第三話
他の国に来たのは初めてだったから、緊張してしまったと少し恥ずかしく思いながら、ついさっき通った水の国の王都の門を見る。
王都の門ということもあり、火の国のそれに勝らずとも劣らない美しい作りである。
それに…と馬車の窓から水の国の街を見る。
話には聞いていたが、美しい街だ。家のひとつひとつが、純白に輝く大理石で出来ている。もともと自然に恵まれているこの地域は、大理石をはじめ、その他貴重な鉱物がたくさん採取できる。まあ、そのせいで他の国からよく狙われていたものだ。今は水の国の特産品として高値でやり取りされている。
ほとんど他国との交流を避けてきた水の国ではあるが、貿易は続けてきた。そうしないと再び他の国が攻め入ってくるのが安易に予想出来るからである。
その街の中でも特に私の目を引いたのは、街のいたるところを通る数多もの水路や噴水だった。流石水の国という感じか。火の国は、ゴツゴツした岩場が多かったので新鮮に感じる。
今、私は馬車で移動しているが、ここに住んでる住人は、小船を使って移動しているらしい。
そうして、一息ついてふと正面をみると、そのあまりに素晴らしい光景に時間が止まってしまったかのように感じた。
「キレイ……」
確かに、この街は美しかった。だが、目の前に現れた城を見ると先ほどの街が霞んで見える。
城は街の家々と同じく、白い大理石でできていた。何が違うのかというと、城は湖の中心部にあった。白い大理石はそれだけで神聖な印象を与えてくれるが、この城は湖の水が日の光を反射し、本来白いはずの城壁は、ゆらゆらと青く色ずいており、常にその色を変化させ、定まることがないのである。
私は、すっかり緊張を忘れ、うっとりして目の前の景色を眺めていた。
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なんでこうなったの!!
現在、私は他の花嫁候補に囲まれていた。
あの後、すぐにボートに乗り換えた私は城に着くとすぐに部屋に案内された。そこまでは良かった。だが、すでそこには何人か花嫁候補がいたのだ。
今まで、談笑していた彼女たちは、私を見つけるとすぐに近づいてきた。
「あらあら、誰かと思えば火の国のお姫様じゃなくて?」
嫌な奴に会ってしまったと、目の前の女を見る。私より2歳上の18歳で、王族を示すその濃い緑色の髪、目は形の良いアーモンド型で、上品な鼻と唇。そして、何よりその胸にそびえる双丘は、はちきれんばかりにドレスを押し上げていた。そう…こいつは…
「どうしたのアリシア?この私、雷の国の女王イザベラの一人娘、イリスにおじけずいてしまったのかしら?」
「お久しぶりです。イリス様。お元気でしたか?」
国王が女性という珍しい国である雷の国イグジスは、火の国の北部に位置しており、よく交流がされてきた。それもあり、昔からイリスの相手をされられた。してもらったのではなく、私がしたのである。年下のわ た し が。本当に面倒な奴だった。あれが欲しいこれが欲しいと、私のお気に入りのぬいぐるみのほとんど奴に持っていかれた。そのくせ、胸ばかり大きくなって…。私の方はと、自分の胸を見ようとして頭をさげ……
だ、だめだ。見てはいけない。例え 、そこに広大な平原が広がっていようとも。そう、私は成長期だから大丈夫。焦らなくていいわアリシア!!
「まあまあ、ですわね。それにしても、あのオドオドしていたアリシアが今回の水の国の殿下の結婚に名乗りを上げるなんて、ビックリしちゃったわ。」
「わ、私は昔の私じゃないんです、油断してたら危ないですよ」
「ふん。まあ、いいわ。精々頑張りなさい。あなた達行くわよ」
そして何人か雷の国の取り巻きを引き連れて元いた場所に戻っていった。
はぁ~とついついため息をついてしまった。ここで、ようやく部屋の様子を見ることができた。集まっているのは、15人くらいか…それも見る限り、王族または、有力な貴族の娘たちだろう。
土の国の王女アスタルテ、身長は土の国の民の特性であまり高くないが、ぱっちりとした大きな目は母性がくすぐられる。ワンピースタイプのドレスを着ているが、その容姿もあいまってとても似合っている。気が弱いのか、先ほどから、キョロキョロと周りをみまわしている。ちなみに髪の色は茶色だ。
つづいて、風の国の王女ウィンディーネ、こちらは少しボーイシュな感じだ。短く切られた、その黄色い髪は、目がキリッとし、全体的にハッキリとした顔立ちの彼女に合っている。ただ、先ほどから、部屋の中に用意されていたお菓子をこれでもかというくらい食べており、頬に食べ残りがついている。
あとの候補者は、よく知らない。青い髪の女の子もいて、国内外からこんなに集めるなんて…水の国の王様も欲張りだなぁと思った。




