動的に動作する。
それは扱うだけで命の危険を示唆される程の膨大な魔力量を消費し、通常ならば、ブースターと呼ばれる支援魔法使いの協力を得て初めて扱えるものだという。
それでも大体は人間サイズの精霊の召喚が限度であり、ミアが召喚した数十mもの巨体を持つ竜の召喚などもし召喚魔法が扱える天士に聞くものならば、鼻で笑われるものだ。
そんなものを使えば人は一瞬でミイラになってしまう。
けれど、ミアはそれを無理なく扱った。
その魔力量は異常である。
おそらくは帝国の人間100人分…いや、もっと多くの魔力が必要な筈だ。
「それにもう一つおかしな所があるんだよ…。」
カレンは笑っていう。
「おかしなところ?」
「ミア・クイックが水の竜を召喚したとされる川を後であたしとクレアで見に行ったんだけどね。召喚っていうのはようは魔力で物質に指向性を与えるといった行為の極限だからね。その残滓から何かを感じ取れるかもしれないと思ったんだ。けどね―――」
「――――けど?」
「あたしがそこに着いた時、そのミア・クイックが水の竜を召喚したという川がね――――」
カレンが少し間を置いて言う。
「――――丸ごと干上がっていたんだよ。そこにあった筈の川自体が無くなっていた(・・・・・・・・・・・)のさ・・・。」
アークライは驚き言葉を失った。
「まるごと無くなったという事か、どこかに別に川が出来たとかそういう?」
「いいや、そんな事はなかったよ、川に流れていた水が全てそこから無くなってしまった、そういった印象を受けたね。」
アークライは考えるようにして・・・。
「それは、彼女が川に与えた魔力がまだ残っていて、彼女の召喚した竜が未だに動き続けているという事なのか?」
「もしくは、それ以外の何かがあるか?だね。」
そういって、カレンは最後の茶を飲み終えた。
―3―
「さて、もう遅い…今日のおしゃべりはこんな所かね。」
カレンは疲れたと右手をぶらぶら振って、一息を吐く。
そうして、勘定をしようと財布鞄から取り出した。
「待てよ、カレン。」
呼び止めるアークライ。
「なんだい?今日は奢りでいいよ。」
「いや、自分の分ぐらい自分で払う。あんたに貸しを作るのは怖い…それにあんた俺に一つ言い忘れてる事はないか?」
カレンは顎に手を当て少し考えるようにした後、
「なんか、あったっけ?」
「あんた俺に押し付ける厄介事の説明はどうした!?」
思わず叫ぶアークライ。
カレンはぽんと思い出したように手を叩く。
「あー、そういやあった、あった、」
「あのなぁ…。」
そのわざとらしい挙動にアークライは呆れる。
「んー正直、もう顎が疲れてしまってねぇ、喋るのめんどいから、とりあえずあんたの家に帰ればいいと思うよ。」
「どういう意味だ…。」
「帰ればすぐにわかるという事さ…もう到着する時間だしね。」
カレンはそう言って、勘定を済ませる。
「じゃあ、あたしは行くよ、彼女と仲良くやってくれ。」
そう言って、カレンは喫茶店からでる。
「おい、待て!」
追うようにしてアークライは外に出るのだが、そこにはもう目の前にいた枯れ枝のような老婆はいなかった。
「どうやって消えてるんだよ…あのババア…。」
そうして呆れつぶやく。
その背後で初老の男が、こめかみをピクリとさせながら立っていた。
「お客様、お勘定をお願いしたいのですが…。」
アークライはやってしまったと頭に手を当てて
「―――――すいませんでした。」
そう謝罪した。
その後、アークライは料金を支払い帰路に着いた。
ちょうど真昼であり、日差しが一番強く熱くなる時間だ。
ルスカの天災を受けてそこら中に水が溢れていた事もあって、湿度が高くジメジメとした熱さがアークライを襲う。
聞く所によるとこの暑さはあと3日ぐらい続くのだという。
流石に耐え切れないと思い、アークライは道中で商人たちから氷を買って、自身の家の戸の前に立つ。
正直な話、家の戸に手をかけた後、それを開くのに少し躊躇する。
かの老婆曰く、アークライに押し付けた厄介事というのは、自分の家に入ればすぐにわかるのだという…。
脳裏を巡る悪い予感。
それにほぼ確信がある。
―――――開けたくない。
ふと、アークライはそう思った。
どうして、自分の家に入るのにこんなに気持ちが重くなるのだろうと悲しくなった。
意を決して戸をあけ、部屋に入る。
そこには少し怒ったように頬を膨らませているマナと、もう一人、黒い髪の少女がいた。
アークライはその少女がすぐ誰だか察し、ため息を吐く。
アークライがカレンに少女はどうしている?と尋ねた時、信頼出来る所に預ける予定だとは確かに言っていた。
しかし、それがこういう事になるとは…アークライは頭を抱えたくなる衝動に狩られる。
少女はアークライに気づき…少し緊張したような顔をした後、お辞儀して言った。
「えっと、カレン・ローゼンさんからの紹介で今日からここでお世話になる事になりました、ミア・クイックです。アークライさん、よろしくお願いします。」
そういって、ミア・クイックは礼をする。
一応、ここ一人部屋なんですよ、お嬢さん。
―Capter 1 Arclai END―
続けるかどうかは反応見て考え中かな
来週キャラ設定あげます。
新章2週間後ぐらいを目標にはじめます。




