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62 決闘前夜

ヒリリが上体を起こし地面に手を当てる。


坊主のエルナッドの足元に魔法陣が浮かび上がった。


「おっと」


右にサイドステップして地面の魔法陣から離れた。


「エルナッドさん!見てくだせぇ、人形かと思ったらこいつ小っせぇ魔女ですぜ!」


猫背の男が血まみれのチャノを指差す。


「ってことはお前が小人魔法のヒリリだな」


エルナッドが図体からは想像出来ない程の素早さでヒリリまで踏み込み、青いオーラを纏わせた足で顔面を蹴り飛ばした。


ヒリリは建物の壁に激突し倒れ伏した。


「オレはザザランで蹴り技のスキルマスターだったんだ、覚えてるだろ、この薄汚ぇ盗人が!」


エルナッドのローキックが倒れているヒリリの顔面に炸裂する。


ヒリリの顔面は血で真っ赤に染まっていた。


ザザラン出身ということでエルナッドをよく見ると、ヒリリ達と違って人種がカラデアではなくヒューマンだった。


「お前がオレの道場から家宝の靴を盗んだせいで人生が滅茶苦茶になった!試合に負け門下生が辞めて借金で道場をたたみ移住したカレルザトヤでは差別されて職に就けず残飯漁りの毎日だったんだ!」


ヒリリの胸ぐらを掴み上げるとエルナッドはヒリリの顔を睨んで言葉を続けた。


「でも闇の教団に入信して全てが変わった、暴力が正義になり儀式でこの力を得たことでなぁ!」


掌に闇の粒子を発生させヒリリに向けるとヒリリの身体が飛んだ。


「エルナッドさーん!軍の奴等が来てますぜ!」


猫背の男が他の3人を引き連れてエルナッドの下に集まった。


「ちっ、続きは部屋の中でやろうか」


エルナッドはヒリリを抱えて近くの宿屋へと入って行った。


遅れて鼠ライダー達がやって来た。


「隊長!魔女を見つけ回収しました!」


「でかしたぞ、誘拐犯の小娘は見当たらないが、まあ良いだろう。総員撤収っ!」


鼠ライダー達が速やかに居なくなった。


ヒリリが死んでは小人魔法を使える存在が居なくなってしまうので俺は外から宿屋の部屋を見て回った。


二階の端の部屋にヒリリを見つけた。


ベッドの上で裸にされており、布で口を塞がれロープで手を拘束されていた。


ヒリリに覆いかぶさるエルナッドが叫ぶ。


「─だから身体で返すんだろっ!オラっ!もっとオレに奉仕しろ!!一晩中犯してやるからな!」


エルナッドがヒリリの頬を激しくビンタする。


ベッドの軋む音が聞こえている最中に俺は宿屋から離れ飛び立った。


一晩やりまくるなら暫く命は無事だな。


闇の教団カレルザトヤ支部の教会を目指して飛行する。


本人がどう思ってるか実際の所は知りたくも無いが、俺には信徒達が楽しんでる様にしか見えなかったなぁ。


よくあるよくある。


闇の魔王に正義感なんてあるわけないんだよ。


夜の上空を進みデフォルメされた俺のマークが描かれた闇の教団の教会へと到着した。


扉は開いており夜だというのに結構な数の信徒が出入りしている。


パイプを咥え黒い煙を吸っていたり、手には俺が量産したダークスライムチョコやブラックバブルビールのジョッキが握られている。


よしよし餌付けは出来てるな。


ヒリリが言ってた通りローブの隙間から見える首や腕には動くタトゥー人間がチラチラ見えていた。


この国では流行ってるらしい。


オシャレは我慢なんて事を地球時代に聞いたことがあるが、人間タトゥーはファッションにしては危険過ぎると思うけどな。


そんな事を思いながら中に入ろうとしたら教会から赤髪のエルフ、ダンが出て来た。


カレルザトヤ王国に店移転させたんだよな。


一部の信徒が吸ってた黒い煙は頭飛剤か。


派手な髪とアクセサリーをジャラジャラ身に付けた若者達と雑談をしながら歩いている。


闇の教団のローブを着てるから信徒なのは間違いない、それに話しながら器用にホロタを高速操作してるから見た目的にも小粒程度のインフルエンサーなのかもしれない。


俺はダンの右肩に留まり話しかけた。


「よおダン、コラボ動像よく出来てたぞ」


急に鳥が肩に留まったことに最初は驚いたが、俺だと分かると肩に居る事を気遣いながら軽く頭を下げた。


「や、闇神様っ!お褒めの言葉ありがとうございますっ」


先ほどまでダンと喋ってた若者達は俺を見てポカンとしている。


「突然で悪いがダンにやって欲しいことがあるんだ」


「はいぃ、どのようなご要件でしょうかっ」


「カレルザトヤがザザランと戦争しようとしてるのは知ってるだろう、ダンにはホロタで生配信して貰いたい。どんな趣向にするかは任せるが戦の実況とか解説なんかを良い感じに頼むぞ」


「は、配信するのですかっ」


「他のインフルエンサーを呼んでも良いからな、その辺はダンが工夫して盛り上げてくれ」


「は、はい…」


内心嫌がってるのはバレバレだが、俺が把握してる中でダンが一番有力なインフルエンサーなんだからしょうがない。


やってもらうしかないんだよね。


話題を変えてダンの気を紛らわそう。


「頭飛剤は今どんな感じだ?売れたか?」


「大好評につき既に完売しておりますっ」


「じゃあ大量生産しておくよ」


ダンの表情が少し明るくなった。


それだけ頭飛剤が儲かるのかダンが服用してるからなのかは分からないが、宣伝になるからダンにはどんどん売り捌いて貰いたいね。


俺はダンの肩から飛び立ち教会内部へと入った。


奥の祭壇付近に大男のムルが居た。


俺は祭壇の上に留まってムルに話しかけた。


「女王と話はつけたか?」


俺に気付いたムルがこちらを向き跪いた。


「はい、女王に代表戦の条件を承諾させました」


「よし、じゃあザザラン支部の連中にも代表戦の決闘について説明しよう」


「お待ちください闇神様、ザザラン支部はトルジスとラサヤが務めておりますので既に自分から連絡しております」


気が利くじゃないか。いいぞムル。


まあトルジスとラサヤ、そしてムルはカズヤの側近だから元々意思疎通のしやすい関係だったろうし、ホロタもあるから情報共有は円滑なんだろうさ。


「決戦はいつになりそうか分かるか?」


「明日の午後です」


早っ。


まあ元々戦争する予定で準備も出来てただろうから早く決着つけたかったのかもな。


「だったら今から伝える北西の宿屋に小人魔法を使えるヒリリという少女が捕まってるからすぐに行って保護してやってくれ、代表戦の決闘で使うからな」


「畏まりました」


ムルが近くに居たナイトダークレヴェナント達に指示を出した。


俺は祭壇の上部に留まったまま、本体に意識を切り替えた。


視界が不気味な教会から黒い砂で覆われた地面と闇の霧が漂うコアルームになった。


手の無い状態の俺はダンジョンコアの球に口頭で指示した。


「アイテムの大量購入をしてくれ、頭飛剤を4000個とダークスライムチョコ、ブラックバブルビール、球鴉たまがらすバーガーを1000個ずつ、それと闇の繭を500個だ」


「承知しました」


地面に購入した商品が溜まっていく。


今度はジェイズに話しかける。


「ホロタの闇トークで眷属達に物販を仕入れたから補充しとけと連絡しといてくれ」


「畏まりました」


あとは明日を迎えるだけだな。


残りの時間は物販の新作でも考えておこう。


俺は購入したアイテムが全て床に出し尽くされるのを待ってからダンジョンコアに購入可能アイテムリストを表示してもらい試行錯誤したのだった。


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