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第一話

温かい日差しのもと、一台の馬車が通る。周りを青々とした木々に囲まれ、自然豊かであることを感じることができる。


ガタンという音に続く様に、形の良い馬車が揺れる。明らかに、一般人が乗ることができなさそうな端麗な作りをしている。馬車を引く馬も、風になびくその艶やかな黒いたてがみをみれば、名馬だと分かる。





(んん…)


どうやら、眠ってしまっていたようだ。今の揺れで起きたらしい…

それにしても、またあの夢を見るとは。今の夢の中に出てきた人物のこと、また考えてる自分に気付いて、顔が火照る。


私、アリシア・セフィロスは3年前の誕生日に命を救われた。あの時、川で溺れた私はすぐに城に運び込まれて、専属医の治療をうけたそうだ。私が目を覚ましたのは、それから2日後のことだった。


見慣れた自室の天井を最初に見て起きた私は、足にまかれた大きな包帯や、抱き合って涙を流す両親を見ても、自分に起こったことがすぐには分からなかった。


専属医が、「左足が折れているが、あとは異常はないようだ。いやぁ、こう言ったら悪いが、それでも運が良かった。あれだけ、流されていたら普通は助からない。」と言うと、その時のことが頭の中に蘇り、恐怖と安心感で泣かずにはいられなかった。そんな私を何も言わずに抱きしめ、一緒に泣いてくれた母に、自分が恵まれていたと言うことを改めて実感し、また涙がでた。



その日は、わがままを言って母に一緒に寝てもらった。誰かにそばに居てもらわないと、また暗闇の中に引きずり込まれるかのようで、怖かったのである。オレも一緒に寝ると言った父は、母に却下されていた。いつもと変わらない父を見て、ちょっぴり元気が出た。


次の日の朝、私は母に私を助けてくれた人のことを聞こうと思っていた。何だか無償に気になったのだ。それに、会ってありがとうって言いたい。


私は朝食後に思いきって聞いてみた。


「お母さん、私を助けてくれた人って誰だかわかる?お礼をしたいの。青い髪をした人だったんだけど…」


「アリシア…ごめんなさい。私も娘の恩人だもの、直接会ってお礼を言いたいわ。でもね、誰だか分からないの。その人はあなたを城まで運んで門番に預けて、すぐに居なくなってしまったそうなの。門番が名前を聞こうとしたらしいのだけれど…その時にはもう。それに夜だったし、その人はフードを被っていたから、顔もよく分からなかったって。でも、声を聞く限り、まだ15、16歳あたりだろうって。」


「そっかぁ~」


私が残念そうに言うと、母はハッとしたような顔をして口を開いた。


「あなた、さっき青い髪って言ったわよね?」


「う、うん…」


「それは、どんな青色だったのかしら?薄い水色のような色それとも…」


「えっと、暗くてよく分からなかったけど、薄くはなかったと思う。たぶん…」


私が彼の顔を見たのは、一瞬だったし、何より意識がなくなる直前だった。


「アリシア、よく聞いてね。それが確かなら、結構人数が限られてくるわ。」


「えっ!! それってどういう…」


「あなたや父さん、私は濃い赤色の髪をしているわよね。これは、魔力が強いと色が濃いなり、弱いと薄くなるからなの。王族や、代々貴族の家系の人間は魔力が強い。つまり、髪の色が濃いっていうのは、王族かそれに近い貴族かってことになるの。」


確かに、私は魔力が強いほうだし、学校でも先生に褒められた。でも、それが髪の色と関係あるなんて…お父さんもお母さんも濃い赤色をしていたから、遺伝だと思ってた。でも、よく考えれば、たまに出かける城下町の人達や、城のメイドたちはみんな薄い赤色…というか、赤みがかったブロンドという感じか。


「あなたは、知らないと思うけれど、それって他の国にも当てはまることなの。あなたの誕生日会に何人か来ていたでしょ?」


「うん、今年からだったから、ちょっと珍しかったかも。」


「ふふっ。これで分かったでしょ?その人は、青色の髪…つまり水の国の王族かそれなりの貴族よ。それに、誕生日会に来ていたというだけで、だいぶ絞れるわ。」


「うん…」


何だか、会えるということに現実味が増してくると、恥ずかしくなってくる。あの人の笑顔は素敵だった。安心感を与えられた。その時私は大事なことに気付いた。


「あ、で、でも、お母さん、もう帰っちゃたでしょ?」


「まあ、そうなんだけどね。」


テヘヘ、と母が苦笑いする。だが、気持ちを切り替えた様に胸を張って言った。


「大丈夫よ。うちのお父さん、あんなんだけど、一応王様なのよ!! 娘の恩人のことだから、水の国にチャッと約束つけて、すぐに会えるようにさせてくれるわよ」


「良かったぁ~」


私は、ホッと息を吐き出し、胸の上を手で押さえた。私…今ドキドキしてる。今まで、こんな気持ちは無かった。城のメイドたちが、話してくれたことがあるが、これが『恋』という奴かもしれない。そう考えると、顔が暑くなってきた。胸の奥がきゅぅーとしめつけらける気がする。体が何だかフワフワして、自分の体じゃないみたい。あの人と会う時は、苦手なドレスも着てみよう。お母さんにちょっとお化粧をしてもらうものいいかもしれない。早く会いたいな。楽しい想像が、どんどん心の中から溢れ出してくる。



「あら、私に新しい息子が出来るのも早いかもしれないわね。」


「お、お母さん‼ そ、そんなんじゃないもん!! 私は、ただお礼がしたいだけで…」


お母さんがニヤニヤしながら、私を見つめてくる。しまった、顔に出ていたかぁ~と少し反省する。




そんな時、突然私の部屋のドアがあいた。見ると、私たちの国の宰相だった。その様子は、いつもの冷静な姿からは、想像することが出来ない位、動揺しているものだった。


「王妃様、アリシア様、王がお呼びでございます。」

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