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53 レジスタンス

「今更聖騎士の残党が何しようってんだ?」


吐き捨てるように言い放つウォーグの男を聖騎士が取り囲んだ。


「お前は我々が連行する」


「そんなことしたら闇の教団が黙ってないぜ!」


ウォーグの男はニヤニヤしながら背後の闇の教団支部を親指で指差す。


「お前はまだ闇の教団に加入してないだろ」


「お前等が邪魔したんだろ!これは闇の教団に対する攻撃だ!」


「いいや、我々は国民の安全を守る為に脱獄した凶悪犯を独房へと連れ戻すだけだ」


金髪白人青目のリーダーっぽいヒューマンがそう言うと聖騎士達が暴れるウォーグを取り押さえ連れていこうとした。


「何事だ、騒々しい」


そう口にしながら闇の教団支部の建物からダークセージのディスランがダークウォーリアーとダークガーディアンの集団を引き連れて出て来た。


列を作っていた入信希望者達が一斉に跪き頭を垂れる。


聖騎士達と取り押さえられたウォーグは立ったままだった。


「脱獄した凶悪犯を連れ戻しに来ただけですよディスラン支部長」


そう言って聖騎士達はウォーグの男を連れたまま立ち去ろうとした。


ディスランがここの支部長を任されていたとはな。


マハルダの右腕みたいな側近だから最重要地域の聖王国支部を管理するには適任ではある。


「待ちたまえ」


聖騎士達が一瞬ビクリと肩を震わせて立ち止まり振り返った。


「何か?」


「その男は我々の所有物だ」


聖騎士のリーダーが眉間にしわを寄せてディスランを見る。


「この男はあなた達の信徒ではありませんよ」


「そいつは自らの身柄を担保に我々が販売している商品を購入している。我々の所有物だ」


「そ、それは知りませんでした、しかし闇の教団の信徒でないのなら聖王国の国民ですので法律に則り…」


「我々の所有物を奪うつもりか?」


ディスランに気圧されて聖騎士のリーダーが尻込みする。


「…くっ、まあいいでしょう死刑囚ぐらい…」


聖騎士達がウォーグの男を解放し、立ち去ろうと歩き出す。


「待ちたまえ」


「…?まだ何か?」


「闇の教団に対する窃盗行為は重罪だ」


「なっ!?解放したじゃないかっ言い掛かりだ!」


あっという間にダークウォーリアーとダークガーディアン達が聖騎士を取り囲んだ。


「違うな、我々が奪い返したんだ。お前達は窃盗犯だ」


「そんなの横暴じゃないか!やはり闇の魔王の組織は国を蝕む害悪!みんな見ただろう!これがコイツ等モンスターの本性なんだっ!目を覚ましてくれっ!!」


リーダーが叫び聖騎士達が勇ましく剣を抜いた。


しかし周囲の人々は跪いて頭を垂れたまま微動だにしない。


ディスランの眼が紫に光り闇のオーラが全身から立ち昇った。


周囲が圧倒的な力の重圧に支配される。


「女神の手駒は犯した罪を認めず相手を非難している!愚かな女神などを信仰しているからこのような蛮行をしでかすのだ!女神と闇神様では信仰する対象としての存在レベルがまるで違う!愚かな女神によって腐敗したこの国を救うべく闇の教団はここに存在しているのだ!!」


ディスランのの発言を受けて周囲の闇の信徒達が拍手をし闇の教団を賞賛する。


続いて入信希望者が拍手をし聖騎士達を除いた全ての人々が闇の教団を称え始めた。


「そうだ!女神は過剰な規律を強いて国を束縛させていた!」


「闇の教団が正しい!」


「女神の力が弱いから負けたんだよ!まだ分からないかっ!」


民衆の声に聖騎士のリーダーは歯ぎしりし、剣を振りながら取り囲んでいるダークウォーリアー達を突破しようとした。


「がはっ」


ダークガーディアンに盾で1発殴られると聖騎士のリーダーは吹き飛び地面に倒れた。


ディスランが聖騎士達の方へと歩み寄る。


「闇の教団は人類の救いとなる組織だ、お前達も平等に救おうと思っている。だから女神と違って一方的に処罰したりはしない、さあ選べ、闇の教団に入信するか窃盗の罪で処刑されるか」


聖騎士達に沈黙が訪れ迷いが生じた。


「聖騎士は力に屈し…」


聖騎士のリーダーが言いかけた時に別の聖騎士が割って入った。


「入信しますっ、だからどうか命だけはお助けをっ」


「俺も自分が聖騎士だから教団に入信出来ないと思って諦めてました、でもチャンスを頂けるのであればこんな偽りの騎士なんか捨てて教団に入りますっ」


次々と聖騎士達が剣を鞘に納め闇の教団に寝返っていく。


「で、お前は?」


ディスランに睨まれ聖騎士のリーダーは悔しそうな顔で観念した。


「…闇の教団に入信させてください…」


「よろしい賢明な判断だ」


ディスランとダークウォーリアー達は支部の建物の中へと戻り、闇の信徒誘導の下で入信希望者は並び直した。


これで良い。


マハルダの伝え方が良かったのかディスランは俺のやりたいことを理解している。


良い判断をした。


俺達は闇の信徒を増やしたいだけだ。


処刑なんて意味が無い。


一安心して別の国に移動しようかと思った時だった。


並んでいた聖騎士のリーダーが教団支部とは別方向に走り出し逃走した。


「ディスラン様にお知らせしろ」


闇の信徒が慌てて支部の中に入って行く。


これじゃ遅い。逃げられるだろう。


ディスランが追う判断をするとも思えないしな。


次見かけたら処刑ぐらいに思ってそうだ。


俺としてはあの状況で逃げ出す聖騎士のリーダーに興味が湧いた。


逃げてどうするつもりなのか気になったんだ。


俺は羽ばたき逃げた聖騎士を上空から追跡した。


鎧を着ていても逃げ足は速いようで北東へかなりの距離を走り続けている。


大きな建物の沼があるところまでやって来てようやく走るのを止め歩き出した。


この辺りはたしか大聖堂があった場所だ。


あちこちに沼が点在している。


聖騎士のリーダーだった男は無事に歩けるところを選びながら進み骨の巨木に囲まれた1件の教会へと辿り着いた。


教会の周辺には5人の武装した冒険者風の者達が警備にあたっている。


俺は教会の屋根に留まり監視を続ける。


冒険者の1人が聖騎士に話しかけた。


「スワトだけか?他の聖騎士は?」


スワトと呼ばれた聖騎士のリーダーは沈んだ面持ちで答えた。


「皆裏切ったよ」


「どういうこと?」


教会の裏からピンクの髪の女冒険者が現れスワトに質問した。


「ディスランに捕まって全員闇の教団に寝返ったんだ」


「そんな気はしてた、アイツ等はレジスタンスの計画に積極的じゃなかったから」


レジスタンスなんてあったのか。


まだ俺達に盾突く者が居たとはな。


まさか戦って勝てるとでも思っているんだろうか。


「闇の魔王達の力を知って最初から心が折れてたんだ、でも俺は違う。隙を見てディスランから逃れたんだ」


「…これでスワトも聖王国を自由に歩けなくなったね」


女冒険者がやれやれと頭を振った。


とここで教会の扉が勢いよく開き綺麗な身なりをしたオレンジ髪の少年が飛び出してきた。


「スワト、セルメル様が呼んでる」


「分かった、すぐ行く」


スワトはピンク髪の女冒険者に手を振って教会の中へ入って行った。


生憎全ての窓が閉じられていたので俺も正面の開かれた扉から中に入った。


柱の上部に出っ張った装飾部分があったのでその上に留まって教会内部を見物する。


奥の祭壇を見ると白い翼を生やした白髪の天使が居た。


天使は金の装飾が施された純白のローブを着ており微笑みながらスワトを真っすぐ見て居たのだった。


「扉を閉めてください」


天使の透き通った声が教会に響く。


オレンジ色の髪をした少年が扉を閉めた。


戸締りの大きな音が収まると、スワトが口を開く。


「セルメル様、申し訳ございません聖騎士の仲間は全員裏切って…」


言い終わる前に天使のセルメルが被せて発言した。


「いいえスワトはよくやりました、憎き黒渦の化物を連れて来たのですから」


そう言うとセルメルは両目をカッと見開き柱に留まっている俺に眼光を向けて来たのだった。



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