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43 AI勇者

「ナミダが到着したぞ!コアルームに行くまで時間を稼ぐんだグルーゴ!」


「ど、どうやって」


「全てのDPを使って闇のモンスターを買え!それとすぐ戦わせずに会話でなるべく時間を稼げ!」


「わかりやしたっ」


ダンジョンマップのホログラムを見るとグルーゴが大急ぎでダンジョンコアのホログラムを操作しダークゴブリンを1体召喚した。


1体だけだと少ないが無いよりは良い。むしろガチャ中毒のグルーゴがよくDPを我慢してストックしておいたなと感心すべきだ。


グルーゴがダークゴブリンに指示を出し終えると同時に勇者イアがグルーゴの居るコアルームへと侵入して来た。


「よくここまで来たな勇者よ、見事な腕前だがもっと強くなりたいと思わないか?」


グルーゴが焦りを抑え上手く平静を装って話した。


勇者イアは珍しくピタリと足を止めた。グルーゴの声など一切無視してその平凡な黒い瞳はダークゴブリンに向けられている。


止まっていたのは一瞬だけだった。


勇者イアは剣を構えて無駄の無い動きで一直線にグルーゴへと迫った。


「ま、待て勇者っ秘術のスキルを知っているんだ…」


グルーゴは焦り、話で命を繋ごうとする。


先に魔王を倒すという考えは合理的だ。しかし今はダークゴブリンが居る。


ダークゴブリンは闇で創りだした漆黒の短剣を2本両手に構え、素早い身のこなしで勇者イアを止めるべく襲い掛かる。


勇者イアは疾走を維持しつつ腰の小袋に右手を突っ込むと抜き出した握りこぶしをダークゴブリンに向けキラキラした粉を振り撒いた。


「ギッ…」


ダークゴブリンは詰まった様な声を上げ、固まった様に立ち尽くす。


その間に勇者イアはグルーゴへ接近し剣を一振りした。


グルーゴの首がずり落ちて体と共に地面に転がる。


なんてことだ。


衝撃的な光景だ。


グルーゴのことじゃなく、俺は動かなくなったダークゴブリンを見てショックを受けた。


俺達闇の存在は行動阻害系の魔法が一切効かなかった。


ここ1か月の間に知ったことだが、この世界で黒魔法に分類される魔法やスキルに対して闇の存在は完全耐性を持っている。


行動阻害系や呪文の類は全て黒魔法に該当する。闇の存在には効果が無い。


だからこそ最古の魔王シャイファンや聖騎士達は純粋な力比べで俺達と勝負するしかなく結果闇に敗北した。


なのにダークゴブリンはスタン状態になっている。


何故だ。


思考を巡らせると1つ気になることがあった。


確か腰の小袋から何か取り出して粉を振りかけたよな。


魔法じゃない。


…いや待てよ、魔法だ。魔法の粉だ。


そうだ、俺に唯一効いたデバフといえばダンから買った魔法の粉だったじゃないか。


俺が勝手に魔法の粉と呼んでるだけであの粉はアイテムの分類になる。


黒魔法の分類に当てはまらないから闇の存在であるダークゴブリンに効果があった。そう考えて良さそうだ。


答えが分かり意識をグルーゴのダンジョンマップに戻すとダークゴブリンの首も刎ねられており地面に転がっていた。


勇者イアがダンジョンコアに向かって剣を構える。


ダンジョンコアを割られたらこちらから様子が見えなくなる可能性がある。


俺は慌ててダンジョンコア越しに話しかけた。


「久しぶりだな勇者イア」


俺の声を聞いて勇者イアの動きが止まった。


剣を構えたまま口を開く。


平凡な声が聞こえて来た。


「久々の再会だな、何を求めて戻ってきたんだ、さあ話してくれ」


なんとも妙な言い方だ。


俺の言葉が気になってわざわざ会話をする気になったというのは分かるが言ってることがおかしい。


俺は求めても無いし戻って来たわけでもない。それに話してくれと言って素直に応じるような関係じゃないだろ敵同士なんだから。


そもそも俺が誰だか分かって無いかもしれないな。


「俺が誰だか分かってるのか?」


「俺には分かるぜ、きっと闇の魔王本人だろ?それとも、もっとヤバイ存在か?ヒントをくれ、お前が誰か、ちゃんと教えてくれよ!」


何だコイツ。


もう言ってる事が滅茶苦茶だ。


表情も言ってる内容と合って無いし。


しかしこの妙な言い方にどこか既視感があった。


遥か昔、俺の地球時代にこういう奴が居たような…。


人間離れした会話をするまるでロボットみたいな…。


精密な動きと効率的な思考を持った…。


…あ、そうか。


「お前AIか?」


俺の質問に対し勇者イアは今までと同じ何の感情も見られない普通の顔で答えた。


「ハッ、魔王ともあろうものがそんな妄想に取り憑かれているのか? 俺は勇者イア、ただの人間だ。てめえの闇をぶち抜くために生まれてきた、それだけの存在だよ」


AIやんけ。


もう丸出しじゃないか。


返答のスピードも早過ぎだし長いセリフになると早口になるのもAI臭い。


しかし笑えない。


AIならばそれは本当に脅威だ。


先代勇者はカズヤの親だけあって転生者だった。


AI搭載のアンドロイドなんてこの異世界で生み出せるとは思えない。ホロタはあるけど。


そう考えると勇者イアも転生してるぞこれ。


殺したはずなのにここに居るのは再転生した可能性が高い。


何回でも再転生出来るとしたら厄介だ。


「そうか、それは怖いな…ところでお前1回俺の眷属に殺されただろ、死んでみてどうだった?」


どうやって転生してるのか探るつもりで聞いてみた。


そういうパッシブスキルを持ってるのか、女神みたいな誰か後ろに強大な協力者が居るのか。


勇者イアは剣を構えたまま答えず後ろを振り向き入口に視線を向けた。


入口には卵型の赤黒い液体であるナミダとその配下の黒い液体人間達が集まっていた。


俺は勇者イアの脅威を目の当たりにしたこともあり、ナミダを一旦撤退させて他の眷属達との合流をすべきかとも思ったがもう遅かった。


グルーゴのダンジョンコアから入口までは距離がある為ここで叫んで指示を出しても声は届来そうに無い。


むしろ勇者イアには丸聞こえだから俺は黙っていた方が良いだろう。


どうしたものかと俺が必死に知恵を絞っていると、ナミダが動いた。


「あぁ悲しいぃ、我らが同盟ダンジョンに手を出す愚かな人間よぉ!消えしまえぇっ!」


ナミダが悲鳴の様な金切り声で叫ぶと同時に瞳の無い眼からドス黒い液体が勇者イア目掛けて噴き出した。


勇者イアは瞬時に左斜めへと走りナミダの噴水を回避した。


しかしナミダの噴水は放出し続け角度を変えて勇者イアを追いかける。


勇者イアは斜めに走り続け弧を描くようにナミダとの距離を詰める。


そして腰の小袋に右手を突っ込み掴んだ粉をナミダに投げた。


キラキラとした粉が吸い込まれる様にしてナミダに付着する。


途端に宙に浮いていたナミダは落下し噴水が止んで動かなくなった。


異変を察知した配下の黒い液体人間が勇者イアに襲い掛かる。


身体を波にして素早く勇者イアに接近する者や後ろで指先から少量の黒い液体を弾丸の様に連射する者も居た。


勇者イアは剣を逆手に持ち変えた。


すると一瞬で剣が変形し盾となった。


盾は黒い液体を弾き、波となって接近してきた液体人間には粉を振り撒いて行動不能にしていく。


あれは確かドワーフという人類の種族が大昔に作った機装というアーティファクトだ。


今ではロストテクノロジー化していて再現出来ない技術だそうだが勇者だから貴重なアイテムも手に入りやすいんだろうな。


そんなレアアイテムを持った勇者イアが機装の盾を駆使して後方で遠距離射撃をしている液体人間達の元へと一気に距離を詰める。


液体人間達もただ黒い液体を飛ばしてるだけではなく、盾の範囲で防ぎきることが難しそうな足元を狙ったり横に移動して撃つ角度をずらす工夫もしていた。


しかし勇者イアは全てを予見していたかのように全ての黒い液体の弾を盾で防いで見せた。


接近を許してしまった液体人間達がキラキラ光る粉を喰らって次々に動きを止めていく。


そして勇者イア以外全員が行動不能となってしまった。


勇者イアは機装アイテムを盾から杖に変形させ時間を掛けて長い詠唱をし始めた。


臭者イアを中心にして大規模なマジックサークルが地面に浮かび上がり眩い光の渦が発生した。


光が渦巻くスピードがどんどん上昇していき渦から弾き飛ばされた光の粒が青白く変色しパチパチと音を立てて宙を舞う。


そして光の渦が放出され途轍もないスピードで光の円がダンジョンコアルーム全体に広がった。


俺が見ていたグルーゴのダンジョンマップが消えた。


ダンジョンコアのホログラムを操作しダンジョンステータス画面の眷属数をタップして眷属の詳細を確認するとナミダが消えていたのだった。


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