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33 聖王国

山を越えると荒廃した大地が広がっていた。


木は枯れて幾つものクレーターがあり所々で骸骨が徘徊している。


俺はもしもの事を考えて高度を上げて飛び荒地を進む。


陽が落ちると枯れ木の上に止まって夜を明かした。


翌朝飛行を再開して飛び続け昼頃になってようやく建物が密集した都市が見えた。


都市の中央には巨大な白い大聖堂があり、青い屋根で統一された綺麗な外装の建物が大聖堂の周囲に並んでいた。


もう少し進んでみると建物の多くが宗教関連の施設だとわかった。


羽を生やした天使みたいな像が彫られ装飾された礼拝堂や、大規模な修道院、神学校の校舎、神殿等があった。



俺は都市の内部へと空から侵入し高い塔の上に止まった。


街を行き交う人の中には修道士みたいなフード付きの紺色ローブを着ていたりもするが、他の都市と比べて明らかにファッションを意識した服装の人が多い。


一見して冒険者と勘違いしそうなオシャレで革装備をこなしていたり、高級そうな生地のシャツやワンピースを身に付けていてカラーリングもパステルカラーやウルトラマリンブルーなど染色が難しそうな色が多かった。


そして何よりありとあらゆる小物系のアイテムを見かけた。


インフルエンサーか知らないが誰かの顔がプリントされたバッグや手拭、様々なデザインのシルバー系アクセサリーだったり、誰かを模したミニチュア人形を荷物やベルトに紐で取り付けていたりした。


ホロタの影響力を感じる光景だな。


さてと、マオに関する情報を持ってそうな人物を探すか。


ホロタ使えば良い話だけどその前にちょっと現地の声を聞いてみたいんだよな。


眷属探しもあるし。


俺は最も人が多い商業区の通りに移動し、チキンとパンが描かれた看板の上に止まった。


看板の店からバターと肉を焼いたような香ばしい匂いが漂う。


そしてその美味しそうな匂いに釣られて多くの人が店を訪れていた。


耳を澄ませば人々の声が聞こえて来る。


「チェイジーのライブ見た?」


「やばいよねー、めちゃ可愛かったぁ」


「明日の限定グッズ買い行く?」


「行く行くぅ!どれだけ長く並んでもチェイジーのポーチは絶対欲しいっ!」


「あれ可愛いよねぇ、ウチはファンクラブで投げ銭してるからさ」


「そっか並ばなくても良いんだよね、良いなぁアタシも投げ銭しよっかな…」


女性二人がホロタ片手に会話してゆっくり店を通り過ぎる。


お前等飯食わんのかよ。こんなに美味そうな匂いしてんのに勿体ない。


それと何というか会話が地球と変わらん。


ホロタのせいだ。


続いて冒険者風の男の2人組が店から出て来た。


「あれホロタ見てやったんだけどなぁ」


「全然出来てないっての」


「動像では簡単に見えたんだけどやってみると難しいのよな」


「インフルエンサーとはいえエピック級の冒険者だからな」


「宿着いたらマモルの動像見てみるわ」


「いやその上行ってどうするよ。マモルはミスティック級相当の実力だからな」


「人類最強の聖騎士団長様だもんなぁ憧れるぜぇ…」


冒険者風の男2人組は仲の良さそうに会話をしながら通りの奥へと行ってしまった。


またホロタの話題だったな。


でも人類最強の人物を聞いたぞ。


聖騎士団長のマモル。眷属にしてやろうじゃん。


聖騎士ということは宗教関連の施設に居そうだよな。


このまま情報収集をアナログでやりはしない。


ホロタで検索してみよう。


俺は意識を本体の闇に切り替える。視界が闇の漂うコアルームになった。


俺は近くに居る髪も肌も黒いダークエルフにホロタの操作をして貰いマモル情報の検索をお願いした。


分からなかったら闇トーークのグループチャットでカズヤに聞いても良い。


少し待つと幾つかマモルに関する情報を得られた。


聖女に会うため大聖堂によく顔を出すらしい。


ダークエルフにホロタを仕舞うよう指示し俺は意識を憑依先に切り替える。


視界が商業区の通り道に戻った。


俺は飯屋の看板を飛び立つと一番目立つ都市中央の馬鹿デカい大聖堂へと向かった。


複雑な装飾が彫られた外壁の巨大な建造物に3つの塔が合体しているような建物だった。


多くの窓はガラスで覆われ閉じられており侵入する場所をグルグル回って探しようやく1か所の開けた窓を見つける事が出来た。


俺は開いた窓枠の場所に止まり中を覗く。


「マモル団長!何とかしてくださいよ!」


茶色のショートヘアの女が大理石の机を叩き椅子から立ち上がりながら叫んだ。


女は剣と鎧を装備していて右肩にだけ青い紋章入のマントを装着しており同じような前掛けを腰にしている。


「と言われてもな。聖女様は黒禍(こくか)の化物への対処で忙しいからシャイファンの討伐には応じてくれないだろう」


そう女に言い返したのはマモルと呼ばれた3mを超えるウォーグ種の男だ。


黒の短髪で顎のラインに整えた髭を生やし鋭い眼光と経験豊富そうな人相をしている。


そして女と同じ装備を身に着けているが剣は柄に装飾の入っており半透明の刀身をしていた。


あの男が聖騎士団長のマモルだな。今回もすぐに見つかって良かった。


「ですから今マモル団長に直接お願いしているのです!」


「残念だがオレはイアを連れて行く為に立ち寄っただけでこれからすぐにまた外回りさ。聖女様は黒禍(こくか)の化物が(くだん)の闇の魔王だと睨んでるからな」


「そんな事を言ってる場合ではありません!闇の魔王は聖王国にまだ目を着けておりませんが既にシャイファンの軍勢は南部襲撃に動いているのです!」


「聖女様は世界と一国を天秤に掛けて世界を取ったんだ、分かるだろ」


「…ではマモル団長の名前を出してキリ―ゲンに指名依頼を出して下さい」


「ダメだアイツは…まあ世間の評判通り最強の冒険者だが竜王エンビ―討伐に執着してるから確実に断られる」


「こんな時に勇者ユウトが居てくれてたら…」


「言うな。アイツは勇者の名に恥じぬ勇敢で誠実な友だった。俺が必ず闇の魔王を討ち息子のカズヤを取り返してやるさ」


マモルが拳を握りしめテーブルに叩く様に置いた。


「こうなったらダン達と協力して…」


「おいおいインフルエンサー如きにどうにか出来る相手じゃないだろ、最古の魔王で最上位のアンデッドなんだぞ」


エへシーンの闇市で魔法の粉売ってたダンとは別人だよな。見た目戦闘しそうに無かったし。


「ではどうしたら良いのですか!」


「落ち着けジャスリー、頭を使うんだ。使える駒は人類だけじゃない」


「…なるほど魔王同士を戦わせるのですね?」


「そゆこと」


「しかしシャイファンに匹敵する魔王は近辺に居ませんが…」


ジャスリーと呼ばれた女聖騎士が考え事をしていると奥のドアが開き部屋に金髪の少年が入って着た。


「ここに居たかマモル!闇の魔王を追う貴方に支援の話を持って来たのだ!」


「久しぶりだなピュマ王子、しっかり寝てもっと背を伸ばすんだぞ。はっはっはっ」


エへシーンのピュマ王子か。残念だけどここにクルクは居ないぞ。


「マモル身長のことは…ん?」


ピュマ王子がマモルから視線を外し俺を見た。


「あ゛ーっ!!豚の傍に居た鳥だ!!あれも闇の魔王の手先だよ!マモルやっつけて!」


唾を飛ばしながら騒ぎまくるピュマ王子を余所にマモルはモノクルを取り出して右目に(かざ)した。


瞬間、マモルの表情が一変し眼が鋭くなると素早くモノクルを仕舞い剣の柄に手を乗せた。


ヤバイっ。バレたかっ。


俺は大慌てで羽ばたき急いで窓から離れ上空へと飛んだ。


ブーンッという鈍い風切り音が聞こえたと思ったら俺の頭を掠めて青い斬撃が凄まじい速さで通過していった。


危ねーっ。


俺は蛇行しながら大聖堂を離れて下へと降りていき民家の青い屋根の端に止まった。


クソッ、どうしようマモルにバレてしまった。


もうマモルを眷属化することは難しいだろうな。


暫くどうするか考えていると俺が止まっている民家の2階の窓が凄い勢いで開きピンクの髪の女が窓から飛び出て下に落下したのだった。



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