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2:赤い石のピアス
彼が浮気をしている。それを知ったのは、結婚二年目を過ぎてからだった。彼のスーツにブラシをかけていると、胸のあたりになにかがあった。ひっくり返してふるうと、内ポケットから赤い石のピアスがポトッと床に落ちた。
私は、ピアスホールをあけていない。
なら、なんでこんなのがここに?
まさか……浮気なんて。ありえないわ、だって彼は私を愛してるって言ってくれるもの。そんなの、いや、でも。きっと気のせいよ。バカね、私――そう思いたかった。
でも、それはただの勘違いなんかじゃなくて、すべては現実だった。
もともと隠し事は長く隠せない鷹夫さんは、そのピアスについて問いただせば、こちらがびっくりするほどあっさり浮気を認めた。相手は職場の事務課の人で、私より三つ年下の二十三歳。鷹夫さんが勤める会社は、男性ばかりの建築会社だ。少ない女性社員、その中でも相手の女性はかわいらしい容姿でずっと年下。
「気がつけば目で追っていたんだ」そう告白した鷹夫さんの顔は、彼が私に告白したときのそれにどこか似ていた。