40 聖女とマモル
荒地から聖王国へ戻ると分かりやすくクルクが暴れていたのですぐに合流出来た。
「聖女様!敵の増援です!」
クルクとマハルダは既に大聖堂前の広場で聖騎士団と戦闘中だった。
駆けつけた俺達を見て聖騎士の1人が叫ぶと、気付いたマモルがカズヤに声を掛ける。
「カズヤ!お前まだ闇に仕えているのか!人の道に戻って来いっ!」
クルクは前よりも更にデカくなっていた。筋肉もだが骨格も大きくなっていてパワーが増している。
マモルがクルクの猛攻を捌き剣で受け流していた。
「まだ言ってるよ、僕が人間なんかに成り下がるわけないだろ!」
カズヤが圧縮した闇の球体をマモルに投げる。
クルクの猛攻を防ぐので精一杯だったマモルに闇の球体が直撃しクルクや他の聖騎士と一緒に爆発に呑み込まれた。
闇の煙が拡散し様子が見れるようになるとマモルとクルクは先ほどと同じ攻防を続けていた。
クルクは爆発のダメージを全く受けていないのに対してマモルの顔は皮が捲れ血を流しており動きも鈍くなっている。
「マモル団長!」
見かねたジャスリーが押されているマモルへ駆けつけようとしたがマハルダの黒い炎を剣技で打ち消すのに手一杯だった。
「おおなんと愚かな騎士達よ!崇める神を間違えるとは滑稽だ!しかし今からでも遅くはない、闇の神を信ずる心を持てば過去の過ちを清算し立派な闇の僕に昇華できるぞ!」
「邪教徒の戯言だ!煩いその口を黙らせてやるっ」
ジャスリーがバチバチと放電する斬撃を高速で連投し強引に黒い炎を突破しようした。
マハルダは黒い太陽からどんどん黒い炎を足していき斬撃を止めると回り込んだ黒い炎がジャスリーを襲った。
他の聖騎士達も配下達と戦っていて手一杯だった。
マハルダ専属の全身を黒い鎧で包み黒い剣を持ったダークウォーリアーや黒いロープとフードを装着し黒い杖で魔法を駆使するダークメイジ、クルク専属の黒い人型のサイや黒い人型の牛等が暴れている。
そこへトルジス達ゴーストの配下が加わり聖騎士達は劣勢になる。
広場の中央でマメに支援をしていた聖女キャヒンが胸の前で両手を組み祈りだした。
「女神ラチカよ私に力をお貸しください、信仰と愛の魂を捧げ、生命とマナの沸き立つ奇跡をこの地に!」
キャヒンが白いオーラに包まれ周辺の空間に光のベールが現れる。
範囲内の聖騎士達が驚くべき速さで回復していき青いオーラを立ち昇らせた。
またあの厄介な超回復技か。
マモルの動きが格段に良くなっている。
防戦一方だったのが一変し今度はクルクがマモルの技を防ぐことに集中していた。
マモルが10人に分身し一斉にクルクを斬り付ける。
クルクは両手で10本の剣を捌きながら力み身体を赤くして筋肥大させ全身から黒い湯気を立ち昇らせた。
闇を纏ったクルクの拳がマモルの分身を次々に吹き飛ばしていく。
マモルは分身を解除しパッと消えると瞬時にクルクの背後へと現れ剣で不意打ちの一突きを背中に繰り出す。
ほんの少ししか刺さらずクルクが振り返って殴るがマモルはまた姿を消しまた背後へと現れる。
今度はクルクも察しが付き振り返って殴るとマモルが剣で受け止める。
カズヤの圧縮された闇の球体が何個もマモルに飛来し直撃した。
ゆっくりと闇の煙が腫れていく。
爆発で負傷したはずのマモルは超回復で完治しており平然とクルクに剣を振るっている。
「ナミダ!聖女を狙え!」
状況を改善するため俺がナミダに指示を出す。
ナミダが肥大していき民家を超える赤黒い液体の顔になった。
瞳の無い眼から黒い液体を滝の様に流して波を作り広場の中央に陣取っている聖女目掛けて押し流した。
既に聖女の周囲には盾を持った聖騎士が円状に守備を固めており半透明の多面体の上半分を展開していた。
黒い液体の波が半透明の多面体に接触すると接触面が光ってから消え新たな半透明の面を張る。
半透明の多面体がチカチカと眩しくフラッシュし続ける。
聖女がマナも回復し続けているのか半透明の多面体は再生し続けている。
「おぉ悲しいぃ亀の様に引き籠って手間を掛けさせないでくれたまえっ」
ナミダが黒い液体の波を操作し広がる波から直進する放水へと変わる。
半透明の多面体のうち一面だけに集中して黒い液体を噴射させチカチカと点滅する面の再生を押し切って突破させた。
黒い液体が次々と盾持ちの聖騎士を飲み込み消していく。
聖女の超回復も全身が消えてしまっては治療しようがない。
次第に半透明の多面体が消え、聖女にナミダの黒い液体が遅い掛かる。
「キャヒン様っ!!」
マモルが聖女キャヒンの元へ駆け寄ろうとした。
その隙をクルクが逃すわけもなく、マモルの後頭部を思い切り殴り飛ばす。
「があ゛っ」
衝撃で身体ごと飛ばされたクルクにカズヤが黒い翼を羽ばたかせて飛び込み闇を纏った両手をマモルの身体に当てる。
「死ねマモル!」
カズヤが叫んだ次の瞬間、マモルの全身が爆ぜた。
血と肉片が飛び散り聖女の超回復でも再生されることは無かった。
「そんなっマモルっ!」
「団長ぉー!!」
聖女とジャスリーがマモルの死に衝撃を受け動きに戸惑いが現れた。
マハルダの黒い炎がジャスリーを襲う。
踊る様に攻撃してくる剣の舞ごと燃やして黒い炎が身体を包んだ。
祈りを捧げて身動きが取れなかった聖女はそのまま黒い液体の波に浸かり地面と共に消滅した。
「聖女様っ!」
聖女を失った聖騎士達は回復しなくなり配下達に殺されていった。
静かになり闇の煙が立ち込める広場を俺は上空から眺める。
手強かったな。
4体の眷属達が集まったから勝てた。
俺達がマモルと聖女を殺したことはあっという間にホロタで拡散される。
闇の軍勢を見かけたらこの世界の強者がすっ飛んで来るかもしれない。
俺のダンジョンもドニシャだけだと不安だ。
これからは単独行動の範囲を制限する必要がありそうだ。
「俺とナミダはダンジョンへ帰還する、クルクとカズヤはチームで動いて魔王共を撃ち滅ぼしていけ。道中の人間達は好きにして構わない。マハルダは配下となる人材を集めてダンジョンへ連れてこい。俺が後で闇に堕とす」
「闇のホームが楽しみです」
「闇の王よ、わかった」
「僕は今まで通りね」
「我が神よ、闇を信ずる同志を集めるのは我が得意とすることです、お任せください」
納得して貰えたところで付け加える。
「それと攫われたマオという人間を連れてこい、情報はホロタで共有してくれ。これは全員の最優先事項だ」
俺は言い終わるとナミダと一緒にダンジョンがある旧ホースクト王国領へと向かったのだった。
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