65 新たな眷属
レジスタンスの天使セルメルとスワトの光輪と似ている。
アヒシャスとかいう傭兵の青年はレジスタンスの一員かもしれない。
スワトと同じく光輪が出た時から寄り目になっちゃってるんだよね。
ほぼ確か。
アヒシャスが暴れたらどうするんだ。
ここに眷属は居ない。
第5進化の種族で眷属に匹敵する実力を持っているムルになんとかしてもらうしかないな。
アヒシャスが光輪を出している間にチャノの身体に異変が起こった。
全身の皮膚が紫色に変色しシワシワになって青い斑点が発生した。
肌の絵人間が毒でも引いたようだ。
アヒシャスが何もしなくてもチャノは死ぬ。
もう死んでるかもしれない。
アヒシャスが左手に力を込めると握られているマレスキンに多大な圧力が掛かり吐血した。
そして左手に渦巻く光を出現させた。
チャノに止めを刺そうと動き出す。
そんな状況だというのにヒリリは狂ったのか涎を垂らしながら半笑いしていた。
「イヒヒっ、私と大好きなオッパイはもう終わり、全部何もかもお終いなのぉぉおっ!」
ヒリリが叫んだ。
俺には心の底よりも深く暗い所からヒリリの声が聞こえた。
憑依している鳥の身体が震えた。
この感覚は久しぶりだな。
俺は慌ててヒリリ付近の地面に飛びチャンネル登録の舞を披露した。
翼を前に出してクルクル回しちょこちょことしたステップで前進する。
すると大量の濃縮された闇が翼の先端から噴き出し怒涛の勢いでヒリリに流れていった。
しかし闇はヒリリではなくチャノの方へと流れていった。
そう見えたが実際はヒリリの手袋に闇が入り込んでいった。
「プへっ!」
左右の黒くなった手袋がヒリリの両手を吐き出した。
手袋の袖口には歯と長い舌があり宙に浮いてヒリリに叫んだ。
「オイこら雌ガキ!砂まみれにしよったりオリモノ触った手でワイらを触んなや!せめて洗わんかいっ!」
「いっそ手袋でオ〇ニーしろよ」
「オイ!雌ガキが右利きやからってそんな事言うな!ワイらは味方やろ!」
右手の手袋が持っていたチャノを捨てて手をパーにして左手の手袋をビシッと叩いた。
その時だった。
マレスキンのスキンヘッドから光の槍が生えアキマがマレスキンごと突き出した。
光のエネルギーが槍の周囲でスパイラルを描き石の台座を抉りながらヒリリと両手袋を襲う。
パチンッ
左手の手袋が親指と中指で音を鳴らすと、突然現れた黒いシルクハットの中に光の槍と光のエネルギーが吸い込まれた。
左手の手袋が黒いシルクハットを持ってクルクル回しシルクハットの開口部をアヒシャスに向けた。
「お前が突くなや!ツッコミはワイの専売特許なんやぞ!」
そう言うと同時にシルクハットの開口部から黒い光で作られた槍が飛んだ。
槍は髑髏のタワーの先端に尖った矛があり、髑髏はへらへらと笑っている。
アヒシャスは右にサイドステップしたが避け切れず、左手を突き消された。
持って居たマレスキンも消滅した。
アヒシャスは苦しむどころか笑った。
「ははっ、美味そうな悪だなぁ、鮮度も抜群だ」
アヒシャスが左腕に力を込めると、光が発生し一瞬で失った左手が再生した。
「残念、消費期限は昨日やで」
「なんでやねん!ワイらが腐ってるわけないやろ!むしろ今魔王様にお力頂いてフレッシュやっちゅうねん!」
またもや右手の手袋が左手の手袋にツッコミを入れた。
アヒシャスが腰に帯刀していた剣を抜く。
「どんな味がするのか楽しみだぁ」
剣を眩い光が包み込む。
この状況に王達は混乱していた。
「どうなっておる!決闘はどうなった?魔女が先に死んだだろ!」
ヤカルビッシュ王の言葉にニパカラ女王が異を唱える。
「何を言ってるんだい!そっちのマレスキンこそ消滅したじゃないか!」
「女王様!そのような事を言ってる場合ではございません、闇の僕が暴れております、撤退しましょう」
護衛兵長に言われニパカラ女王は撤退を口にしてカレルザトヤ軍は後退を開始した。
それを見てザザラン軍も撤退を始める。
一方ダンとアキマの配信コンビはというと、何故か手を叩いて爆笑していた。
「アハハーッ!ハゲの人死んだんだけどー!めっちゃウケるぅぅ!」
アキマは完全にハイになったコメントだ。
「何で死んじゃったのぉ~、ウヒャヒャヒャヒャ、腹痛てーっ」
ダンもだった。
ダンもパイプを咥えてるし、テーブルの上には空いた小瓶が数個あった。
お前等魔法の粉を吸い過ぎだって。
ろくな感想言わないな。
ダン達に飽きれているとアヒシャスが高くジャンプする。
光の剣を両手袋に向けると眼にもとまらぬ速さで光の剣が発射され、それを持つアヒシャスも引っ張られる形で手袋に突進した。
光の剣が手袋に差し迫ると何かに当たって光が弾け周囲に光のエネルギーが拡散した。
砂煙が収まると両手袋が横に並んで手を広げているのが見えた。
両手で透明な黒い板を創りだし攻撃を防いだようだった。
手袋の背後に居たヒリリと動かないチャノの身体も無事だ。
「腹へったなぁ、あぁ早く悪を食いたいのにぃ、どうして拒むんだオレ様のおやつぅぅっ!」
アヒシャスはバチバチと流れる電流の様な光を剣に送り込み光の刀身を更に伸ばした。
「ゴメン、反抗期なんだよ3回目の」
「いや何で3回やねん!普通1回やろ!」
2体の手袋はゲラゲラ笑い、人差し指と親指を立てて銃の手の形を作り闇の弾丸を人差し指の先から連射した。
アヒシャスが避けようとするも闇の弾の連射速度と量が凄まじく、一瞬で身体が蜂の巣になった。
「誰がおやつやねん!」
「ハハハッ」
両手袋はまた笑い出す。
蜂の巣にされたアヒシャスであったがすぐに温かな光が傷口を包み完全回復した。
しかし光輪の密度は減っており光も弱くなっていた。
「食い物は黙ってろ!」
消えてしまった光をもう一度剣に纏わせ、空中でゲラゲラ笑う手袋に向けてブンブン振りまくった。
光の剣を振るう度に光の斬撃が飛ぶ
両手袋は袖口を大きく広げ、アヒシャスに接近しながら飛んで来る光の斬撃を全て食べた。
手袋がパンパンに膨れ上がり巨大化している。
巨大になった手でアヒシャスを殴った。
「うごぉっ」
アヒシャスは全身の骨が砕けてグニャグニャになりかなりの距離まで吹き飛ばされた。
両手袋はすっ飛んできて地面に倒れているアヒシャスを上から交互に殴りまくった。
地面に巨大なクレーターが出来てアヒシャスは完全に潰れた。
両手袋がゲップをすると手のサイズが元に戻った。
「ごちそうさん、光チップス美味しかったわ」
「いや斬撃やったやろ」
両手袋がボケとツッコミを言い合い笑っているが、アヒシャスが回復することはなかった。
光輪が消えアヒシャスは潰れたまま動かなくなった。
俺は両手袋に近寄って話しかけた。
「お疲れさん」
「おーこれはこれは闇の魔王さんやないですか」
「ご無沙汰してます」
「いやワイら初対面やろ」
賑やかな奴等だな。
「お前等の名前は?」
「ワイの名前はウテですわ、んでコイツがサテ」
右手の手袋がウテ、左手の手袋がサテだと。
なんて分かりやすい名前なんだ。
誰に名付けられたんだろう。
「それじゃ、サテとウテ、お前達にこの言葉を贈ろう、ハッピーダークデイ!!」
新たに眷属となったのはおしゃべりな手袋だった。
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