37 マオを追って
俺が連れ去られてしまった。
シャイファンとかいう魔王に捧げると言ってたから早くしないと殺されるかもしれない。
俺は急いで飛び立ちカズヤとナミダの元へ向かう。
南から聖騎士団とアンデッドが交戦しながら移動しておりカズヤとナミダは大聖堂の少し手前で聖騎士団と衛兵を相手に戦っていた。
「女神ラチカ様の神託に示されし化物共よ!この世から消えなさいっ!」
エミが闇堕ちする時に鉢合わせたキャヒンとかいう青い髪の聖職者が聖騎士団を率いて光の魔法を放つ。
「聖女キャヒン様に続け!全団突撃だっ!」
聖騎士のジャスリーが剣を構えてカズヤのゴースト達へと突っ込む。
負けじとカズヤとナミダ、ゴースト達が応戦する。
俺はカズヤとナミダの近くに降下すると指示を出した。
「今すぐにシャイファンのダンジョンを攻め落とせ!道中に向かって来る奴等は皆殺しにしろ!」
カズヤが顔をしかめた。
「急にどうした?」
「マオという人間が攫われた。絶対に奪い返さなければならない」
「なんで人間なんてイリが欲しがるんだよ」
「俺にとってマオだけは特別なんだ」
今マオが俺だと言ってもすぐに理解出来ないだろうからあえて説明はしない。
「ふーん、眷属にでもしたいの?」
「違う。配下にしたいわけじゃない」
「まあいいよ、そんなに欲しいならやってあげる」
「闇の御心のままに」
カズヤとナミダは俺の指示に従い聖騎士団に大規模な反撃を開始した。
カズヤが闇の球体を投げて爆発させナミダが黒い液体を噴射して触れる全てを抉り取る。
「キャヒン様っ!!」
カズヤの爆発で吹き飛ばされたキャヒンにジャスリーが駆け寄り抱き起す。
「ゴホッ…う゛っ」
キャヒンは吐血しており身体が思うように動かせてない様子だったが、胸に置いた手が白い光を放つとたちまち回復し起き上がった。
そして直に胸の前で両手を組み祈りだした。
「女神ラチカよ私に力をお貸しください、信仰と愛の魂を捧げ、生命とマナの沸き立つ奇跡をこの地に!」
キャヒンが白いオーラに包まれ周辺の空間に光のベールが現れた。
範囲内の聖騎士や衛兵達が欠損部位ごとみるみる回復していき青いオーラを立ち昇らせた。
「カズヤ!ナミダ!あの聖女を狙え!」
カズヤが闇の爆弾を聖女キャヒンに向けて投げまくった。
ジャスリーが素早く反応し回転する剣技で斬撃を連射する。
斬撃が闇の爆弾に衝突し途中で起爆させていった。
途中でも広範囲に及ぶ爆発が前衛の聖騎士達を襲うが聖女の創りだしたヴェール内に居るためか瞬時に回復する。
「守備隊!キャヒン様を中心に盾を展開せよ!」
ジャスリーが叫ぶと何人かの盾を持った聖騎士達が聖女キャヒンを中心に円陣をとった。
そして盾を構え半透明の多面体の上半分を展開した。
ナミダが噴射させた黒い液体が半透明の多面体に触れると1面消滅したがすぐにまた半透明の面が復活し黒い液体の身代わりになる。
「おぉ悲しい人間共め、素直に殺されていれば良いものを」
ナミダの愚痴に聖女が反応する。
「女神様がお望みになられる平和にとって化物は有害なの!貴方たちこそ消えて頂戴っ!」
聖女の眼から白い光が溢れ光の風が身体を包んで浮いた。
小粒の光を雨の様に降らせ聖騎士達に浴びせる。
聖騎士達の周囲を光の粒達が踊りキラキラ煌めくと背中に光の翼を生やした。
前衛の聖騎士達が上に剣を掲げると白い光が剣に発生し空高く光が立ち昇った後、溢れた光が圧縮され剣に集約していく。
「黒渦の化物共!この世から出て行きなさい!」
「攻撃部隊放て!」
聖女とジャスリーが叫び聖騎士達が一斉に剣を振ると光の塊が斬撃となりゴースト達を襲う。
ナイトダークレヴェナントを真っ二つにする程の威力でキングダークレヴェナントのトルジスにもダメージが入りカズヤとナミダも斬り付けた。
「効いているぞ!畳み掛けろ!」
ジャスリーが叫び聖騎士達の士気を上げる。
「人間如きが調子にのってんじゃねぇ」
カズヤは斬り傷など気にせず掌の上に創り出した闇の球体をどんどん肥大化させていく。
「闇こそこの世の頂点にして絶対の存在だ!身の程を思い知らせてやるっ!」
肥大させた闇の球体を圧縮させ小さくするとカズヤが聖女キャヒン目掛けて投げた。
闇の球は凄まじい速度で進みジャスリーが慌てて斬撃を命中させるも反応が遅れたせいで前より近距離で爆発した。
圧縮させた闇の球の爆発は大規模で半透明の多面体も聖女のヴェールも全て吹き飛ばした。
周辺の建物は粉々になり光を失った聖女キャヒン達と一緒に遠くへ吹き飛ばされていった。
爆発によって煙のような闇が生じ空中に漂う。
「追うな!直にシャイファンのダンジョンへ直行しろ!」
追撃しようとしたカズヤとナミダを制し先に進ませた。
残された聖騎士達が光を纏う剣で斬撃を飛ばして来るもナミダの黒い液体に消されカズヤの爆弾で木っ端みじんになった。
カズヤとナミダ達は南西へと行軍する。
道を外れて立ち塞がる住居や施設を消滅させながら最短ルートを進んでいく。
通りに出るとアンデッドと聖騎士団が戦っていた。
既に斬り傷が癒えたカズヤとナミダ達が参戦し混戦となった。
カズヤの爆発で吹き飛んだ聖騎士とアンデッドを見て離れた場所からマモル達がやってきた。
「カズヤ!お前は勇者ユウトの息子だろ!なぜ闇に従っているんだ!」
鎧を着た骸骨の剣士達を剣の一振りで切断しつつマモルが叫んだ。
既にカズヤと面識があるみたいだ。
「闇を手に入れる為だ」
カズヤがアンデッドと聖騎士を爆破しながら答える。
「それは何故だ!何がお前を狂わせたんだ!?」
「狂ってない。僕は父を殺したイリの闇が欲しい!真の闇が手に入れば殺されるなんて間抜けな最後にはならないんだ!」
「要は強くなりたいんだろ!だったら俺が鍛えて強くしてやるよ!闇から手を引いてこっちに戻って来いカズヤ!」
まだ離れた距離でマモルが手を止めて真っ直ぐカズヤを見る。
「マモルお前もまだ分からないのか、闇こそが全てを超越した最強の力だ!お前の鍛錬など無意味だと思い知らせてやろうっ!」
「ユウトと俺は友達だった!アイツとの友情に誓ってお前を闇から取り返す!目を覚ませカズヤ!」
マモルが半透明の剣に白い光を巡らせカズヤの方へと走る。
カズヤが闇の球体を無数に浮かべマモルに全弾投げた。
マモルは眼にもとまらぬ速さで剣を操り全ての闇の球を斬撃で起爆させた。
かなり手前で爆発し付近のゴーストやトルジス達が爆弾の被害に遭う。
「その程度かカズヤ!鍛錬の結晶を見くびるな!」
「お手並みを拝見してただけさ、本当の闇の力はこれから見せてやるよ!」
マモルがダークレヴェナント達を豆腐みたいに軽く斬り伏せながらカズヤへと走る。
カズヤは両手に巨大な闇の球体を創りだし瞬時に野球の球程の大きさに圧縮させ撃ち放った。
前とは全く違う弾丸のような速さにマモルは出遅れたものの到達するまでに2つの闇の球を斬撃で斬った。
今度はマモルの近くで2つの闇の球が爆発し建物を含めて広範囲の全てが吹き飛んだ。
道には巨大なクレーターが2つ出来、闇の煙が漂う。
「言うだけあるな」
大きく破損した鎧を脱ぎ捨て傷を負った身体を露にしながらマモルがクレーターの上を歩く。
漂う闇の煙を手から発する光の波で打ち消していく。
「あれを耐えるなんて人間のクセに生意気だな」
カズヤは両手を使って1つの巨大な闇の球を創り圧縮させていく。
「遅いっ!」
マモルが恐ろしい速さで踏み込んで剣を振りカズヤを斬った。
カズヤは闇の球を失い腹から黒い血を流すも黒い翼で宙に浮いたまま持ち堪えた。
マモルが追撃に剣を振ろうとしたところにナミダの黒い液体が横から飛んできた。
マモルは避け切れず黒い液体が身体の1箇所にだけ触れた。
黒い液体がバクンとマモルの横腹を抉り消す。
「ぐぉっ!?」
マモルがよろけ動きが止まった。
冒険者風の武装をしたヒューマンの男が奥からアンデッドを倒してこちらに向かって来る。
黒髪黒眼をした特徴が無いのが特徴と言わざるを得ない顔の持ち主だ。
「マモルの救助に向かいます。到着しました。安心してください、マモルを助けに来ました」
「ば、馬鹿、イアじゃこいつ等には…ゴホッ」
イアと呼ばれた冒険者風の男が剣を構えてカズヤ達の方へ突っ込んでくる。
所作が機械的で無駄が無く喋り方も含めて妙な奴だと俺は思った。
「マモルの脅威を排除します。剣のスキルを発動させます」
イアが素早く剣を十字に振りクロスした斬撃を飛ばす。
カズヤが闇の球を連射した。
斬撃は初球の爆発で消滅し続く闇の球がイアを直撃し身体をバラバラに吹き飛ばした。
「イア!なんてことだっ!オレが居ながら勇者を2人も失うとはっ…」
「マモル団長!聖女様が重症ですっ!」
「なんだと!?すぐ救護に向かう!」
マモルは牽制の斬撃を滅多打ちすると俺達をそっちのけで引き上げて去って行った。
もしマモルが聖女と一緒に来ていたら勝てなかったかもしれないな。
危ない所だった。
逃げたマモルをカズヤが探そうとする。
「追うなカズヤ!ナミダに続いてシャイファンのダンジョンに向かえ!」
俺は眷属達を急かしてシャイファンのダンジョンに直行させるのだった。
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