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67 フェス

俺はカレルザトヤを飛び立ち西へ西へと向かっていた。


日が沈み夜になると砂漠地帯を抜けて山岳地帯へと突入した。


ゴツゴツした岩だらけの山脈を通過し、朝になると今度は緑の生い茂る山々を通過した。


そして昼頃には火山地帯へとやってきた。


マグマをぐつぐつ煮やしている火山がいくつもあった。


北方に進むと2つの火山に挟まれた峡谷があり側面に無数の穴を掘って出来た集落があった。


峡谷の下には川が流れ、その上には何か所にもつり橋が掛けられている。


ここは確かシェイソウという国だ。


ウォーグという平均身長3mのごつい体格をした人種の故郷らしい。


川付近や吊り橋などの外にはウォーグ種が見られたが少し様子が妙だった。


闇の教団の黒いローブを着て四足歩行で生活していた。


俺が見た事のあるウォーグは人間らしい二足歩行だったが、何故かわざわざ四足歩行をしている。


仕草や行動も動物的で、翼を生やした太い猫を追いかけまわしたり、歯を見せて威嚇したりウォーグ同士で噛みつき合ったりしている。


そして一部のウォーグは背中にドワーフを乗せていた。


ドワーフも闇の教団のローブを着ている。


今のところ信徒率100%だ。


「素晴らしい」


感動で声が漏れた。


俺を含め眷属や配下達総出で布教活動に取り組んだ結果だ。


グッと来るものがある。


喜びながら峡谷を眺めていると、ディープダークエルフ達を発見した。


真っ黒な肌に長い耳、灰色の髪をしている。


俺の配下達は基本的には黒いローブを着ていない。


服装は自由だ。


ディープダークエルフ達もローブではなく、漆黒の戦士風装備をしている。


そのディープダークエルフに付き従うダークエルフの何人かは黒いローブを着ている者も居た。


ドワーフやダークエルフ達は俺が作った食べ物を摘まみながら会話したり歩いたりしている。


ポップケーキという爆発したようにボコボコした野球ボールサイズの黒いケーキが沢山入ったドラムとか、闇の香辛料ソースにつけて食べる黒い棒状のスナック菓子のポックス等、俺が最近作った商品が出回っている。


食べ物を入れるドラムやボックスには俺をデフォルメしたマークが描かれており、それは至る所で見られた。


様々な色や形の旗が壁や峡谷の段差の地面に刺さっており俺のマークがあった。


他にもやたらと飾りやオブジェが多かった。


ドニシャが王座に座って足を組んでいるリアルで巨大な絵画が穴の入口横に掛けられていたり、その反対側の入口横には教会内の禍々しい祭壇前で両手を広げるマハルダの絵画が展示されていた。


勝手に渦巻く黒緑色の液体が入った巨大な鍋が放置され、鍋から出る緑の煙が人の形になって通行人を襲っていたりだとか、触手の髪と牙マスクが特徴的なムルを模して作られたリアルな仮面をドワーフ達が被っていたり、赤黒い血で壁や地面に様々な単語や文章、魔法陣みたいなのが書かれていたりした。


更には様々なモンスターや動物の頭蓋骨が峡谷にプカプカと浮かび、偶にカタカタと歯を噛んで音を鳴らしていた。


良い雰囲気じゃないか。


彼らの信仰が深いからか、それとも何かイベントでもやってるのか分からないが、この奇妙な光景は気に入っている。


俺は俺の肖像画が飾られた大きな入口に目が留まり、中へと入って行った。


洞窟内は広く、外でプカプカ浮かんでいた人外の頭蓋骨があちこちに見られ頭蓋骨内に緑の火を灯して周囲を照らしている。


地面には赤い絨毯が敷かれており、一定間隔で天井の左右にフック付きの太い鎖がぶら下がっており、フックには人形か本物か分からない人の死体が吊るされていた。


そして洞窟内は分岐先となる横道の通路がいくつかあり多くの人が居た。


それぞれが飲み食いしながら談笑している。


奥に進むと怒りと叫びの顔オブジェを沢山組み合わせて出来た禍々しい祭壇があり、手前で第4進化先のダークマスターエルフとダークロイヤルガードという種族のドニシャの側近が話し合いをしていた。


闇の衣を着た灰色の肌のエルフが


俺は祭壇の上に留まって話しかけた。


「良い雰囲気だな、いつもこうなのか?」


俺に気が付いた2体の側近が跪く。


闇の衣を着て灰色の肌に白目のダークマスターエルフが嬉々として口を開いた。


「これはこれは闇神様!良い所でお越しくださいました、実は本日より数日に渡り闇神様に感謝を捧げる祭典を催しているのです」


イベントだったか。


闇の教団が継続していく為には信徒がより深い信仰を得られるような行事や祭りごとを色々と主催していかないといけない。


俺が一々具体案を出さなくても配下達が自主的に動いてくれたのは嬉しいことだ。


「良いアイデアだ、ところで俺が知るウォーグと少し違った状態になってるみたいだが、何かあったのか?」


「闇の儀式によりウォーグ共はより野生的に生まれ変わったのです」


そう答えてくれたのは、分厚い漆黒の金属で全身を包んだダークロイヤルガードだった。


黒いマントを身に着け、白の輪郭をした俺のマークが描かれた黒い盾を背負っている。


色々と闇の儀式による効果を聞いてきたが、闇が対象の本性を解放しているように感じる。


ウォーグはきっと人間に向いてなったんだろうよ。


「興味深い。それに信徒率が高いよな、何かコツでもあったのか?」


「ウォーグの長と将軍を決闘で殺したことが強さを証明になりまして、シェイソウ国全体が闇の教団を認めるようになったのです」


ダークロイヤルガードが引き続き答えた。


ウォーグはそうかもしれないが、ドワーフも分かりやすい種族だったとはな。


「素晴らしいぞ、国民全員を入信させたと知ったのはシェイソウ国が初めてだ。じゃあ俺は今から少しだけ国内を見て回ろうかな」


国全体が闇を受け入れてるならもう視察する必要も無いし、すぐ次の場所に行くか。


そう思っていたが、ダークマスターエルフが口を開いた。


「今夜には本日のメインイベントのキメラコンテストがあります、他にも幾つかイベントがございますが祭典期間中はホロタで生配信しておりますので別場所からでもホロタで様子を確認可能です」


へー配信してるのか。


数字が気になるな。


「お前達が…おっと、その前にお前達の名前を聞いておこう」


「ワーキロです」


ダークマスターエルフがワーキロ。


「シルドガです」


ダークロイヤルガードがシルドガだな。


「ではワーキロとシルドガ、どちらでも構わないがホロタで配信の様子を見せてくれ」


「こちらをご覧ください」


ワーキロが手に持って居たホロタで配信中のライブ動像を魅せてくれた。


ドワーフを乗せた2人のウォーグが素手で殺し合いをしている様子が映し出されている。


視聴数を確認すると3万人程度だった。


地球時代でも配信で集まる視聴者数は普段の投稿動画より少なかったから、この3万という数字は悪く無いのかもしれない。


でも増やす努力はすべきだよな。


何か手は無いかと考えていると、他の配信が気になった。


「他の配信を確認しておきたいから、今のランキングを見せてくれ」


「承知致しました」


ワーキロが素早くホログラムを操作し、ライブ配信ランキングを見せてくれた。


あった。


「『闇の感謝祭』というタイトルで配信しているのがそうか?」


「はい、仰る通りにございます」


なら闇の教団シェイソウ支部の配信は2位だ。


1位は何だと確認して俺は驚愕した。


「『聖教感謝祭』!?」


思わず声が出た。


サムネにはレジスタンス達が祈りを捧げている姿が写っている。


何と4万人もの視聴者が見ている。


「女神聖教の連中が毎年やってる行事ですね、しかし妙です、例年ですともう1か月程先に開催されますが時期を早めているようです」


シルドガが説明してくれた。


時期を早めてるってそれ完全に俺達の感謝祭にぶつけて来たんだろ。


完全な嫌がらせだ。


この動きからして恐らくレジスタンス達は俺達の目的が直接的な支配ではなく布教活動だと薄々勘付いている。


人類の要だった聖王国を俺達はあっという間に制圧したんだから、世界を力でねじ伏せるなんて造作もないことだと簡単に想像できるからな。


なのに俺達が闇の教団なんて回りくどいやり方で人類の侵食をしてきたんだから、違和感を感じたはずだ。


レジスタンスはホロタでの妨害活動を積極的に行ってくるだろう。


ここでレジスタンスよりも多くの視聴数を獲得することが出来れば世間の闇の教団に対する印象が大きく違って来るはずだ。


「これはレジスタンスが配信バトルを仕掛けてきている、闇の教団はこの勝負に絶対勝たなければならない、頼んだぞワーキロ、シルドガ」


「「はっ、必ず」」


こうしてレジスタンスと闇の教団の配信バトルが始まったのだった。


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