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数多神語り  作者: kusina
2/5

第弐幕

空間にある亀裂から禍々しい黒いもやが溢れ出ている

間に合ったみたいだ…

人気のない公園、普通の人達は気付きもしないんだろうな…

けど帰りに見た時より一段と開いてる

普通はこんなに早く進まないはずなのに…

早いうちに終わらせよう

「蝦根?何分張れる?」

さっきまでのふざけた感じを改めた蝦根に確認する

「紫蘭次第かな?お前が「あの状態」で全力で暴れても15分は維持出来る」

それだけあればお釣りが来る

「了解っ!!じゃあ宜しく」

蝦根は霊力を高め…

ジャケットから札を出して準備を始める

「任せろ?くれぐれも暴れすぎるなよ?

現し世から此の場を離し…常世から此の場を守らん…隔絶し泡沫を現し世へ…「式守しきがみ」」

祝詞を唱え終わると、自身を中心に紫紺の壁が広がりすっぽり亀裂を中心に空まで覆い隠すようにドーム状に形成された

紫と青かぁ

なかなか固いな…

純粋な紫に近ければ近いほど「式守」の強度は上がる

一度、父様が張ったのを見た事があったけどあの時は綺麗な紅紫だったのを覚えてる

「俺は維持しながら援護が限界だから、後は頼むぜ?」

さてと…これからは蝦根の言う通り俺の仕事だな


俺も内ポケットから札を取り出して集中して霊力を高めていく

高めた霊力を札に集め、ゆっくりと確実に祝詞を読み上げだす

「我を守護する…20の神々よ…伏して奉り願い申し上げる…常世に現れた穢れを払い…開かれる闇の門を閉じる力を貸したまえ…常世を清める力を我に…」

無事に読み上げ終わると札が輝き出す

亀裂に向かって札を投げると綺麗に中心に張り付き亀裂を閉じて行く

「陰陽師だ…」

「我らの敵だ」

「折角開いた「鬼門」を閉じるなど…」

「許さぬ…」

歪んだ声が辺りからざわざわと聞こえ始め

閉じらようとする亀裂を守るように亀裂から溢れる禍々しい黒い靄が人形をとり辺りに数多く現れる

闇に住まう者達「妖怪」だ…

「数は17って所か?殆どが小物の蜘蛛だな…

気を付けろ?幾ら小物でも、この数だ…

舐めてかかると痛い目見るぜ?」

蝦根は自身の結界に現れた数と種類を教えてくれる

「大丈夫だよ?「式守」の

維持と適当なアシスト宜しくね?」

さぁ?踊るよ?

この程度なら少しの闇の気配も外には漏れないはずだ

式髪しきがみ三日月宗近みかづきむねちかっ」」

霊力を刺している簪に込めて媒介にして髪の隅々まで行き渡らせ

霊力を込めて伸ばした髪で無数の黒く鈍る髪の太刀を頭の左右にを作り上げる

「ヴオォー」

暗く響くような声で人に擬態した蜘蛛達は背中から服を突き破り八本の脚を生やし四つん這いになって向かってくる

こんなの「式守」の結界の外でやったら大事件だな…



蜘蛛達の脚が一斉に襲い掛かる

1つ1つは大した事がなくても死角を突き、連携をとり休む事なく攻撃してくる

けど…残念だな

向けられる脚の全てを切り落とし、薙ぎ払い、身体を貫いて切り上げて真っ二つにしていく

後ろから飛び掛かってきた奴も動きが簡単過ぎて軌道を読んで振り返る事なく切り捨てる

「次っ!!全然話しにならないっ」

声を荒げ蜘蛛達を引き裂いて叩き斬る

祖母様の小鬼に比べたら弱すぎる

最後に残った少し強そうな大きい蜘蛛は狼狽えながら叫ぶ

「馬鹿なっ…こんな小娘に全滅させられるとは…まぁよい…だが、いい気になるなよ?

俺は奴等と違うからなっ」

それ?死亡フラグだけど?

強がりながら奴は完全な蜘蛛の姿に戻り真っ直ぐ向かってくる

「さよなら?」

髪の太刀で貫こうとすると脚を巧みに使って綺麗に全ての斬撃を弾いた

「数が大き過ぎて力が足りぬわっ」

歪んだ声で嬉しそうに言う

なかなかやるじゃん?小物してはさ?

「もったいないけど…「数珠丸じゅずまる」」

髪の太刀を作り変えて細身の5本の太刀を左側に作る

「なっ!!馬鹿な…こんな小娘が鬼女の様ははずは…」

狼狽え過ぎだよ?

巨体になった蜘蛛が言い終わる前に

「お休みなさい?」

5本の太刀を素早く操り小間切れにする

「ふぅー終わったー、無事に終わったね?」

倒され黒い霧に変わっていく蜘蛛達の亡骸を眺めながら髪を清め、元の髪型にもどす














パチパチと渇いた拍手の音が聞こえ驚いていると目の前に突然黒い着物を肩まではだけて胸で止めたボブカットの病的に白い肌のイヤらしいオーラが全開の女が現れた…

は?

どうやって現れた?

蝦根を見ると俺と同じように驚いている

目で見るまで気配すら感じなかった…

「凄いんだねぇ~?お嬢チャン達?

隠してた「鬼門」を見付けるだけじゃなくてぇ~、辺りにいた僕の眷族まで一瞬で倒しちゃうなんて?

すてきなカップルだねぇ~

しかも、極めつけはこれだぁ~?」

愉快そうに笑いながら「鬼門」に張ってある札を強引に引き剥がした

封印に使われていた力が一気に暴走し紫電になり辺り一帯を眩しく照らす

放電が終わり周囲が見えるようになるとそこには傷1つない女が焼け焦げた札をヒラヒラと弄んでいる

そんな…

封印する札にはそれなりに力は込めてある

それを無理矢理剥がして服すら焦げてないなんて…

「いやぁ~痛かったぁ~

ほら?指火傷しゃったよぉ~?

ねぇお嬢チャン?スゴいんじゃないぃ~?

こんなに小っさくされちゃったらさ?

簡単には広がらないよぉ?

どうしよっかっ?取り敢えずワルいコにはぁ~

お仕置きだねぇ?

お嬢チャンは処女~?まぁ済みでも結界張ってる彼氏よりはスゴく良くシテあげるからぁ~?」

卑しい笑みを浮かべながら近付いてくる

余りの衝撃と女から発せられる重圧で身動きがとれない…

「おいっ!!紫蘭っ!!」

振り絞る様に出された蝦根の声で我に返る

いったん後ろに跳び、距離を取った

「そんな趣味はないよっ!!「童子切どうじぎり」」

髪に最大限の霊力を込めて1つの大刀を作り上げる溢れた霊気が青く刃先から溢れ出る

思いっきり跳び間合いを積めると頭から女を真っ二つにするために降り下ろす

「へぇ~紫蘭チャンって言うんだぁ~?名前も可愛いねぇ?」

何事もないかの様に表情さえ崩さずに片手で受け止められる

嘘だろ?

「式髪」の中で最高の威力を誇る「童子切」でこれか…

「僕は「女郎蜘蛛」って言うんだ?宜しくねぇ~生意気な子にはオシオキだよぉ~?ほら?」

腹部に鈍痛と共に鈍い音が体内から聞こえ次の瞬間には大きく後方に吹き飛される…

「蝦根っ!!」

蝦根は札を投げ一瞬で風のクッションを作り俺を受け止める

相当激しくやられたらしく風がなくなると刃を地面に突き刺して支えにしないと立ち上がる事さえ出来なかった

「おい…大丈夫なのか?」

心配そうに蝦根は駆け寄けよって治癒を施してくれる

「いや、多分…

内臓と骨が何本かイカれてる…

恐らくだけど、一発殴られてこれだ…

反応も出来なかったし、蝦根は後何分?」

口から吐き出しながら問い掛ける

「アイツが本気ならとうに壊されてる…お前の治療に大分使ったし、持って後5分だな…」

隠してるけどその表情からするに5分も持たないな…

この実力差だ、逃げれるとも思えない

蝦根に治されて一人で立てるようになると口の血を拭いながら簪を外して髪をほど

やるしかないか…

見込みは殆どないけど、このままだと確実に殺される

覚悟決めるか…

「ねぇ蝦根?25秒稼いで?」

瞳を合わせて蝦根にもしかしたら最後になるかもしれないワガママを言ってみる

察したのか

「本っ当に、姫はワガママ大好きだな?良いぜぇー

この斎蝦根、姫の為に命を賭けるよ?

やれよ?好きなようにさ?」

いつものように軽口でからかうように笑った

俺と蝦根の会話が終わると待ちわびたように

「最後の別れ話はすんだぁ~?

蝦名クンだっけぇ~?心配しなくても、紫蘭チャンはちゃんと僕が隅々まで可愛がってあげるよぉ~?ちゃ~んとキミの死体の前でさぁ~?」


俺を吹き飛ばして空いた距離を卑しい笑みを浮かべたまま…

ゆっくりじわじわといたぶる様に歩いてくる

「そうはいくかよっ!!」

蝦根は一瞬こっちを見ると札を空中に投げる

辺りはさっきよりも眩しい光に包まれた

「眩しっ」

女郎蜘蛛は光に目がくらみ足を止める

その隙に目を閉じて集中し簪を胸にあて、ありったけの霊力を込め続ける

溢れ出した霊力が体の周りを包んでいく…

周りに集まりだしてゆっくりと体が浮きだす

もう少し…

簪は刀の柄に変わった…

後、もう少し…

「セコイなぁ~?蝦名クンさぁ~?」

辺りが静寂に包まれる前に不機嫌そうな声が聞こえた









蝦根

紫蘭が終わるまではなんとか耐えないとな…

流石に格好つけたし、何よりこいつを外に出すには危険過ぎる

さっきの目眩まし位じゃ足りないな、

後20秒

「知ってるか?結界はこうゆう使い方も

あるんだぜ?」

周りに新しく簡易結界を張って閉じ込めてやる

「へぇ~?スゴいじゃん~?発想は良いよぉ~?

けどねっ」

拳一撃で砕かれる

「こんなんじゃ~僕は封印出来ないかなぁ~?」

段々女郎蜘蛛の進むスピードが早くなってやがる

くそっ!!こっちは時間稼ぐのに必死だってのに…

せめて「式守」の維持が無ければ…

もっと大きな符術も使えんだけどな…

後15秒

後ろに目をやると紫蘭が宙に完全に浮き出した

もう少しだな、良しっ!!取って置きを使うか…

「ほらぁ~!?

余所見しないでよぉ~?」

笑いながら黒い糸を飛ばしてきやがる

咄嗟に結界を前に張ると硝子みたいに一瞬で割られ防ぎきれない数本が太股や腕、脇腹をを貫いていく

「くっ!!」

余りの痛みに声が漏れる

「あははぁ~?大変だよねぇ?

結界を張ってて大した事出来ないからさぁ~?」

後10秒

「勝負しようよぉ~?これからゆっくり力を解放していくからぁ~?耐えてごらん~?ほら?」

その言葉と同時に一気にかかる負荷が上がる

「あ″ぁっ!!」

気を抜くと一瞬で崩壊しそうになる…

亀裂が走りはじめて本当に維持するのが精一杯かよ…

「良く出来ましたぁ~?たまんないねぇ~?

その表情?イイ顔だよぉ~?ほらっ次っ」

高笑いしながら更に力を解放される

5秒

「へぇ~?頑張るじゃないぃ~?ってもう集中に必死で聞こえてないかぁ~?じゃぁこれはぁ?」

脇腹を何かが抉った様な気がするけど駄目だ…

所々、ひび割れて漏れだしてる…

「………………」

何か言ってんだろうけど、聞こえねぇな

後3秒

くそっ!!力が入らなくなってきた

立ってんのもシンドイ…

眩しいな、目を閉じていても分かる位だ

成功したか?

後1秒

「へぇ~?頑張ったじゃない?」

煩せぇよ?お前に言われたかねぇよ

残る最後の気力を振り絞って取って置きの爆符を顔面に喰らわせてやった

「イイ度胸してるじゃん~?軽く殴ってあげるよぉ~?ほら?」

後0秒

殴られて意識が刈り取られる前に壊れていく結界に被されて張られる新しい結界に安心して俺は意識を手放した…











紫蘭

やっと霊力を紡ぎ刀の柄と胸当てを作り終わって目を開けるとボロボロになって倒れた蝦根の頭を女郎蜘蛛が何度も踏みつけていた

「離せ?」

俺の声に気づくと

「あらぁ~?素敵な格好だねぇ?でも、おそいよぉ~?ほら?」

と蝦根に目線を送り足に込める力を上げた

「足を退けろ?」

睨み付けると

「怒った顔も可愛いねぇ~?

でも口が汚いのは減点だねぇ?これからナニするぅ~?」

ふざけた言葉を無視して柄を構える

「大倶利伽羅…」

柄を向けて横に一閃すると巨大な刃が現れ女郎蜘蛛を吹き飛ばす

急いで蝦根に駆け寄る…

良かった、生きてる

霊力を込めて傷を塞いで吹き飛ばした女郎蜘蛛に一瞬で追い付くと追撃を与える

「七星剣…」

刃を細く作り直して出来る限りの早さで一降りで7回の斬撃を縦横無盡に何度も繰り返す

土埃が上がり女郎蜘蛛は地面にめり込んでいく

「調子に乗りすぎっ」

巻き上がった土埃の中から黒い糸が

飛んでくる

避来矢ひらいし…」

胸当てに霊力を送ると薄い青色の膜が周囲に現れ黒い糸は膜に当たると曲がり明後日の方向に飛んでいく

「さっきとは随分な違いだねぇ?その胸当てと柄位でさぁ?」

女郎蜘蛛は真面目な顔になり、服に着いた埃を払う

あんだけやってもまだ傷1つつけれないか…

でも、口調が確実に苛ついてる

「霊装だよ?あんたに話しても解んないとおもうけど…

さっきまでとは違う、よくも蝦根をあんなにいたぶったな?」

一気に殺気を解放して女郎蜘蛛をさらに睨み付ける

「奥の手って感じだねぇ?良いよ?それなら少しは本気を出してあげるよ?」

溢れ出した力がさっきよりも遥かに上がり邪気もさらに溢れ出る

もう無理かも?

思った矢先

(少しなら…力を貸してやる…)

頭に声が響く

(後はお前次第だ…我の一部を纏うがいい…)

この声、聞き覚えがある確か…

(呼べ…我名を…)

父様の式の…

いける、これなら…

「霊装「謄蛇とうだ」」

その名を呼ぶと炎柱が地面から自分を守るように打ち出る

柄は途端に両腕に絡まり指先に鋭利な爪の着いた濃い紅色の籠手に変わる

胸当ては斑の赤黒い鎖帷子に変わり膝まで垂れる

炎が収まり「謄蛇」の一部を纏った俺を見るなり


「へぇ?本当はそこまでやれるんだぁ?」

まるで懐かしいものを見たかの様に女郎蜘蛛は目を細める

「いや、これは偶々だよ?アンタは許せないからさ…」

自身の限界を遥かに越えた力を纏い体が悲鳴を上げる

痛みを無視して向かい構える

刹那、想像を絶するスピードで爪と拳がぶつかりそのまま踊る様に蹴り合い、殴り合う

互いに一撃も決定打は当たらず、黒い糸は当たる前に燃え尽き、爪から放たれた炎は幾重にも編まれた糸に 阻まれる

「へぇ?やるじゃない?」

少しずつ女郎蜘蛛の顔に焦りが出始める

傷1つ付かなかった服は焼け焦げ躱しきれない爪の傷や爪先から発する炎の火傷の後も徐々に目立ってくる

これなら勝てる…

動きも見えるし攻撃も驚異じゃない

片方の爪を地面に突き刺してそれを軸に回し蹴りを繰り出す

(もっとだ…我の力は…そんな物ではない…)

「燃え尽きろ?」

蹴りを躱した女郎蜘蛛を追うように地面から何度も火柱が上がり続ける

「しつこいなぁ?」

空中に糸を張りそれをバネして上がり続ける火柱を器用に避ける

避けるのに必死だ…

今なら当てれる

(そうだ…焼きつくせ…)

勝手に両手が構え掌の間に高温の火球を作り出していく

火柱に気をとられている背後から自身で張った結界をも壊れる程の巨大な火球を投げ付ける

「嘘っ!?あ″あ″ぁ″ぁ″っ」

火球が直撃すると声にならない声を上げて火球に飲み込まれていった

「お休みなさい?」

着地すると地面に両爪を突き刺してさっきよりも遥かに激しい火柱を絶叫を飲み込みながら浮かぶ火球に打ち上げた

「もう無理…」

膝をついて打ち上げた炎が収まり辺りに舞い上がる黒い霧を眺める

巻き込まれないように結界内で横たわる蝦根を見て安心すると一気に意識が遠のく…

(合格点だ…後継者よ…)

薄れる意識の中で満足そうな「謄蛇」の声を聞いた



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