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74 マヨミヤイリ

俺も永久凍土を目指すべくナチュド王国を出て北東へと向かった。


途中でコカチオン王国を通過することになる。


永久凍土とコカチオンは1か月前に徹底して調査を行った場所だ。


邪神ゲズムに地球時代の俺、マオの居場所を聞いた時、永久凍土に行けと言われたからクルクを中心に調べさせた。


だが何も無かった。


永久凍土は氷の大地と降り続ける雪だけだったし、その手前にあるコカチオン王国も山と広い都市だけで手掛かりすら見つからなかった。


俺は邪神ゲズムに騙されたと結論付けて以降は放置していた。


だからレジスタンスが隠れるにはもってこいな場所だ。


そら居場所が見つからないわけだよ。


暫く進むと日が沈み暗闇が訪れた。


夜空を飛びクレーターだらけの荒野を通過する。


前方に山が見えて来た。


飛行を続け山の上空を進んで行く。


夜が明けようかという時間になると標高の高い山々の間を飛んでいた。


そして朝日が眩しく山を照らす頃にようやく木材と石材で建設された建物が見えたのだった。


ここはコカチオンの都市部だ。


だが1か月程前に見た時と様子がまるで違っている。


街の上空には人の生首が大量に浮かんでいた。


いや生首だと思っていたが、よく見ると首の部分に掌サイズの身体がありミニチュアサイズの闇の教団の黒いローブを着ていた。


長い髭や髪の毛で隠れていて身体が見えていなかっただけだ。


ついでに飲み物が入ったコップや料理を乗せた皿にホロタ等が空飛ぶ頭の周囲に浮かんでいる。


浮かんでいる頭は同族同士で喋っていたり、何処かに飛んでいたりとしっかり生きているみたいだ。


そして街が、というよりも山を含めたコカチオン王国の地面が黄土色の瘴気で覆われている。


瘴気は何故か地上2m程までしか舞い上がることは無く地面付近に滞留している。


街には分厚い皮膚を持つ黄色い肌の人間が鋭い歯を見せ涎を垂らしながら徘徊していた。


浮遊している頭が地上の黄色い肌の人間の真上に下降すると、不気味に眼を光らせて黄色い肌の人間を触れる事無く操り、屋根の無い建物に入らせて機敏な動きで朝食を作らせていた。


以前はこんなことにはなっていなかった。


眷属達がホロタの動像で報告してくれた時は普通のヒューマンが普通の街に住んでいただけだった。


今はかなり闇の匂いが強い。信徒の数も多いみたいだ。


少し北へと進むと、空高く建てられた塔のような屋根付きの教会があった。


教会の壁や窓にはデフォルメされた俺のマークが描かれてる。


闇の教団のコカチオン支部に違いない。


ちょっと寄っていくか。


永久凍土を目指してはいるものの、ぶっちゃけ俺が戦うわけじゃないから少し遅れても平気だ。


そう思って俺は瘴気が届かない教会の3階に向かう。


浮遊頭の為か3階には何故か扉があり、丁度開いた状態だった扉の中へと入った。


祭壇横の部屋にはフクロウ人間が作業机の椅子に座っていた。


ブラックアウルギャングという種族のクルクの側近だ。


フクロウ人間はスラっと細長い体をしており黒い革のコートとズボン、真っ赤なシャツを着て黒い帽子を被っていて背中に黒い翼が生えていた。


俺が部屋に入るとクチバシで咥えていた葉巻を灰皿に置き羽毛だらけの顔を俺に向けてお辞儀した。


「闇神様、いつでも出撃可能です」


レジスタンス狩りについては知ってるみたいだが、俺が来たのは増援要請じゃない。


「いや、そうじゃない。俺は視察目的で少し立ち寄っただけだ、闇の教団の活動を実際に見て確認したくてな」


「そうでしたか、こちらでご案内致しましょうか?」


「そこまでの時間は無くてな。でも1つだけ聞いておきたい、この国の入信率はどうだ」


「浮遊人は全て入信済みですが、空の者に操られている地上人はまともな思考を持ちませんので入信には至りませんでした。強制的に入信させることは可能ですがいかがされますか」


「強制はダメだ。自らの意思で闇に入ることが大事なんだ」


強制して入信させたら闇の教団に対して不満と敵意を抱いてしまうし、闇の教団の教えや考え方と微妙な食違いが発生する。


転生したAI勇者が知ったら、人類が嫌がっているのだから闇の教団は悪だと判断するかもしれない。


そうなれば俺達はAI勇者と戦うことになって、いつか必ず負けて殺される。


だから強制は出来ないんだ。


「畏まりました」


ブラックアウルギャングのフクロウ人間が軽く頭を下げた。


「あの地上人達は虐げられているのか?」


「地上人が苦手とする細やかな作業を浮遊人が補佐することで出来るようになりますので、奴等は浮遊人達との関係に満足しております」


これはシェイソウのウォーグでも同様の関係だった。


一見するとドワーフに虐げられているように見えたウォーグ達もドワーフの技術力や食料の供給には感謝しているらしくお互いが納得した良い関係が成立していると配信の合間に聞いた。


この黄色い地上人も本人達が満足しているなら別に問題はない。


「なら大丈夫だな」


さて、支部長に会ったことだしコカチオン王国の視察はこれでお終いにしよう。


もう永久凍土に行こうか。


そう思って支部長の部屋を出ようとしたが、1人の浮遊人が部屋の前に居た。


浮遊人は斜視の眼だったので焦点は合って居ないがこちらに顔を向けている。


長い白髪と白い髭を生やし顔にシワを刻んだ老人の頭だ。


無視して飛び抜けようかと思ったが浮遊人が先に口を開いた。


「あぁ、そちらの鳥はもしや、闇の教団のお偉い様でございますか?」


フクロウ人間がうんざりしたように溜息混じりに答えた。


「下がれグレデュー卿!貴様が話しかけて良い御方ではない」


信徒と話す機会もあまりないからついでに少しだけ時間を割いてやってもいい。


「いや少しだけなら別に構わない、グレデューお前の質問に答えてやろう、俺は闇の教団に崇拝されし闇の存在イリだ」


「なんと!貴方様が闇神様なのですか!?」


グレデューは目を丸くし信じられない様子でブラックアウルギャングの支部長に眼を向けた。


ブラックアウルギャングは静かに頷いて見せる。


グレデューは興奮しながら叫んだ。


「本物の闇神様っ!なんという幸運!実は支部の手前からでも強い闇の空気を感じておりまして、教団のお偉い様かと思ったのですがまさか闇神様だったとは!まさに今闇の感謝祭をしております、さあこちらへ!」


そう言ってグレデューが小さな手で長い髭をかき分けて手を出し俺を手招きする。


何か勝手に軽い話でもして終わるのかと思ってたが、面倒な事になりそうだな。


でもまあ1回ぐらいいいか。


俺はグレデューと一緒に教会を出た。


「おーい!皆の者!闇神様じゃ!闇神様が降臨なされたぞいっ!」


グレデューの声に反応して空飛ぶ頭の浮遊人が多数集まって来た。


俺は教会近くの広場上空に案内された。


地上部は他と同様に黄土色の瘴気で満ちていて、枝を動かすことが出来る枯れ木が何本も生えていた。


枯れ木の枝はムキムキの筋肉質な腕みたいで、切り傷のような細い割れ目から黄緑色の樹液を垂れ流しており、俺のマークが描かれた旗を握っている。


広場にいる黄色い肌の地上人も闇の教団の旗を持って徘徊している。


そして上空では浮遊人が食べ物と飲み物を数多く浮かばせて飲み食いしながら談笑していたが、グレデューの興奮した声を聞いて一斉に俺を方を向いた。


どうやら闇の感謝祭がこの国でも開催されているらしいが他の国と比べてイマイチパッとしない。


「俺は闇の存在イリだ、お前等にちょっと言いたい事がある。地上の黄色い人間を操作して障害物レースをさせろ、火の輪潜りだとかピンポイントダイブみたいなスリルのある障害物を沢山作るんだ」


浮遊人達はポカンとして固まっていた。


グレデューが妙な空気を破り口を開く。


「なんと面白そうじゃ!流石は闇神様じゃ!!」


遅れて浮遊人達が歓喜し、急いで準備をしようと興奮しながら騒ぎつつ散って行った。


「何処でホロタの撮影をしてるんだ?」


グレデューに聞いてみると、申し訳なさそうな顔をした。


「撮影はしておりませんでした、すぐに致します」


何で撮影していないんだよと思った。


でもちょっとおかしい。


俺は何で腹が立ったんだろう。


もう配信バトルは終わってる。


レジスタンスはクルク達眷属が探し出して潰すわけだからライバルはもう居なくなる。


そうなるとレジスタンスに入ってる業界1位のアイドルグループ"銀星の光"が潰れて、闇の教団に入信している業界2位のアイドルグループ"虹月"が世界一に繰り上がるわけだから闇の教団チャンネルが自動的に世界一のコンテンツチャンネルになる。


有名なインフルエンサーも居ないこの場所で生配信を頑張っても大した意味はない。


なのに何故俺はこの国の盛り上がりに憤りを感じ配信を欲したんだろう。


考え事をしながら広場を見ると、浮遊人達の浮遊スキルによって障害物レースのセットが驚異的な速度で建設されていた。


ホロタを持った撮影スタッフを引き連れてグレデューが戻って来る。


悩んでいた気分が吹き飛び自然と心地良い気分になった。


思い返してみれば配信バトルをやってて楽しかった。


魔法の粉を服用した時でも得られなかった快感だった。


正直俺が異世界に来て唯一楽しめたことだ。


その理由は一つしかない。


俺がVTuberのマヨミヤイリだからだ。


そう自己認識して頭の中のパズルが埋まり俺はスッキリした気分になった。


完成した障害物レースを見て満足し俺はコカチオンから北の永久凍土へと向かったのだった。


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