20:ショッピングモールにて
車で二十分のところに、大型のショッピングモールがある。有名なブランドから、最近はやりのファストファッションまで。ショッピングモールはU字のかたちで三階建て。屋上には簡易のアトラクションまである。一時期は倒産の危機におちいったものの、海外企業の子会社になって、営業成績が右肩上がりに回復しだした。いまじゃ「すべて回るには二日もかかる」がキャッチフレーズだ。
「あいかわらず多いわね」
ため息がでるのはしかたがない。あまりに人が多すぎる。私としては、倒産前の人が少ないころのほうが買い物しやすい。ここより七キロくらいはなれたところに、半分くらいの大きさのお店があるけど、ソーマと約束した「はやく帰ってくる」を実行するにはここしかない。
助手席にある小物入れから適当にエコバッグを取りだして、バックにほうりこむ。あの食欲を考えれば、私が普段買う量の三倍くらい買えばたりるはずだ。
けっこうな量を買うことになるから、食料品は最後のしておこうかな。まずは、一番に必要なソーマの服を買いにいくことにしよう。
私はひとつ頬をたたいて気合いをいれて、目の前であふれかえる人の波に足をふみこんだ。
二階の中央エリア、そこのファミリーファッションを扱うお店で、高校の後輩が働いている。そこでソーマの服はすべてそろえるつもりだ。
「こんにちは。元気にしてる?」
「キャァッ、縁センパァイ! わー、久しぶりですねっ」
お店の奥から、ショートカットの女の子か顔をだした。
彼女が私の後輩、三枝友香。私より年下なのに、半年前に二人目を出産したお母さんだ。
「今日はどうしたんです? センパイの洋服の趣味、たしかシンプルなお姉さん系じゃなかったですっけ」
「私のじゃないんだよ。知り合いから一時的に子どもを預かっちゃって、洋服をみつくろってほしいんだよね」
見た目がまるっきり高校生の友香。「いつも笑顔で明るい接客」を心がけてるだけあって、気持ちいい笑顔を私にむける。それが少しくもった。
「ダイジョブなんですかあ? センパイ、ほら、離婚とかでゴタゴタしてるんじゃあ…… 」
後輩たちの中でも、友香とは特別に仲がよかった。だから私が離婚すると教えてから、よくメールや電話をしてくれていた。けど、こうして会うのは二ヶ月ぶりくらいになる。
たいへんにできた後輩をもつ私は、幸せ者だよね。