38 最古の魔王
俺達は聖騎士を追い払い南西へと進んだ。
道中にうじゃうじゃ湧いていたアンデッドの人骨達や腐敗した死体を消し飛ばしながら聖王国の防壁を越えた。
元からクレーターだらけだった荒地を進む。
ダンジョンがどこにあるかはアンデッドの出所を見れば分かる。
俺は空高く上昇し上からアンデッドの行列を見て辿った。
荒地の奥に墓石が幾つも置かれた墓地がありそこからアンデッドが沸いている事が分かった。
カズヤ達の元へ戻り進軍を眺めていると夜が明けた。
朝日が昇るとアンデッドが眼に見えて弱体化した。
そこそこ手強かった王冠を被った人骨や白髪赤目の人型モンスターを眷属以外の配下でも倒せるようになり進むペースが速くなった。
俺達闇の軍勢は朝だろうが夜だろうが強さに変動は無い。
この世界での闇は地球でのイメージとは少し違うのかもしれないと思っている。
何故かカズヤが俺を欲しがったり女神が俺を指名手配犯扱いしたりしていることからも俺の認識がズレている気がするんだよな。
闇の性質や詳細を知ったところで俺のやることは変わらない。
今は器のマオを奪還しなくてはならない。
そうこう考えていると昼頃になりようやく墓地へと到着した。
これまでの戦いで100体以上も居た配下のゴースト達は8割程も減った。
聖女とマモル、そしてアンデッド達との連戦だったのだから仕方無い。
残っているのはトルジスとラサヤのコンビとナイトダークレヴェナントが5体、ゴーストとダークレヴェナントがそれぞれ5体しか残っていなかった。
湿気が多く昼でも霧のような気体が漂っている墓地を進んで行く。
霧の中から巨大な肉の塊が現れた。
人型をしているが肉を継ぎ足して作り上げた様ないびつな肉人間がドスンドスンと大地を揺るがしながらこちらに向かって来る。
「同盟の魔王だね」
「おぉ悲しい姿だ」
カズヤが闇の爆弾を投げナミダが黒い液体を飛ばす。
肉塊人間に命中すると一部の肉が消し飛んだ。
しかし20mはあろう巨大な肉塊人間には些細な傷でしかなく何事も無かったかのように歩みを続ける。
そして傷口から大量の青いガスが噴き出た。
俺は急いで離れ遠くからカズヤ達を見る。
青いガスに包まれてもゴースト達は平然としており呼吸してるか怪しいナミダも何とも無さそうだった。
唯一赤ん坊姿のカズヤは影響があるかと思われたが平気な顔をしていた。
配下がゴーストなだけあってカズヤも人外的な特徴があるのかもしれないな。
肉塊人間を見ると傷口が既に塞がり肉も元通りになっていた。
トルジスとラサヤのコンビを筆頭にゴースト達配下が肉塊人間を攻撃するが肉を削いでもすぐに元通りになる。
そして傷を負った事で大量の青いガスをばら撒く。
最初は平気だったゴーストやカズヤの動きが鈍くなっていく。
肉塊人間が射程圏内に入り太りまくった腕でカズヤを殴った。
あの巨体で結構速い。
カズヤは煙の外まで飛ばされた。
肉塊人間が猛攻を仕掛け両腕を何度も振り下ろしゴーストを潰そうとする。
しかし物理的な攻撃はゴーストに効かず煙にやられて弱ったゴースト達も致命傷を与えれない。
肉塊人間がゴースト叩きに夢中になっている間、ナミダの体積が増大していった。
通常はラグビーボール程の赤黒い液体の塊だったのが10mの高さまで膨れ上がった。
「おおおっなんと悲しいっ、消えろっ全部消えてしまえぇぇ」
ナミダが悲鳴の様な叫びを上げると瞳の無い液体の眼から黒い液体が溢れ出し段々勢いが増して黒い津波を引き起こした。
黒い液体の波は高く打ちあがり肉塊人間を飲み込むと手品のように一瞬で消し去った。
波は墓地の大半を侵食し馬鹿デカいクレーターを作った。
「迂回して進め」
飛ばされたカズヤが戻って来るとクレーターを迂回して墓地を進むよう指示を出した。
ナミダが作ったクレーターを越えると濁ったグラスの様な怪しい光のカーテンが宙に浮いているのが見えた。
光のカーテン付近には幾つもの青い火の球がプカプカ浮いている。
俺達は光のカーテンを潜った。何かマイナスな影響を及ぼすトラップかもと思ったが俺達には特に影響は無かった。
潜った先には石で出来た平らな床が正方形に広がっており、複雑な文字のサークルが重なるのもお構いなしにあちこちに書かれていた。
各サークルの中央には石の棺桶が置かれており床の中央には巨大なゴーストが宙に浮いていた。
全身が半透明な白い光で構築されており顔は特徴の無い石像のようで眼に瞳は無い。
光輪を頭上に浮かべてサークレットを額に嵌め長い髪をしている。
軽装備の上に羽織っている長いローブには複雑な模様と文字が縁に刻まれていて腰に剣を帯刀し右手にワンドを持って居た。
そんな巨大なゴーストの近くにこれまで何度か見た白髪赤目の人型モンスターが何体も居る。
どれも質の高いマントを羽織っており巨大なゴーストの前で跪いていた。
「侵入者がここまで来たようだ」
巨大なゴーストが女か男かわからない中性的な声で俺達の登場を知らせる。
跪いていた白髪赤目の人型モンスター達が一斉に立ち上がりこちらに振り返った。
俺は凝視してマオを攫った女を探す。
確かナンシーとかいう名前の女だ。
居た。左から2番目の女だ。
ということはここにマオが居るはずだ。
俺は上空からマオを探す。
「お前達で片付けろ」
巨大なゴーストが白髪赤目集団に命令するも彼らは気が進まない様子だった。
「シャイファン様、恐れながら我々だけでは闇の魔王の軍勢には…」
巨大なゴーストの瞳の無い眼から黄色いビームが照射され反論した白髪赤目の人型モンスターを蒸発させた。
「さっさとやれ」
「「はいっ」」
白髪赤目の人型モンスターたちが慌てて戦闘の構えをとる。
カズヤは既に両手で圧縮させた闇の球を完成させていた。
「ヴァンパイアの魔王風情が束になっても闇に敵うはずないだろ」
そう吐き捨てながら闇の球を放った。
ヴァンパイア達は魔法を放とうと赤いオーラを纏っていたり赤い槍を持って突っ込もうとしていたり翼を生やして飛び立とうとしていた。
先頭のヴァンパイアに高速で飛来した闇の球が命中すると大規模な範囲まで闇が膨張し爆発した。
ヴァンパイア達が跡形も無く消え去り大量の闇の煙が周囲を漂う。
「最後まで使えぬ手下共だったな」
巨大なゴーストのシャイファンが呆れたように愚痴った。
腰の剣を抜き左手で持つと戦闘態勢をとった。
とその時、床の上に幾つも置かれていた棺の一つがガラガラと音を立てて開き中から男が出て来た。
黒髪黒眼の東洋人、マオが棺から立ち上がる。
しかし様子がおかしかった。
首はだらりと下に垂れ肩も落としている。
そして何より眼を引いたのはマオの身体に赤黒いメタリックな蛇が絡みつき首に噛みついていたことだった。
俺は直ちに叫んだ。
「棺から出て来たアイツがマオだ!今すぐ確保しろ!!」
カズヤ達が俺の指示に従いシャイファンから向きを変えてマオの棺へと走る。
シャイファンは戦闘態勢のまま俺を見て居た。
「お前、闇の魔王だな?」
ご名答。
「しかしやけに力が微弱だ、その様な姿なのは欺く為か?それとも本来の力を使えないのか?」
シャイファンが瞳の無い眼で俺を睨む。
一旦シャイファンから距離を置こうと思った時、マオの近くの空中に黒い穴が出現した。
黒い穴から黒い放電が発生し中から老人が現れた。
黒紫のローブを着てフードを被り周囲に黒い小さな衛星を3つ浮かべていた。
モク爺だ。実に久しい。
声を掛けるべく俺はモク爺の元へと羽ばたく。
モク爺はマオに近付くと身体から黒い触手を2本出してマオに絡ませて持ち上げると黒い穴へと戻って行く。
「なっ!?止めろ!何処に行くんだモク爺!!!」
俺が叫ぶと同時にカズヤが圧縮していない簡易的な闇の球体をモク爺に放つ。
闇の球が届く前にモク爺とマオは黒い穴へと入り黒い穴は縮小して消えたのだった。
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