5:ごみ捨て場
時刻表は九時すぎ。こんな時間になってから、お風呂場の電灯がきれていたのをおもいだした。近くの家電屋さんがたしかまだ開いていたはずだったから、財布をひっつかんで急いだ。
無事に電灯は買えた。
買えたはいいんだけど、これはないよ。
「ウソでしょーもう! 雨がふるなんて聞いていわよ!」
着ていた薄手のシャツを頭からかぶって、土砂降りのなか走りぬける。雨で服がべったり肌にはりついて気持ち悪くてたまらない。夏なのが救いかも。もっと気温が低いときにこんな状況になっていたら……うん、間違いなく風邪だわ。
道は真っ暗で走りにくい。街灯はあるけど数は少なく、それにくわえてブツンブツンと点滅しているから頼りにならない。唯一ちゃんとついてるのは、もう少し先にあるごみ捨て場のだけだ。
「いやー! もう雨きらいー!」
やっとごみ捨て場の街灯が見えた。そこを曲がってちょっと走れば、もう我が家だ。
さあ、ラストスパートをかけるのよ縁!
地面をけるたびにとびちる水溜まりを気にする余裕はない。もうびしょ濡れだから、いまさらどう濡れようが関係ないし、なにより早く帰りたい一心でスピードをあげた。
「あと、少し――みぃぃっ!」
足元をみてなかったのが悪かった。ごみ捨て場をすぎようとしたちょうどそこで、なにかに足をとられて豪快にこけた。
痛い、地味に痛い!
電灯が割れるのを死守するために、両手が使えなかったのが悪かった。顔面からこけるのはまぬがれたけど、あごと二の腕、そしてひざがジクジクと痛い。
「あうう。いったいなによぉ」
こんなに盛大にこけるとか、いつぶりだっけ。
私をこんなにしやがった原因はなによ!
「あ、ぅえ?」
薄汚れた灰色のかたまりが落ちていた。
「なにこれ、え、え」
雨でぐっしょりに濡れていて、泥だらけのその物体。
ごみ捨て場から半分はみでた形で、それはあった。