78 怪獣肉のお味は
怪獣とクルクが殴り合う最中にカズヤが怪獣の背後へ回り闇の爆弾の圧縮作業に入った。
ドニシャは怪獣の両サイドと後ろの上空に魔法で闇の薔薇を咲かせた。
闇の薔薇から伸びた棘の蔓が怪獣の足と腕、尻尾に絡まった。
眷属達が優勢になり始めてきた。
殴り合うクルクと怪獣はド迫力で見応えがある。
そうだ撮影は今どうなってる。
撮影を任せていたダークレヴェナントは先ほどの怪獣の一発で遠くまで吹き飛ばされていたみたいで、撮影用ホロタを回しながら怪獣の方へと歩み寄っていた。
なんだあの位置は。
もっと良いアングルで撮影しなきゃ勿体ない。
折角3次元のホログラムで鑑賞出来る世界なのだから。
俺はダークレヴェナントの所まで行って撮影用ホロタを足で掴んで借りた。
上空の見やすい良い位置でホバリングしたり、良い攻撃が入った時には寄って怪獣や眷属達のアップを撮りに行ったりした。
やってることはドローンカメラだ。
ホログラムタブレットの撮影面ではない反対側の面に今撮影している動像のビューがホログラムで表示されているので、小まめに股の隙間から確認して微細な位置調整をしながら撮影している。
俺はカズヤのアップを撮りに行った。
丁度闇の爆弾を圧縮し終わったみたいで、爆弾は周囲の空気をネジ曲げる程の闇エネルギーになっていた。
「死ねぇぇっ!!」
カズヤが叫びなら闇の爆弾を放つ。
俺は闇の爆弾をホロタに捉えながら後方へと移動する。
怪獣の背中に極限まで圧縮された闇の爆弾が着弾し大規模爆発が発生した。
解放された闇のエネルギーの爆発はクルクや闇の薔薇を巻き込んで広範囲を吹き飛ばした。
氷の粒や雪が混じった白い煙が晴れると、怪獣とクルクが組み合ったまま立っていた。
怪獣の硬い鱗は殆ど剥がれ落ち、所々で血肉がむき出しになっている。
一方クルクには多少痣のような模様が出来ている個所も見られたが直に再生してダメージらしいものは無さそうだった。
クルクはフィジカルが強く魔法耐性のパッシブスキルがあるし、闇の存在は黒魔法に対して抵抗を持って居るので闇魔法もいくらか軽減されている。
それに爆発の寸前んで怪獣と組み合いに行ったおかげで怪獣を盾にして爆弾のダメージを減らしていた。
だからカズヤの闇の爆弾がクルクにはあまり効かなかったのだと思う。
クルクは筋肉を更に増量させ力を入れて怪獣を地面に投げた。
クレーターになっている氷の大地のくぼみに怪獣がうつ伏せで倒れた。
背中の剥き出しになった血肉にクルクは噛みつき食いちぎった。
「ギャオオオッ!」
怪獣が悲痛の叫び声を上げる。
良いぞ、もっと過激にいこう。
「カズヤ!ドニシャ!お前達も食いに行け!」
「僕の顎じゃ噛み切れない!」
カズヤが抗議するが、それでも俺は指示を押し通した。
「良いから食いに行け!」
カズヤは俺の命令に渋々従い怪獣の背中へと飛んで行った。
配下のダークレヴェナントやダークナイト、そしてクルクが連れていたダークライカンという種族の狼人間が怪獣に飛びついて傷口に顔を突っ込み貪りだした。
カズヤの爆弾を喰らって体力が落ちたのか、怪獣がもがこうとしても闇の薔薇の蔓で拘束されたまま動けていない。
こう言ってはなんだが、死体に群がる虫みたいだな。
撮影を意識して味の感想でも聞いておこうか。
まずはカズヤに聞いてみる。
「食べてみた感想は?」
「ちょっとだけ臭みがあるけど意外と美味いよ、だけど僕の顎じゃ生肉なんて食べにくいって!」
見た所、カズヤは赤ん坊の小さな手で傷口の肉をちぎりながら食べていた。
本当に少ししか食べてないな。
これでは面白くない。
次はドニシャの所へとむかった。
「どんな味?」
「筋が多いですが程よい脂身で筋美味しいです」
ドニシャは槍の杖で肉をほじくり出してガッツリ肉にかぶりついていた。
美女が良い食べっぷりで映える。
「どう料理したら一番美味しくなると思う?」
「クリーミーなレッドスープと一緒にじっくり煮込むと筋まで柔らかくなり脂がスープに溶け込んで美味しくなると思います」
あっ、普通な事を言い出した。
これは退屈してしまうぞ。
俺は最後にクルクの所へと向かった。
「美味しいか?」
「ブゴッブゴゴッ!」
食いながら喋ってるので何を言ってるのかわからん。
しかも食うペースが速い。
巨体のクルクがとんでもない勢いで肉を喰らっている。
肉だけでなく内臓までも食べ続け怪獣は食い殺された。
死んだと分かってカズヤとドニシャ達は食うのを止めたがクルクは食べるのを止めなかった。
無我夢中で爆食し、尻尾の肉や溶けた脳まで完食してようやくクルクは食事を終えた。
光のドームがキラキラとした光の粉に分解されながら消えていく。
永久凍土から撤収しようと思い眷属達に声を掛けようとしたが、皆は腹を押さえて苦しみだした。
あれ、やっぱり生肉を食べたせいで食当たりでも引いてしまったか。
落ち着くまで待つつもりでいると、どうも様子がおかしい。
眷属達の身体に青黒いオーラが出現して少し外見が変わった。
カズヤの頭には2本の黒い角が生えた。
ドニシャは黒いドレス風の鎧の上に闇の粒子が蠢くザワザワした黒いコートを羽織っていた。
頭上に闇の輪を浮かべ、闇の輪から黒い花びらが生まれ出て紙吹雪の様に舞い落ち、地面に黒い花びらが着地すると闇の粒子になって消えていった。
クルクは巨大化を解除して元の6m程に戻っており、全身が真っ黒になっていた。
鋭くて長い牙が口からニョキっと飛び出し、灰色のトサカのような髪が生えて眼が赤くなり爬虫類のような太い尻尾と鋭い爪が生えた。
そして背中には闇の粒子で出来た翼が浮かんでいて、頭上には四方に眼玉が嵌め込まれた闇の王冠が回転しながら浮かんでいた。
眷属達から感じる闇が強くなっている。
明らかにパワーアップした。
怪獣を食べたせいだ。
もしかすると女神が寄越した天使を倒したことになったからかもしれないが、直接戦って倒した眷属だけでなく下僕の配下達も一段階進化したりしているので怪獣を食べたからで間違いないと思う。
それと変化には差があった。
クルクが一番強くなり、カズヤやナイトダークレヴェナントは少しだけ強くなった。
怪獣を食べた量に比例してる。
俺は配下達の戦力アップを喜びつつ、カズヤにホロタを返しに行った。
途中、奥に白い光で描かれた魔法陣があることに気が付いた。
元々は配信で映っていたレジスタンスの教会があった場所だ。
俺達とレジスタンスの激しい戦闘で教会の残骸が全て吹き飛び綺麗になったことで辛うじて見つける事が出来た。
というのも氷の大地自体が白い為、白い光で描かれている魔法陣が非常に分かりにくい。
俺が発見出来たのは投げ捨てられた巨大な怪獣の骨が魔法陣の半分に影を落としており、影の中で魔法陣の光が際立っていたからだ。
恐らく転移系の魔法陣だ。
だからこんな極寒の永久凍土にエキストラの一般人が来れたんだ。
「全員こっちに来てくれ!魔法陣を見つけた!」
眷属達に声を掛け、集合させた。
「多分どこかの国にあるレジスタンスの隠れ家に通じているはずだから、足で移動するより楽だと思ってな、それに隠れ家とかレジスタンスに通じてる連中は排除しておきたいから全員で同時に使おう」
俺はダークレヴェナントの肩に留まり、配下達にはぎゅうぎゅうに詰めて貰って何とか全員が魔法陣に乗ると俺達は光に包まれて視界が切り替わった。
何処だここは。
俺が知るどの国でも無かった。
ここはぼんやりとした空の亜空間だった。
地面はエメラルドグリーンのクリアなマス目になっていて、ある地点には青空が閉じ込められた水溜りがあったり、空中には岩石や地層の断面が見えているブロックが浮いていたりと中々に不思議な雰囲気の場所だった。
魔法陣を出て周囲を見渡すと、水の上を歩いている人物が居た。
フードを被ったローブ姿の人物で、男か女か分からない中性的な顔をしており無表情で俺を見て居た。
アイツだ。
転移先の亜空間で出くわしたのは俺をずっとストーカーしてる奴だった。
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