31 4体目の眷属
コアルームも酷い有様だった。
闇の霧が漂い暗くなった空間を照明石のオブジェが僅か灯りで薄めている。
地面は全て闇の砂で埋められており点在する幾つかの人の死体が闇の砂から這い出ようともがいているが闇の砂が引きずり込み全員脱出出来そうに無い。
あちこちにある人の骨塚に黒い木が根を張りケタケタと笑う髑髏の実を枝から吊り下げていた。
そしてコアルームの中央には闇の砂から突き出た台座の上にダンジョンコアがあり、その近くに宙に浮く赤ん坊がこちらを見ていた。
赤ん坊は白い肌をしていて何も着ておらず背中に大きな黒い翼を生やしておりゆっくりとしたリズムで翼を動かしてホバリングしている。
赤い眼で俺に視線を移すと意地の悪そうな笑い声を上げ叫んだ。
「イヒヒヒッ、近づくなイリ!そこで止まれ!ダンジョンコアをぶっ壊すぞ!!」
赤ん坊は左手をダンジョンコアに向け闇を掌に集めて球状にした。
これだからダンジョンコアのシステムが嫌だったんだよ。
急所増やしてるだけじゃん。
早くルーキーランキングで1位になって邪神に直接交渉しなきゃだけど、まずはコイツをどうにかしなければいけない。
俺は3人の眷属に待つよう指示し赤ん坊に話しかける。
「お前がカズヤか?」
「は?見ればわかるだろ」
どうやらこの赤ん坊がカズヤらしい。
眷属とは思えない行動をしてる。
俺は本当にこのガキを眷属にしたのか。
「そうだなカズヤ。で何が目的なんだ?」
「イリが欲しい。僕のものになれよイリ!」
何言ってんだコイツは。
アホらしいと俺は思ったが、3人の眷属達は敵意をむき出しにしてカズヤに睨み殺すような視線を向けている。
「そんなことしてどうするんだ?」
「イリほどの存在が分かり切った事を聞くんだな。まあ良い答えよう、イリが僕のものになれば世界は思うがままになるからだ」
どういうことなんだよ。
意味は分からないが、少し安心した。
俺を欲してるということはダンジョンコアを破壊されることは無いという事だ。
「今でもカズヤは好き勝手やってるじゃないか」
ダンジョンリフォーム代が台無しだぞ。
「そんなのダンジョン内だけだ、僕は世界を荒らし回りたい。イリが僕の父を殺して暴れ回ったみたいにね!」
眷属達から話は聞いている。
俺が殺した勇者の子供がカズヤなのだとか。
それを考えるとカズヤが俺に反抗的なのもなんとなく頷ける。
「攻勢組に入りたいなら調整するぞ」
「え」
「カズヤ、大人しく手を下ろしてちょっとこっちに来い」
「ばっバカ!止めろ!僕に命令するにゃぁ~」
カズヤが全身を震わせて抗う素振りを見せたが、まるで絶対的な何かに支配されているかの如く機械的な動きで闇の球体を放とうとしている左手を下げこちらに飛んで来た。
素直なのか素直じゃないのか不明だが、言ったら聞くみたいだな。
「その物騒な黒い球も仕舞いなさい」
「なあ゛っ」
カズヤが悶えるような声を上げ必死に抵抗するも左手に用意していた闇の球体は縮小し黒い粒子になって消えた。
カズヤが眷属だからか俺の命令には逆らえないみたいだ。
だとしたらルールで縛り付けたら良い。
そうしないと何するか分からんからな。
カズヤも外に出たがってたみたいだし俺も寝首かかれるなんて御免だから攻勢に任命する。
だがその前に聞いておかないといけないことがある。
「カズヤあのダンジョン内に沢山居るゴースト達は何だ?」
「僕が従えてたダークウォーカーを進化させたのさ、イリ達が半分殺しちゃったけどね!」
えっ、ダークウォーカーって進化したらダークエルフになるはずだろ。
進化先が分岐でもしてるのか。
「地下1階と地下2階に居た中々に強い王冠を被ったゴーストもか?」
「更に進化した個体だよ、おーいトルジス!ラザヤ!」
カズヤが呼ぶと上で戦った王冠を被った女ゴーストと男のゴーストが現れた。
俺と眼が合うとゴースト達は急いで跪いた。
ゴースト達もカズヤと一緒にダンジョンの外へ出そう。
残しておくとまた地下の内装を滅茶苦茶にするかもしれないからな。
「他の配下はどうした?ダークエルフのゾラ達だとかダークウォーカーは?」
「地下1階と2階の部屋に居るよ」
居るんかい。
俺達を襲ったゴースト達にも殺さないで連れて来るとか命令してたのかもな。
「ちょっとお前等そこでジっとしてろ」
俺はダンジョンコアの球まで移動するとホログラムを立ち上げダンジョンステータス画面を表示させた。
──────────────────
名称:闇の廃墟
マスター:マヨミヤイリ(闇の魔王)
レベル:5
領域面積:324R
コア数:1
ランキング:125/370
配下総数:311/1000
眷属数:4/5
DP:57500
戻る メニュー
──────────────────
配下増えすぎだろ。
またダンジョンレベルが上がってDPもかなり増えてるし防衛はしっかりやってくれてたみたいだな。
続いてイベントクエストからルーキーランキングを確認する。
ルーキーランキングは1位になっており現在のイベントDPは110160DPとなっていた。
よっしゃ1位だ!
後は2週間程この差をキープして逃げ切るだけだな。
イベントクエストの画面を閉じてクエストの画面を表示させると今回も達成していた。
魔王を5体討伐する 達成
魔王を10体討伐する 達成
侵入者を1000討伐する 達成
侵入者を2000討伐する 達成
自ダンジョン領域外で2000以上討伐する 達成
自ダンジョン領域外で5000以上討伐する 達成
フォロワー5万人越えのインフルエンサーを討伐する 達成
フォロワー10万人越えのインフルエンサーを討伐する 達成
配下を2段階進化させる 達成
配下を3段階進化させる 達成
レジェンダリー級以上の冒険者を5人討伐する 達成
勇者を討伐する 達成
クエスト達成報酬のDPは合計32000DPだった。
おまけに上から指輪が2つ落ちて来た。
拾うと1つは赤い宝石が複雑な文字に削られ嵌め込まれた指輪で、もう1つの指輪は宝石の代わりに小さな眼が嵌め込まれている。
後で眷属達にやろう。
前回の報酬も消えちゃったし今度はちゃんと渡さないとな。
ホログラムを操作しクエスト画面を閉じてダンジョンステータス画面から配下情報を確認した。
新しい種族が表示されている。
ダークゴースト、ダークレヴェナント、ナイトダークレヴェナント、クイーンダークレヴェナント、キングダークレヴェナント
こんなにもゴーストに種類があったとはな。
クエストにもあったけど何段階か先に進化してキングとクイーンになったんだろう。
他にもディープダークエルフと、ダークウォーリアー、ダークメイジ、ダークライノ、ダークブル、ダークスパイダーが新しく表示されていた。
一気に増えたよなー。
これだけ増えたということは相当な数のダークウォーカーを配下にしたんだろうな。
意識飛んでた時の俺を見習ってダークウォーカーの調達も積極的にしていかないとな。
そしてカズヤが眷属になっていることも確認した。
ホログラムを操作して配下情報を閉じると領域拡大を表示させた。
ダンジョンレベルが上がったからか1R=400DPに上がっている。
8万DP消費して200R分領域を拡大した。
ダンジョンマップを見るとホースクト王国が俺のダンジョン領域にすっぽり入っていた。
やっと一国分だな。
これ以上広げる場合は纏まったDPが用意出来てからにしよう。
今から溜めたDPは他に使った方が良い。ルーキーランキング1位になったことだしな。
次にアイテム設置/変更からクルクとマハルダ、そして何故か持ってたカズヤのホロタをアップデートした。
ここでやっとかないと忘れるからな。
カズヤがホロタを持って居ても驚かない。あいつ納豆臭いしコミュニケーションツール好きそうだからな。
俺のホロタはダークウォーカーに預けていたから行方不明だ。
アイテム購入からホロタを探し1台購入した。
俺はダンジョンコアの球から離れて眷属達に指示を出した。
「カズヤはゴースト達を引き連れて魔王討伐に行け。道中の国や人間達は好きにして構わない」
「…フンっ、まあ命令だしやってやるよ」
「カズヤ!我らが神に対して何たる言い草か!」
マハルダが激怒しカズヤに詰め寄る。
「知るか。別に敬えとは命令されてないんだもーん」
「何たる侮辱!我らが神がどういう存在か理解しているのかっ!?」
「知ってるさ。だから僕はイリが欲しいんだよ」
「この愚か者めがぁああ!!」
マハルダが闇のオーラを放出し始めたので俺が割って入る。
「まあ待てマハルダ。大事な眷属なんだ、カズヤの意見や個性も尊重してやろうじゃないか」
「おお何と寛大で測り知れない器をお持ちなのでしょうか!我が神がそう仰るのであれば致し方ありませんな、神に免じて今回はカズヤを許してやろう」
マハルダが落ち着き闇のオーラが縮小した。
「それとカズヤお前ホロタ持ってるだろ、招待するから闇トーークのグループに参加して何かあればグループチャットに連絡しろ」
「めんどくせーけど、わかったよイリ」
カズヤが手を叩くとホロタを召喚し小さな手で操作しだした。
「防衛はドニシャに任せる。配下と共にダンジョンを守ってくれ」
「畏まりました」
「マハルダとクルクは侵略と攻勢に出てくれ。なるべく新米魔王を狙ってくれたら良い」
「我が神よ、お任せください」
「わかった」
「それと育てた専属の配下も連れだして良いからな」
ダークウォーカーの進化先は育てた存在に寄る傾向があるんだよな。
多分ダークウォーリアーとかダークブルなんかはマハルダとクルクの専属と思うし。
「それとドニシャとマハルダにはこれやるよ」
さっき獲得したクエスト報酬の指輪をあげた。
ドニシャには宝石の指輪、マハルダには眼の指輪だ。
「何とありがたき幸せ!」
「感謝致します」
マハルダは受け取ると上の階へ移動していった。
続いてクルクが上り、最後にカズヤが出て行った。
俺はマオを探しに聖王国に行こうと思う。
あれ、小鳥居ないな。
仕方無く俺は転がっている骸骨に憑依したのだった。
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