76 闇VSレジスタンス
天使は消えたがレジスタンス達がまたパワーアップしてしまった。
まずいぞ、眷属達はともかく支部長達では敵わないかもしれない。
ウテ&サテが来るまでの時間稼ぎも出来なかったから最悪だ。
これは眷属達だけでなく全員の頑張りが必要だ。
頼むぞみんな。
俺は闇の力を信じているぞ。
配下達のことを心配していると、スワトが吠えた。
「ダメだダメだっダメだぁっ!!闇ぃ!魔王ぅ!ダメダメダメぇぇっ!!!」
発言と外見が更におかしくなった。
スワトの眼は寄り過ぎてほぼ白目になっているし、額には青筋が何本も浮かんでいて膨らんだ鼻の穴から大量の鼻血を流していた。
そして大量の汗をかいていた。
この極寒の永久凍土でそんなに汗をかくのはおかしい。
聖王国で初めて見た時は言動も普通だったし壊れなかった。
力を得る度に壊れていってる気がする。
もしかしてキャパシティを越えてるんじゃないかとさえ思えて来た。
しかしその引き換えに強大な力を得ている。
スワトは太い光線を連射してクルクの得意とする接近戦を避け遠距離が程よくヒットする中間距離で戦っていた。
光線がヒットする度にクルクは仰け反っている。
天使の力を得る前と違い、ちゃんとした攻撃手段となっていた。
しかしクルクに実際のダメージはさほど無いらしい。
光線で皮膚が荒れてもすぐに闇の粒子が損傷個所に発生して再生している。
だからスワトは近付くことが出来ていない。
スワトは片手で光線を放ちもう片方の手の人差し指に光を溜めだした。
光輪と翼から光の粒子が溢れ出し人差し指に集まっていく。
クルクが接近するのが先かスワトの溜め技が発動するのが先かという展開になっていた。
一方、カズヤは闇の爆弾を連射していた。
「うざぁ、固くなるなよ面倒くさいなぁ」
ごちるカズヤの言う通り、闇の爆弾は命中しているのに"銀星の光"メンバー4人のはダメージを負っていない。
4人全体を銀色の光のベールが包んでおり全ての爆発をガードしていた。
何でそんなに防御が上がったのかと気になりよく4人を見ると、一糸乱れぬ完全シンクロしたダンスを披露し続けていて恰好良くポーズを決める度に銀の光のベールが分厚くなり眩しくなっていた。
降り注ぐ爆弾に一切怯まず"銀星の光"メンバー4人は順番に歌い始めた。
「光が照らす氷の欠片ぁー」
「寂しくないよ僕たちがいるさぁー」
「さぁ立ち上がぁーれぇー」
「光のぉアーイスゴぉーレムッ!!」
4人の前に大規模な魔法陣が出現し、範囲内の氷塊や氷の破片が集結し組み合わさって巨大な氷人間になった。
氷人間の身体には黄金の光が閉じ込められており、氷の内側から光がにじみ出ている。
モンスターのゴーレム種とは違う、人が造り出したアイスゴーレムだ。
「関係ないね」
カズヤは自信たっぷりに言うと、両手で圧縮して威力を高めた闇の爆弾を生成しアイスゴーレムに放った。
アイスゴーレムは巨体だからか避ける事も防ぐこともせずカズヤに向かって走り出した為、圧縮された爆弾が直撃した。
先程連射していた爆弾とは比べ物にならない程の規模で爆発が起こった。
闇のエネルギーが全てを吹き飛ばし地面には大きなクレーターが出来た。
アイスゴーレムは細かい氷の粒にまで破壊され遠くに飛ばされている。
しかし吹き飛ばされた氷の粒が瞬時に"銀星の光"メンバー4人の前へと集まり巨大な氷人間へと戻ってしまった。
「また面倒なことをしてくるなぁ、でもそれ何回復活できるんだろーなー」
カズヤはイライラしながら続けて圧縮した闇の爆弾を放つ。
復活したばかりのアイスゴーレムに闇の爆弾が着弾しまた粉々に吹き飛ばされ、そして瞬時に破片が集まって再構築される。
カズヤは何度も圧縮された爆弾を連射して繰り返したが、結果は同じだった。
復活に回数制限があったり、復活後に何かペナルティがあるわけでは無さそうだ。
厄介だな。
しかしどれだけ復活してもまたカズヤに破壊されては"銀星の光"達に勝機は無い。
もしかして時間稼ぎが目的か。
戦が長引けば闇の教団各支部の援軍には行けそうに無い。
何か手は無いかと考えていると、"銀星の光"4人の歌が変わっていることに気が付いた。
「何度でもぉー」
「立つよ必ずぅ」
「結束の力がぁ」
「ある限りぃー」
男女4人が交互に歌ってる歌詞もメロディーも前と違う。
もしかして魔法の詠唱みたいなものなのかもしれない。
だとしたらアイスゴーレムは無視して詠唱している4人を狙った方が良いな。
何とかして4人を守っている銀のベールを突破しなければならない。
「カズヤ!」
「わかってるっ!」
カズヤは狙いをアイスゴーレムから"銀星の光"の4人に変えた。
圧縮された闇の爆弾を複数浮かべ同時に発射した。
1つはアイスゴーレムに着弾し爆発したが他の闇の爆弾はカーブを描いて"銀星の光"の4人へと向かう。
大規模な爆発が起きた。
氷の大地が広範囲に抉られ氷塊や雪が吹き飛ばされる。
アイスゴーレムも一緒に破壊されたがすぐに復活した。
まだ4人は生きている。
「やれやれ、結束の力がここまで硬いとはね」
呆れるカズヤにアイスゴーレムが殴り掛かる。
「遅過ぎ、誰がそんな攻撃喰らうんだよ」
カズヤは背中の黒い翼を使って高く飛びながら圧縮した闇の爆弾をアイスゴーレムに当て粉々に破壊する。
またすぐにアイスゴーレムが再生するが、カズヤはもう攻撃の当たらない高度まで上昇していた。
カズヤが上空で両手に闇の力を込めて激しく回転する闇の球を創りだした。
闇の球の回転が加速し黒い稲妻を発生させながら膨張する。
膨張する闇の球を継続的に圧縮し続けると球の周りに闇のオーラがボコボコと出現して暴れだした。
更に回転が増すと遠心力とは別に闇の新たな力が加わり球周辺の空気が歪んでいる。
1か月前の聖王国で見た時と闇の力のレベルが桁違いに上がってる。
カズヤは赤ん坊の見た目のままだが随分成長しているな。
「ムハぁあっ!これで終わりだ!全員まとめてぶっ殺してやるっ!」
カズヤが闇の力を注入しまくった球を放った。
凄まじい速度で落下し、カズヤに攻撃を当てようとジャンプしながら殴って空振っていたアイスゴーレムの脇を通り抜け"銀星の光"4人に着弾した。
圧縮された闇の力が解放され、とんでもない爆音と共に触れる全てを消し去った。
氷の大地に巨大な穴が開いている。
カズヤが上空から下に向けて放ったからか、穴の直径よりも底がかなり深い。
"銀星の光"4人も姿は見えずアイスゴーレムも復活していない。
「ふんっ、闇の力の前では結束なんて無意味なんだよっ!」
そう吐き捨てながらカズヤが上空から降りて来た。
勝ったな、と思ったその時、氷の大地が大きく揺れた。
何事かと思い周囲を見渡す。
スワトとクルクは相変わらず中間距離を保っていて決着がついていない。
俺はドニシャの戦いを見に行った。
"銀星の光"リーダーのルジと本格派ソロ冒険者兼インフルエンサーのシュンを相手に戦っている。
ルジはアイドルらしいキラキラでごちゃごちゃした装飾が施されたプラチナの鎧を着ており、バッチリとスタイリングされたショートの緑髪を定期的にいじっている。
そして金の杖をマイクにして、何故か詠唱扱いになっている歌の魔法を発動させながら踊っていた。
杖を支柱にして体重を預け逆立ちしながらピョンピョン跳んで歩いたり、空中で身体全体を横向けたりとアクロバティックな踊りを見せている。
一見無駄な動きに見えるが、先ほどカズヤと戦っていた"銀星の光"メンバー4人と同様に1セットのダンスを踊り切ってポーズを決める度にカラフルなオーラがルジを包み込み動きと魔法の性能が少しずつ上昇していた。
踊りがバフ効果を発生させてる。
そんなの普通にスキルだとか補助魔法使えば良いのに。
と思ったけど敵がわざわざ回りくどいやり方をしてくれているんだ、敵の欠点は味方の利点だから無駄に踊ってくれて結構だ。
黒髪ヒューマンのシュンは両手で剣を持ち、狂った様に剣をブンブン振っている。
対するドニシャはダークナイト達と連携して戦っていた。
様々な近接装備を持つダークナイト達が二手に分かれてルジとシュンを襲い、後方からドニシャが魔法を放つ。
ドニシャの魔法により上空に薔薇のような、花弁が何層にも重なった巨大な闇の花を幾つも浮かべられていた。
鋭い棘がビッシリ生えた闇の蔓を鼻の根元から沢山生やし触手の様に自在に動いて上空からルジとシュンを襲っている。
しかしルジの歌魔法による風の大砲が闇の薔薇を吹き飛ばして妨害しており、ダンスによって一定時間が経過すると風の大砲の威力と攻撃間隔が増していっている。
まだ決着がつかない状況に業を煮やしたドニシャが叫ぶ。
「"ダークナイツ"よ!お前達の闇はこの程度なのか!全ての闇を解放させなさい!この闇に盾突く愚者共を八つ裂きにするのだ!」
ドニシャの声を聞いてダークナイト達が一斉に闇のスキルを放つ。
風の障壁を突破されたルジが焦り急いで歌う。
「風に乗りぃ何処までも進めぇ立ち塞がる壁を全部吹き飛ばしてこーよー」
ルジの身体が風に持ち上げられたようにふわりと宙に浮き、竜巻を纏ってダークナイト達の攻撃スキルを防ぎながら空へと脱出した。
ルジは空中でも歌って踊っており、闇の蔓を突破しながら真っすぐドニシャへと向かっていた。
「強大な闇ぃだけど僕は挑み続けるだって、未来を切り開く力があるからぁそう信じてるぅ絶対勝てるさっ」
自身を鼓舞する様な歌で、ルジの光の翼がより強く輝き移動速度と竜巻の風力が上がった。
ルジの歌に呼応したのかシュンも叫ぶ。
「そうだそうだっ!闇は人類の敵だっ!悪だっ!敵だっ悪だっ!闇の強さなんて関係無いっ関係無い!僕らがやらなきゃダメなんだっダメなんだっ!消えろっ消えろぉっ!」
相変わらずシュンのエコーが掛かってるみたいな喋り方には慣れない。
そんな喋り方でもシュンの気持ちは高ぶった様で光の翼が強く発光し、持っていた鋼の両手剣が光の剣に変わって振る度に光の波動を放つようになった。
ダークナイトは押されている。
見かねたドニシャが動いた。
花の闇魔法を止めて槍の杖を構える。
察知したダークナイト達が口から闇の鎖を吐き出しルジの足目掛けて飛んで行った。
強い風力を持つ竜巻を纏わせてるルジだったが、風は側面を回転しており真下は風の力が弱く闇の鎖はなんとか足に届き絡ませることに成功した。
ドニシャが狙いを定め、動きが鈍って当てやすくなったルジに渦巻く闇の一突きを放ち、そして叫んだ。
「愚かな人類如きが戯言を抜かすなっ!闇は敵でも悪でも無いっ!この世で最も強い力だっ!」
槍の杖から放たれた先端の尖った闇のエネルギーが回転しながらルジを貫通した。
「よくもルジを!ルジをぉ!」
激昂したシュンがダークナイトの壁を光の剣を振りまわして強引に突破しドニシャへと迫る。
ドニシャが槍の杖で一突き放った。
闇と光が衝突し、衝突地点周囲の空気が一瞬灰色に変色する。
ドニシャの威力の方が強いが衝突で殺された闇のエネルギーではシュンにダメージを与えられない。
ドニシャとシュンは高速で何合も撃ち合った。
2人が白熱し集中している隙にダークナイトがスキルで影に潜りシュンに忍び寄ると一斉に姿を現しありったけのスキルを叩き込んだ。
「ぐぅっ!ぐぅっ!」
何故か呻き声もエコーするシュンは怯み、動きが止まり隙が生まれた。
ドニシャが放った闇の槍がシュンの胴体を消し去り、離れた身体がボトリと地面に落下したのだった。
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