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41 邪神ゲズム

俺とナミダは闇のダンジョンへと帰還した。


俺達が今まで散々暴れたからか通った道周辺に侵入者は居なかった。


「お帰りなさいませイリ様」


コアルームに到着した俺にドニシャが跪く。


内装も前と変わらず地面は一面黒い砂で覆われ闇の霧が漂い人の骨塚に根を張った黒い木が何本か見られる。


「ご苦労だったなドニシャ、何か問題でもあったか?」


「いえ、問題ございませんでした」


「侵入者はどのくらい来た?」


「100もありませんでした。出発された直後に弱い魔王のモンスター達が数回攻めて来ただけです」


「そうかそれは良かった、問題が無いに越したことはない」


俺はドニシャとの挨拶を済ませると近くのダークエルフに手伝って貰って小鳥の憑依を解除し本体の闇と合体した。


元の身体の感触を確かめながらダンジョンコアの球のところへと向かう。


タッチして起動させると1件の通知が来ていた。


ホログラムを操作して通知を開く。


『おめでとうございます、あなたはルーキーランキングを1位で終えました。報酬のディナー券を差し上げます』


よし目標達成だ。


これで邪神に会える。


上から1枚の紙がヒラヒラと落ちて来た。


拾って見るとピンク色の紙にスペシャルディナー券とだけ金の文字で書かれていた。


それだけかと思い眼を離すと俺は暗くて広い空間に居た。


俺のダンジョンもカズヤがいじったせいで基本暗くなっているが違う別の場所だった。


「ルーキーランキング1位おめでとう」


背後から声を掛けられ反射的に振り向いた。


白いテーブルクロスが敷かれた円卓テーブルがあり、2脚ある椅子のうち奥の方に紫の髪をしたオールバックの青年が座っていた。


白を基調とする赤色の模様が入ったローブを着ていて手で向かいの空いた席を指した。


「どうぞ座って」


こいつが邪神なのか。


にしては外見が弱そうだ。もっといかついのかと思ってた。


勧められるがままに座ろうと思ったが俺って足無くて浮いてるからな。


「お前が邪神か?」


俺は席を引いて上に座ってるように見せながら質問する。


すると何も無かった円卓テーブルに様々な料理が現れた。


ビーフシチューみたいな皿、何かの肉のステーキ、スパイスの香る肉炒め、揚げたミートボールのリゾット、そしてあらゆる種類のパンが入ったバスケットが並ぶ。


「そうオレは邪神ゲズムだ、よろしくイリ、君の活躍はここから見させて貰ってるから良く知ってる。さあ食べて」


俺の情報は筒抜けかよ。


「そりゃどうも」


俺はバゲットを1本丸ごと掴むと口に入れる。


いつも通り何の感触も無く消えていった。


「凄いよイリ、ルーキーが聖女狩りするなんてさ。しかも四大最古参のシャイファンまで討ち取るとはね」


「嬉しそうだな」


「面白いのさ、イリ達が暴れた後の国なんか可笑しなことになってて実に愉快だ」


なんだそれ。俺達が暴れた後の国なんて行ってないけど何か異常でも起きてるのかよ。


まあでもそれはどうでも良い。


「ゲズムに聞きたい事がる」


ゲズムの顔を見ると落ち着いた様子でナイフとフォークを使い肉を食べていた。


「何かな?言える範囲でなら答えよう」


「俺のことをどこまで知ってるんだ?」


「フフッ、警戒しなくて良いよ、ダンジョンステータス程度の簡単な情報だけさ。特別注目してるから地上での行動は見て把握してるけどね」


「俺がダンジョンマスターになる前は?」


「知らない。新しいダンジョンマスターを誕生させる時は適性のある存在という条件だけ付けて年に1回一括で大規模召喚するから完全にランダムさ」


俺が転生したのもダンジョンマスターになったのも全て偶然だということなのか。


嘘を言ってる感じはしないしゲズムが誤魔化す意味も無いと思う。


「困るよ、俺はダンジョンマスターになんてなりたくなかった」


「どうして?イリがダンジョンマスターに選ばれたのは適性があって向いてたからだよ」


「ダンジョンコアの命連動システムを解除してくれ、あんなのずっと守ってられない」


ゲズムが手を止めた。


口の中の食べ物を咀嚼し終わってからゲズムが話始める。


「全ての存在には役割というのがあるんだ、イリも含めてダンジョンマスターはダンジョンコアを稼働させて守るのが仕事だ」


「なんでそんなことする必要があるんだよ」


「イリ達が利用してるDPはダンジョンコアを通じて変換したマナなんだ。消費されたDPはこの魔界に送り込まれる。そのDPを使ってオレ達魔族がダンジョンのシステムを提供したりアップグレードするってわけだよ」


なるほどね、ダンジョンコアが重要なのは分かった。


「じゃあ俺だけダンジョンコアと切り離してくれ」


「無理だ。一度登録されたらオレでも解除は出来ない」


なんだと。


じゃあ一生俺はあの球守ってなきゃいけないのかよ。


俺は暫く上を仰で顔をゲズムに向けると別の質問をした。


「最後にもう一つ聞きたい、マオという人間が今どこに居るか知ってるか」


この食事だって何も感じないんだよな。


俺はマオを手に入れてまた味わってみたいんだ。


「…予言の書には近々世界を支配する大魔王が誕生すると書かれている。本当なら女神に勝ってオレの願いが叶うことになる。オレは今年のルーキーランキングトップがその大魔王だと思っていたんだ」


ゲズムの願いなんてどうでも良い。


マオの居場所を知りたいだけだ。


ゲズムは俺の顔を見ながら一拍置いて言葉を続けた。


「だからイリには特別に忠告をする。外の連中と関わるな」


また出た外の連中。


「外の連中って何なんだ?」


「この世界の外からやって来た存在。奴らはこの世界のルールを無視した力を持ってる。オレと女神ですら手を焼く危険な連中なんだ関わるな」


マオを攫ったのはモク爺だ。


ゲズムはモク爺が世界の外から来た存在だと言ってるのか。


仙星人とジャンジョンコアに表示されていたけど世界の外の人種なのかもしれない。


「モクットは世界の外から来た存在か?」


「?いいや、もしそうならとっくに世界は滅んでいる。仙星のモクットはこの世界の調停者あるいは管理者と言うべき存在だからな」


だよな。


モク爺自身が外の連中というのを警戒していたし。


「マオはどこだ?ゲズムが取り返してくれるのか?」


ゲズムは少し黙り視線を外して考え事をしてから口を開いた。


「…ルーキーランキング1位には毎回オレが食事の気分で褒美を一つやってる。イリが望むならマオという人間の居場所を褒美で教えてやるが、それで良いか?」


「構わない、教えろ」


「北の永久凍土に行け。そこに奴らの入口がある」


「おい全然具体的じゃないぞ、どんな入口で入った後はどうしたら良い?」


そう質問したが、目の前には円卓テーブルもゲズムも居らず俺は自分のダンジョンに戻っていたのだった。

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