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54 チキンちゃん

ヤバいバレてる。


俺が羽ばたくと同時に天使セルメルから黄金の光が溢れ出し光が頭上に収束すると幾つもの複雑な文字で形成された光輪となった。


天使セルメルが右手の人差し指に白い光の塊を出現させると口元に寄せて俺目掛けて軽く息を吹いた。


瞬間、無数の光の粒がショットガンの様に拡散しながら発射された。


視界が無数の光で一杯になる。


俺は何発もの光を被弾し吹き飛ばされた。


同時に教会の壁が吹き飛び轟音が鳴り響く。


おかげで俺が憑依している鳥の身体が外に飛ばされた。


俺は無我夢中で羽を動かしおぼつかない体勢で何とか空を飛ぶと教会と違う方向へと進んだ。


魔法の粉も持ってないし憑依したこの状態では戦えない。


逃げるしか無かった。


都市の端まで来て近くの建物の屋根に留まった。


もう夕暮れ時だ。


鳥の身体を見ると不思議と怪我は無かった。


手加減したとも思えないし、被弾した時の衝撃はかなりあった。


単に俺には効かなかったということか。


鳥の身体が無事であることをを確認して少し気分が落ち着くと天使セルメルが来てないかどうか周囲を確認した。


レジスタンスの連中は見当たらなかった。


まさかレジスタンスに天使が居るとは驚いたな。


前に俺達が聖王国を攻めた時は天使なんて居なかった。


聖女達が死んだから来たのかもしれない。


ディスランに警戒するよう伝えておくか。


羽ばたいて飛ぼうと思ったが、やけに周囲が静かなことが気になった。


立ち並ぶ家屋や石畳の道、奥の沼まで人が見当たらなかった。


何故だか急に夕陽が沈み夜になった。


視線を感じて正面の路地を見るとフードを被った灰色のローブ姿の人物が立って居た。


夜で暗いが俺は闇だからハッキリ見える。


男か女か分からない中性的な顔でフードの中から俺を見て笑みを浮かべていた。


新手のレジスタンスかと思って俺は慌てて飛び立ち逃げようとしたが妙に既視感があった。


そういえばエルフのナチュド王国で見た気がする。


俺は空中で振り返ってもう一度同じ路地を見たがフードの人物は消えていた。


何だったんだろう。


2回目ということはもうストーカーだ。


何者かに狙われてるとしたら警戒しておかないとな。


俺は上空へ飛んで自分が今居る位置を確認し闇の教団支部へと向かった。


到着すると支部の向かいにある建物の上に留まった。


ほんと一見するとただの教会なんだよな。


三つの屋根の建物になっていて真ん中は3階建てで一番大きく上に塔が建って居た。


1階正面の大きな扉が開き闇の信徒達が中からぞろぞろと出て来た。


全員が着ている黒いローブにはデフォルメされた俺のマークが装飾されている。


新品同様の汚れ一つ無い綺麗なローブだ。


先程入信希望で入った連中が信徒になったらしい。


全員がフードを被り入信前より肌の血色が若干薄くなっていて薄っすら眼にクマが出来ている。


どうやってるのか知らないけどマハルダ式入信儀式は人類の精神に深い影響を与え身も心も闇の信徒になってしまう。


入信さえしたら敬虔な信徒になるのだからレジスタンスであれ凶悪犯であれ人類は信徒にすべきだ。


支部から出ていく信徒の列が途切れたタイミングで俺は正面の扉から支部へと入った。


闇の信徒達が左右の端で机を並べて何やら書類作成をして働いており、奥の禍々しい祭壇付近にはディスランと闇の信徒達が話をしていた。


そして闇の信徒達の前には鶏のような人間がいる。


鶏人間の首には鎖付きの首輪が嵌められている。


しかも鶏人間には羽毛に覆われた乳房があることから雌っぽい。


ジタバタと暴れる度に闇の信徒が鎖を引っ張って制御していた。


「ディスラン様、儂らにはチキンが必要なのですじゃ。脳と身体が必要としているのですじゃ」


まあ確かに鶏肉は高たんぱく低脂肪…って何の話だ。


俺は祭壇に祭られているオブジェの上に留まった。


オブジェをよく見るとダンジョンコアの上で両手を広げる俺を模していた。


こんなの前からあったのかな。


自分の像までは良いけどグッズで販売はしてほしくないな。


そんなことを思っているとディスランが俺に気が付き祭壇に向かって跪いた。


「ようこそお越し下さいました闇神様」


ディスランの声を聞き闇の信徒達全員が慌てて俺の方へ跪いた。


鶏人間も押さえつけられ姿勢を低くさせられている。


「邪魔してすまないなディスラン、遠目から見るだけで声を掛けるつもりは無かったのだがつい先程気になることがあってな」


「も、申し訳ございませんこのチキンは…」


俺も気になったけど、その話じゃない。


「いやチキンの話じゃない、この国に居るレジスタンスのことだ」


「申し訳ございませんっ、弱い烏合の衆でしたので脅威は無いと軽視し野放しにしておりました」


「天使セルメルも含めて脅威無しと思ったのか?」


「っ!?まさかレジスタンスが天使を召喚していたとはっ」


天使のことを知らなかったみたいだな。


偶然だが早い段階でレジスタンスの隠れ家に侵入出来て良かった。


対策を講じることができるからな。


「勝てそうか?」


「私で勝てるかどうかは実際に相手を見るまで分かりませんが、闇神様の眷属の方々であれば間違いないかと」


へぇ、マハルダ達で天使に勝てるんだな。


まあ女神じゃないからな。その手下だから。


「眷属達は俺の命令を遂行してくれているから手が離せない。お前達で探ってくれ」


「畏まりました」


「勝てそうなら殺してくれて構わないがもし余裕があればレジスタンスを入信させるんだ、天使は拘束し捕らえて俺に連絡してくれ」


「はい、闇神様の御心のままに」


「じゃあ後はよろしくな」


飛び立とうと思った矢先、鶏人間の鎖を持った闇の信徒が口を開いた。


「お、お待ちください闇神様ぁっ!」


「ただの信徒ごときが無礼だぞ!」


ディスランが闇のオーラを全身に纏わせて咎める。


「まあいいじゃないかディスラン、俺がここに来るなんて滅多に無いし今回は特別に直接聞いてやろう、何だ話してみろ」


ディスランが闇のオーラを消し鶏人間を横目で睨んだ。


鎖を持った闇の信徒は一瞬気圧されたが熱っぽく話始めたのだった。


「ありがとうございます闇神様!折り入ってお願いしたい事がございまして、どうしても人類をここに見えますチキンにして飼いたいのですっ!」


「…は?」


どゆこと。


「儂らが随分長く女神を名乗る愚者ラチカの奴を信仰していた元聖職者だからなのか、闇の教団に入信させて頂いてからというもの妙に遊びやモンスターに対する欲求が強くなってしまいまして」


規律を重んじる聖職者だった反動で鶏人間を飼いたくなったというのか。


どういう趣味なんだコイツは。


「人類をチキン…というか鶏人間に出来るのか?」


「はい、闇の儀式により授かった力にございます」


「お前だけ?」


「いいえ、元聖職者は殆どが使える闇の力にございます」


なるほどな、こいつ等が人類をチキン化させてしまうと数が減ってしまう。


ディスランには信徒を増やすように指示してるから禁止にでもされてたわけか。


「いいぞ、チキン化とチキンを飼うことを許可しよう」


「ありがとうございます闇神様ぁ!これで心置きなくチキンちゃん達と遊べますじゃ、ほれ感謝をせんかチキンちゃん!産めぇい!」


鎖を持った高齢の闇の信徒が雌の鶏人間に跨り両手で首を絞める。


「グえぇっ!」


どういう仕組みか分からないが首を絞められた鶏人間が鳴きながら股を開き林檎サイズの卵を1つ産み落とした。


「ありがとうと言っておりますじゃ!」


絶対違うだろ。


俺は呆れながら旧聖王国支部を飛び立ったのだった。


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