21:後輩の彼女
「浮気相手さんに逆恨みされて刺されないかヒヤヒヤしてるんですよう」
「さすがにそれはないかなぁ」
心配してくれるのはありがたいんだけどな。
「法廷はどんな雰囲気なんですか?」
「ほ、法廷?」
友香は「一年とか二年とかかかるんですよね?」手際よく陳列しながらいった。
「法廷とかありえないよ! 事件じゃないんだからさ」
「ちがうんですかぁ。起訴とかあるじゃないですか?」
二時間ドラマとまぜちゃダメでしょう、ちょっと。
「ぜんぶ無事に終わったから。友香がおもうようなコトは、ひとっつも、ないから」
「フーン。なんか想像してたのとちがうんですねっ。案外ラクショー?」
「まさか! 吉森さんたちのおかげだよ」
「吉森さん」がだれなのか、いまいち理解していない顔。
「エコーのおじいちゃんとおばあちゃん」
「ああ! わかりましたぁ。見た目優しげ中身詐欺、気に入らない人には傷口にハバネロすりこむ人たちですねっ。
でも、ちょっとアタシ、頭の容量がオーバーしましたよ。なんだか頭がごちゃごちゃしてきちゃってえ。センパイはすごいですね。そんなもーこの話はおいときましょー」
そうだったわ……昔から友香はこんなコだったわ。
「預かってる子どもさんのコーディネートでしたよね? どんなコなんです?」
ソーマがどんな子、かあ。
背が低くて体も細くて、チョロチョロ動きまわって、食い意地がはってて、それで……
「――パイ……センパイ!」
「ぅえっ」
「考えこんじゃってるみたいですけど。ダイジョブですかあ?」
友香が心配そうに、私の顔をのぞきこむ。
私は曖昧に笑って、
「うん。ごめんね。だいじょうぶだよ」
「センパイのダイジョブは信用なりません!」
バチンと目一杯背中を叩かれた。ビリッとした刺激が背中にはしる。あんな小さくて愛らしい手から、どうやったらそんな爆竹みたいな張り手ができるのか……。
「体細くて身長がたぶん百センチちょっと。顔はかわいい系で、表情豊かな男の子なんだけど」
「らじゃーっす!」
アイドル並のスマイルをうかべて、友香はウインクをひとつ。
「ではではぁ、しばらくお待ちくださいませ!」