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42 脅威

邪神ゲズムと話してから1か月の時が過ぎた。


朝から俺は本来の闇の姿でダンジョンコアの球を介しグルーゴと喋っていた。


「旦那のおかげで平和になりましたよ、同盟を組ませて貰えて本当にありがとうございます」


「気にするな、こっちもグルーゴからDPで買ったゴブリンがダークゴブリンに進化して役に立ってるしな」


配下を増やす為の人攫い要員としてゴブリンを使ってる。


グルーゴはゴブリンの進化先にダークゴブリンがあることを知らなかった。


進化すると格段に基礎能力が向上して今結構活躍している。


「いえいえこちらこそ魔法の粉を購入させて貰ってますから、へへへ」


「おいおい程々にしておけよ」


毎朝グルーゴと軽い雑談をしている。


配下や眷属の前だとこういう気楽な話が出来ないからな。


俺にとってグルーゴは良き同盟魔王であり話し相手だ。


そんなグルーゴと会話している最中にグルーゴ側から他者の声が聞こえて来た。


「ん?何だどうした?…ああ旦那すいません、ウチのダンジョンに侵入者が来たみたいで」


「面白そうだな丁度暇だし、同期してるからこっちでも見させて貰うよ」


ダンジョンコアのホログラムを操作してダンジョンマップを開きグルーゴのマップに切り替える。


グルーゴの洞窟に1人の冒険者が入って来た。


黒髪黒眼の平凡な男だ。


モンスターの分厚い革を使った軽装備をしていて特徴が無いのが特徴と言わざるを得ない顔をしていた。


あれ、どこかで見た事あったっけ。


何となく既視感があるが凡人顔過ぎて思い出せない。


「へへ、ウチのダンジョンに来たことを後悔させてやりますよ」


グルーゴは意気込んでいる。


しかし俺は妙な胸騒ぎがした。


何か引っ掛かるんだよな。


大きな見落としがある気がする。


グルーゴに警戒するよう伝えるかと思ったが止めた。


理由を聞かれてもフワッとした答えしか返せないからな。


平凡な冒険者は躊躇なく洞窟を進む。


時々地面を蹴って飛んだりしゃがんで進んだりしている。


「くそっ、この冒険者はサーチスキルを持ってるかもしれません、罠を全て見切ってます」


「ならゴブリン達が戦闘だけで勝利しなくてはならないな、いけそうか?」


「心配要りません、特殊な非戦闘スキル持ちの人間は戦闘スキルや能力が乏しい傾向にありますから我がゴブリン軍団が負けはしませんよ」


「だと良いのだがな…」


見たところ罠を解除じゃなくて回避して進んでいる。


どんな罠かまで熟知してるぞこれ。


サーチというスキルがそこまで把握出来るのか疑問に思う。


何か他のスキルかもしくは特別な才能があるんじゃないか。


そう深読みしていると、平凡な冒険者は全てのトラップを回避し灰色のゴブリン達と遭遇した。


一切無駄な動きが無く素早い所作で剣を構え一振りで的確に急所を斬り裂き灰色のゴブリン達を絶命させながら進んで行った。


速い。


そして正確だ。


これほどの腕前があれば冒険者なのに単独行動なのも頷ける。


グルーゴの手に余るかもしれないな。


俺は側近の黒い肌をしたダークゴブリンを手招きしてホロタを受取った。


起動させると闇トーークのチャットでグルーゴの洞窟に一番近い場所に居るのは誰か聞いた。


ナミダが最寄の場所に居たので直にグルーゴの洞窟へ向かうよう指示を出した。


その間にも平凡な顔をした冒険者はどんどん洞窟を進み金属の鎧を着たゴブリンソルジャーや骨の杖を持ったゴブリンメイジ達を斬り伏せていく。


奥へ進むと素早いレッドゴブリンと遭遇した。


フードを被ったレッドゴブリン達が洞窟の壁や天井を疾走し短剣で冒険者の首を狙う。


冒険者は懐から複雑な文字と図形が描かれた紙札の束を取り出すと周囲にばら撒いた。


札がレッドゴブリンに触れると粘々した泥に変わり身体に粘着した。


重かったのかバタバタとレッドゴブリンが落下し粘性の泥を取ろうともがく。


冒険者は素早い剣技でレッドゴブリンの首を刎ねながら先へと進んで行った。


妙だ。


表情に一切変化が無い。戦闘中も無表情のまま顔の筋肉を全く動かさなかった。


それと戦闘もおかしい。


あんな素早いレッドゴブリン達全てに札を当てようと思ったらもっと大量にばら撒くはずだ。


床に不発の札が落ちていない。


必要数だけ取り出して全て命中させている。


ばら撒いただけでヒラヒラした紙の札を正確に全部当てるなんて異常だ。


これもスキルの力かな。


何にせよ驚異的だ。


パワーや魔法でゴリ押ししたわけでもなく素早い相手に最適な手法で突破している。


「グルーゴ大丈夫か?」


「…そ、そんな、あいつはもしかして…」


「何か分かったのか?」


「勇者イアです!最近かなりのハイペースで魔王を狩ってると噂の新しい勇者ですっ」


思い出した。


聖王国でマモルと一緒に居た男だ。


確かすぐカズヤの爆発にやられ肉片になって死んだと記憶している。


なのに何故生きているんだ。


蘇生みたいな魔法やスキルがこの異世界には存在する可能性もあるがだとしたらマモルや聖女キャヒンも復活してるはずだ。


しかしそんな噂は耳にしていない。


それに自己再生スキルなんてのがあったとしても爆発でバラバラになった肉片から元に戻れるとは考えにくい。


となると双子かクローン、もしくは転生が考えられる。


どういうカラクリなのか思考を巡らせつつ勇者イアを注視する。


勇者イアは同じ歩幅で疾走し洞窟ダンジョンの下層へと進んだ。


ゴブリンより一回り大きく水色の肌をしたホブゴブリン達が両手剣や両手斧を構えて勇者イアに襲い掛かる。


勇者イアは珍しくバックステップで距離を取り右端に寄って剣に青いオーラを纏わせ構えた。


ホブゴブリン達が標的に迫ろうと一列になった瞬間を狙って勇者イアは一振りし斬撃を放った。


青い斬撃が全てのホブゴブリンの首を刎ねる。


首を失ったホブゴブリンの死体がバタバタと倒れていく中、勇者イアは無表情で奥へと疾走する。


ダンジョンコア越しにグルーゴの悲鳴が聞こえて来る。


「何ということだっ!我が精強なホブゴブリンがこんな簡単に倒されるとはっ!」


「落ち着け、さっきナミダをグルーゴのダンジョンに向かうよう指示しておいた。もう少しで到着する」


「おおっ流石は闇の魔王様!ありがとうございます、これで勝ったも同然ですな!」


俺は勝利を確信してはいない。


先程の戦闘も驚かされた。


動きが効率的過ぎる。


一撃だった。


これじゃまるでゲームのRTAじゃないか。


グルーゴのダンジョンが簡単というのはあるが俺が脅威に感じているのは単純なスキル差やパワー差じゃない。


やり方だ。


歩き方等の細かい一つ一つの所作や剣の振り方そして敵の攻略方法。


初見のダンジョン相手に全て意識されしっかり考え抜かれている。


勇者イアは賢い。


明らかに俺より頭が回るタイプだ。


前にカズヤが瞬殺したことを考えると俺の眷属達が勇者イアに負けるとは思えないが奴の頭脳は危険だ。


こういう自分より頭の良い相手というのは地球でよく遭遇した。


懐かしい記憶が一瞬蘇る。


自分が1年掛けて出来るようになった仕事を優秀な新人があっさりこなしてきたり、自分が勤務時間外で必死に勉強していたことを仕事中にサクッと学習し終える同僚。


ベースの学習能力が違う連中には自分がどんなに頑張っても敵わない。


何年経過しても差は埋まらなかったしそれどころがどんどん差は広がっていった。


そんな俺より出来るタイプの人間と勇者イアが重なって見えてしまってる気がする。


不安を抱きながらダンジョンマップに意識を戻すと勇者イアはホブゴブリン達を素早く片付け罠を回避しながら

とうとう地下4階まで降りた。


グルーゴの洞窟ダンジョンは前まで地下3階までが戦闘フロアだったがこの1か月で増築したらしい。


地下4階にはグルーゴがガチャで引いた当りキャラのゴブリンジェネラルが居た。


ホブゴブリンより更に一回り大きく立派な金属の剣と盾、そして鎧兜を着ている。


ゴブリンジェネラルが勇者イアを視認し剣と盾を構えて何やらセリフを叫んでいる。


残念ながらダンジョンマップからは音声は聞こえない。


勇者イアはいつもの調子で完全に無視しまだ余裕気味な態度で喋ってるゴブリンジェネラルに向かって十字に剣を振った。


クロス状の斬撃が兜の隙間中央に直撃しゴブリンジェネラルがドサリと前に倒れ伏した。


「ウソだっ!我が最強の僕ゴルルがぁぁっ!」


そうグルーゴが叫んだのと同時に洞窟ダンジョンの入口にナミダが表示されたのだった。

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