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75 永久凍土の戦い

俺はコカチオンの山脈を越えて北へと進んでいた。


既に視界は白銀の世界になっており、地面には隙間無く雪が積もっている。


俺とこの憑依した鳥の神経は繋がって無いから別に寒さを感じてはいないが、この鳥には負担が掛かりそうだ。


早く終わらせないとな。


急いで翼を動かし先へと進む。


日が沈む頃になってようやく広大な氷の大地が見えた。


あれが永久凍土だ。滅茶苦茶広い。


俺は一瞬飛行速度を落として、どうやって探したらいいのか考えた。


クルク達の居場所をホロタで聞けば良いがこの鳥の身体ではホロタを所有出来ない。


レジスタンスの配信を思い出すと、仕込みかもしれないが一般人も何人か映っていた。


この広大な極寒の永久凍土を渡るなんてことは考えにくい。


人だけじゃなく物資の運搬もこの吹雪の中じゃ困難だ。


だったら転移か召喚魔法を使ってる可能性が高い。


瞬時に移動出来る手段があれば好きな場所に教会を建てることが出来る。


場所は見つかりにくい奥にするはずだ。


俺は最奥に向けて真っ直ぐ進むことした。


再び飛行速度を上げて周囲をくまなく探しながら進む。


頭と背中に積もる雪を振り落としながらかなりの時間飛んでいると氷の大地の遠くに海が見えた。


そろそろ最奥付近だ。


西と東の方角を確認すると東の遥か先で闇のエネルギーが何かに衝突して消えたのを見た。


眷属の誰かが居る。


俺は東に進路を変えて飛行を続けた。


近付くにつれて大規模な闇の波動や斬撃の光が発生と消滅を繰り返しているのが見えてきた。


衝突音や破壊音まで聞こえて来る。


そして夜が明けようとする中ようやく人影が見えた。


クルクとカズヤ、ドニシャの3体が揃っていて、何体かの配下も戦闘に参加している。


クルク達は人類と戦っている。


レジスタンス達だ。


元聖騎士スワトとインフルエンサーのシュン、そして"銀星の光"のメンバー5人と子供が1人居て、全員が頭上に光輪を浮かべている。


あの金髪の子供は誰だ。何処か既視感があるが思い出せない。


クルクが膨大な闇のオーラを身体から立ち昇らせ、スワトと金髪の少年目掛けて殴り掛かった。


スワトと金髪の少年が吹き飛んで氷の大地が粉砕され周囲に氷の破片が飛散する。


クルクも随分デカくなった。


今では6m以上の身長はあるし、筋量も更に増えてゴツイ体格になっている。


そして巨体なのに速い。女神の力を手に入れたスワトも避け切れずダメージを負っている。


クルクの右側ではドニシャとダークナイト達が"銀星の光"リーダーのルジとシュンを相手に戦っている。


反対側ではカズヤとダークレヴェナント達が"銀星の光"メンバー4人と戦っている。


"銀星の光"の連中は全員踊りながら戦う戦闘スタイルで、ピョンピョン跳ねたりバク転したりと無駄な動きが多いし、後衛に回った時は戦闘中なのを忘れたのか激しく踊り歌っていた。


そんなふざけた連中にも俺の眷属達は容赦せず強烈な攻撃をお見舞いしている。


周囲は戦闘の影響で地形が変わっており氷の地面には無数のクレーターや放射状に抉れた跡がありそこら中に氷塊が転がっている。


俺は一番多くの配下を連れていたカズヤの近くへと降下し話しかけた。


「カズヤ!ホロタを回しているか?」


「何だイリも来たのか、今から撮影させるよ」


闇の球体を飛ばして"銀星の光"達に命中させ大爆発を引き起こすとカズヤは空中を移動し下僕のダークレヴェナントにホロタを渡して撮影を頼んだ。


その瞬間、レジスタンスを含めこの場に居る全員を囲むように光のドームが出現した。


何事かと思い周囲を見渡すと、スワトと金髪の少年の奥にある教会の残骸らしき場所から1個の石像が光りを放って浮かび上がっていた。


石像はビキビキとひび割れて表面が砕け散り中から天使セルメルが現れた。


セルメルは真っ直ぐ俺を見てニヤリと笑った。


また俺を直接狙う気か。


そう思っているとコアルームに居る俺の本体にジェイズが何やら話しかけてきているのを感じた。


緊急事態にだけジェイズが俺を呼び戻すことにしている。


何かあったらしいな。


俺はホロタで撮影しているダークレヴェナントの肩に留まって俺の本体に意識を切り替えた。


視界が氷の大地からコアルームの黒い砂の地面と闇の霧の空間に変わる。


「何があった?」


本体に意識が戻ると同時にジェイズに聞いた。


「イリ様!各支部長より緊急の連絡が入りました!各国の闇の教団支部が同時に襲われているそうです」


くそっ、主戦力が居ない今を狙われたか。


「一体誰が攻めて来たんだ?」


「レジスタンスと思わしき頭上に光輪を浮かべた人類と天使が襲撃してきたそうです」


天使ってセルメルだけじゃなかったのかよ。


まずいな、まだ天使の実力がわからない。


俺は天使の攻撃を喰らってダメージは無かったが、憑依状態について完全に理解している訳じゃない。


特殊な状況だったのかもしれない。


それに天使セルメルよりも強い天使が攻め込んでいる可能性もある。


クルク達を撤退させるかとも考えたが、永久凍土の戦場に張られた光のドームを思い出した。


もしあのドームがクルクのパワーでも脱出出来ないような強力な壁になってるとしたら最悪だ。


十分に有り得る。


レジスタンスは最初から俺達の分断が狙いだったんだ。


ホロタの動像で俺達を煽りまくってたのも配信バトルも全ては作戦だったわけだ。


嵌められた。


マハルダはこのダンジョンを守って貰わなくちゃいけないから動かせない。


今自由に動ける眷属はサテ&ウテの手袋コンビしか居ない。


サテ&ウテに命令して順番に倒していくにしても間に合わず潰される支部は多くなる。


それに実力が近いと連戦出来ない可能性もある。


ここは各支部長に頑張って貰うしか無いな。


とはいえ旧聖王国とその周辺国家はAI勇者が転生して序盤に訪れる重要な国だから今ここで折角闇に染めた住民と土地を荒らされたくない。


やり直す時間が残ってるかも怪しい。


だから他の国よりも優先して守らなくてはいけない。


取り合えずサテ&ウテには支部長の弱い順に向かって貰うつもりだが、どこが一番弱いかな。


一番強いのはムルだ。ムルは眷属と遜色ない程の強さがある。カレルザトヤは後回しで良い。


弱いのは…いや、待てよ…。


旧聖王国と周辺国家の支部長を思い出しながら考えていると、重要な事に気が付いた。


そうか!奴等は教団支部を狙ってるんだよな、俺達にはダークセージが居るじゃないか。


ダークセージの転移魔法は特別な魔法陣がある闇の教団支部と俺のダンジョンを対象に使用可能だ。


サテ&ウテを転移で運んで貰えば移動時間はカットできる。


まあ戦闘時間はカット出来ないが、それはサテ&ウテに期待するしかない。


「旧聖王国支部のディスランにサテ&ウテを転移させて、旧聖王国と周辺国家の支部でピンチな所から順に回って仕留めるよう伝えろ」


「畏まりました」


ダークゴブリンのジェイズが急いで俺のホロタを代わりに操作しディスランに連絡した。


「それと各支部長にレジスタンス達との戦闘は出来るだけホロタで撮影する様に伝えてくれ」


ジェイズが続けてホロタを操作し支部長達とのグループチャットからまとめて連絡してくれた。


「お伝え致しました」


「ありがとうジェイズ」


俺はまた意識を憑依先の鳥に切り替えた。


視界がコアルームから吹雪と氷の大地の永久凍土へと変わる。


戦況はこちらが優勢だった。


カズヤは詰まら無さそうに片手で闇の爆弾を連射しており、阿吽の呼吸で連携した動きを見せていた"銀星の光"

メンバー4人を簡単に吹き飛ばし続けている。


ドニシャは闇の波動と槍の杖を駆使した突き技で"銀星の光"リーダーのルジとシュンを圧倒しているし、時折横からダークナイトがスキルで追撃していてワンサイドの状況だった。


クルクも巨体と全身から立ち昇る闇の力を遺憾なく発揮し、天使セルメルが放つ無数の光の粒が形作ったペガサスごと拳で粉砕し氷の大地諸共消し飛ばした。


前衛を務めていたスワトと金髪の少年が衝撃で吹き飛ぶ。


良かった、天使とレジスタンスは俺の眷属達には敵わないらしい。


安心していると、吹き飛ばされた金髪の少年が受け身を取ってすぐに立ち上がり、クルクへと立ち向かって叫んだ。


「豚ぁ!!クルクを殺したお前だけは絶対許さん!僕の手で殺してやる!」


ああ思い出した、ピュマ王子だこいつ。


まだクルクに執念を燃やしていたのか。


ピュマ王子の光輪が回転し全身に光のエネルギーが流れると太陽みたいな人型の発光体となった。


眩しくなったピュマ王子が地面を蹴ってクルクに飛び掛かる。


「死ね豚ぁあああ!!!」


クルクが飛び込んで来るピュマ王子に軽く裏拳をヒットさせる。


ピュマ王子の身体から光が飛び散るように抜け出し一瞬花火の様な状態になった。


同時にピュマ王子の身体が弾け飛び肉片は彼方へと吹き飛ばされた。


女神の力を得たとはいえ、元々は何の力も無い子供だからな。


大した強さにはならなかったな。


クルクが何事も無かったかのように天使セルメルとスワトの方へと前進する。


この状況でも天使セルメルは嫌な笑顔を浮かべたままだ。


天使セルメルが落ち着いた所作で両手を天に向けると、背中の翼を含めた全身が黄金の光を放った。


途端に天使セルメルは光の球となり何個かに分裂するとそれぞれ違う方向へ飛んで行った。


光の玉はそれぞれレジスタンス達の身体に入り込んでいく。


天使が消えたのにドームはまだ健在だ。


クルクは構わずスワトに殴り掛かった。


拳がスワトに届く前に膨大な光のオーラが立ち昇り、スワトの背中に光の翼が生えた。


スワトは両手でクルクの拳を受け流した。


氷の大地にクルクの拳が激突し氷塊が周囲に飛散する。


もう一発殴り掛かろうとするクルクにスワトが太い光線を照射した。


クルクは体勢を崩すも踏み止まりガードを固め光線に耐えきった。


"銀星の光"やシュンも光の翼を背中に生やしており、ドニシャとカズヤに太い光線の反撃していた。


眷属達とレジスタンス達は睨み合い戦いの第二ラウンドが始まったのだった。


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