55 公開処刑
俺は聖王国の都市を出て南へと進んだ。
乾いた土と岩だらけの荒野が少し続いた。
これは前に俺達が殺した四大魔王の1体、シャイファンが荒らしたせいだ。
土地全体が呪われてるしアンデッド種特有の不浄な気配がした。
この殺風景な景色は直に途絶え、幾つもの小山を形成しているカラフルな砂丘とヤシの木みたいな女性の長い髪を連想させる葉を付けた背の高い木が幾本も登場した。
赤い砂の小山だったり緑の砂の小山だったりそれぞれ単色の砂で纏まって堆積しており小山の周囲にはロングヘアーの木がびっしり生え木の間には何故か川が流れていた。
乾燥しているのかしていないのかよくわからない地形だ。
周囲にモンスターや人の気配は無い。
闇のダンジョンからそう遠くはないから遠征でこの辺のダンジョンは潰してると思う。
魔王狩りでダンジョンは潰してもこの先にあるカレルザトヤという国は無事なはずだ。
ダンが店を移転させたと言ってたからな。
暫く飛行していると空の暗さが薄まり夜が明けようかという時間になった。
もう日付が変わったみたいだ。
勇者イアを殺してから6日目になった。
ひと際背の高いロングヘアーの木のてっぺんに留まり俺は本体へと意識を切り替えた。
視界の景色が変わり、黒い砂で覆われた地面と闇の霧が漂うコアルームになった。
憑依中につき両手が無いのでダークゴブリンの世話係ジェイズにホロタの操作を頼む。
「闇の教団チャンネルを表示させてくれ」
「ホロタを起動させたところ、共同製作のクリエイター参加申請が多数届いております、いかがされますでしょうか」
眷属の手下達がアンチの公開処刑を撮影したらしいな。
まだ偶々距離が近かった連中だけだと思うが、一部の1日で居場所を特定して撮影し終えてくれたのは有難い。
こういうのは早めに対処しておかないとゴキブリのように増殖するからな。
「全て承認しておいてくれ」
ジェイズが1件ずつ承認していく。
ホログラムの画面部分を横から覗いて誰を承認したか一応俺が確認しておいた。
手下だけでなくダンの申請もあった。
ジェイズが全て承認し終え闇の教団チャンネルを表示した。
「闇の教団チャンネルを表示致しました」
アップロードされてる動画がずらりと並ぶ。
全部で12本の動画があった。
俺とマハルダのプロモーション用が2本と眷属達の魔王討伐配信のアーカイブが3本、手下達の動像が6本、そしてダンのコラボ動像が1本だ。
「眷属の手下達の動像を順に再生してくれ」
最初にジェイズが選んだ動像はドニシャの側近のダークナイトであるゾラが映っていた。
動像のサムネには『これが闇の教団に逆らいし愚者の報いだ!!!』と書かれており、血まみれのヒューマンの男の頬をゾラが鷲掴みしている瞬間が切り取られていた。
配下達が俺の意図をどこまで汲み取ってくれるのか気になっていたがこれは期待出来そうだ。
動像が再生されると、石材と粘土で作られた民家の前に立つゾラがホログラムで映し出される。
漆黒の鎧に黒いマントを装備しており茨の装飾が施されたヘルムからは灰色の肌と白く長い髪が見える。
ゾラの顔には相当な力が入っており眉間のシワと射抜かれそうな鋭い眼光が怒りを表していた。
背中の長剣の柄を握りゆっくりと鞘から抜きながら撮影しているホロタに向かって話し始めた。
「信じがたいことに我らが闇の教団の動像に対して暴言を書き込んだ愚か者が居る」
長剣を抜き終わりゾラは顔を右に向けて合図を出した。
すぐにディープダークエルフが別のホロタを持って来て撮影しているホロタに映るような位置で固定して持った。
持って来たホロタには書き込まれたコメントが表示されている。
ゾラが怒り、闇のオーラを全身にたぎらせて叫んだ。
「このような馬鹿は必ず居場所を特定して殺すっ!我らが闇の教団を攻撃するとどうなるのかよく見ておけ愚者共よ!」
ホロタを持って居たディープダークエルフが移動しゾラが長剣を肩に担いで民家のドアに大股で歩み寄る。
ゾラが足でドアを蹴り破り中へと侵入した。
撮影している配下も後に続いて民家の中に入る。
ゾラが大股で歩きながらタンスを殴って吹き飛ばし壁に激突させて粉々にした。
続いてテーブルを蹴って粉砕し壁を殴って大きな風穴を開けると壁の穴から隣の部屋へと侵入した。
部屋には小太りした禿げ頭のヒューマンの男が大量の脂汗をかきながら部屋の隅で震えて縮こまっていた。
部屋に窓はあるが小太りした男が脱出するにはサイズが小さすぎた。
「た、助けてくれ」
小太りの男が弱々しい声を出した。
ディープダークエルフが部屋を物色しホロタを見つけると起動させてユーザーページを表示させた。
闇の教団チャンネルに書き込まれたアンチコメントのユーザー名と一致している。
ゾラが大股で小太りの男へ接近すると片手で茶色いシャツの胸ぐらを掴んで持ち上げた。
「なぜ闇の教団の誹謗中傷なんて書き込んだんだ?」
「ま、間違えたんですっ、酒で酔ってて…」
ゾラが軽く力を入れて小太りの男を容易く宙に浮かせると次の瞬間には地面に叩きつけた。
バチンッと肉が固い床に打ち付けられる音がしてうつ伏せになった小太りの男が吐血した。
「この状況で我々に言い訳をするのか?」
「ぅう゛っ」
小太りの男は何か言おうとするが地面に叩きつけられた影響で言葉が出なかった。
ゾラが右足を小太りの男の頭に乗せグリグリと踏みにじる。
固いゾラのブーツが簡単に頭皮と顔の皮膚を裂き顔面が血まみれになった。
小太りの男が足のプレスから逃れようともがくもゾラの片足で押さえつける力の強さに対抗出来ず、ただ手足をジタバタさせることしか出来なかった。
ゾラが肩に担いでいた長剣を振り下ろした。
床に真っ直ぐ長剣が刺さり小太りの男の鼻先を数ミリ切裂いた。
目の前に突き刺さった長剣を見て小太りの男は恐怖で眼を閉じ萎縮した。
「裏でコソコソするのではなく今面と向かって堂々と言ってみろ!我々闇の教団に対して暴言を吐いても良いと判断したんだろっ!さぁ言えよ!今すぐっ!!!!」
ゾラが床に刺さった長剣を徐々に右へと動かし小太りの男の鼻を剣の刃が斬っていく。
「ああ゛あ゛っ」
小太りの男の口からは濁った悲鳴しか出なかった。
ゾラが小太りの男の頬を鷲掴みにして撮影しているホロタの前に持ち上げた。
ここがサムネに使われたシーンだな。良い画になってた。
ゾラは両手で男の首を持つと、いとも簡単に男の首を捻り頭部を胴体から引きちぎった。
部屋中が血まみれになる中でゾラが小太りの男の頭部を撮影しているホロタの前にかざす。
「我々闇の教団に歯向かう馬鹿は全員こうなると思え!」
言い終わると同時に男の頭部を片手でぐしゃりと握りつぶし血と肉片と脳汁が飛び散る様子をホログラムがバッチリ再現して動像は終了した。
ゾラの奴、成長したな。
まさしく俺の意図を汲み取った公開処刑になっていた。
これだよこれ。
まだアップロードして間もないのにもうコメントが書かれていた。
アンチコメントは無い。
そらそうか。眷属達の魔王討伐とアンチコメント狩りが抜群の効果を発揮している。
コメントの内容は全て闇の教団の信徒による賞賛だった。
ジェイズに頼んで他のアンチ公開処刑動像も一気に見た。
クルクの側近でブラックアウルギャングという種族のフクロウ人間が闇の魔法を連発してアンチ野郎を蜂の巣にして殺していた。
フクロウ人間はスラっと細長い体をしており黒い革のコートとズボン、真っ赤なシャツを着て黒い帽子を被りドスの効いた声で脅していた。
これも迫力があって良かった。
他にはマハルダの手下のダークプリーストやダークマスターが怒鳴り散らしながらアンチを拷問して殺していた。
アンチの公開処刑動像は全て満足のいく内容だった。
これでアンチ対策は完璧だな。
そう思ったが念のため0チャンネルにもアンチが湧いて無いかどうか探るようにジェイズに指示した。
ジェイズが操作している最中に急上昇中のオススメ動像がチラッと目に入った。
サムネには『闇の魔王を倒します』と書かれており真剣な顔の元聖騎士スワトがアップで写っていたのだった。
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