26 ピュマ王子の目的
椅子の裏にあった地下への階段がコアルームに繋がっておりクルクに頼んでダンジョンコアを破壊して貰った。
「フゴォォォォ」
クルクが勝利の雄たけびを上げる。
クルクの扱いを決めなければならないがどうするか悩む。
今居ないモク爺は除外するとしてフィジカルでは眷属最強だし総合で考えても一番強い。
一番強い眷属を防衛に任命するのがベストだとは思うがクルクの性格上じっと留守番なんてしてくれそうにない。
命令したら従ってくれるかもしれないが何処かで壊れてしまいそうな気がする。
「クルク、お前は防衛と攻勢どちらが良い?」
「闇の王、オデはずっと暴れていたい」
だよな。
「ではクルクをルーキー魔王殲滅を主目的とした攻勢要員に任命する。当然俺達のダンジョンに帰って来てくれても良いが基本はダンジョン領域外で暴れてくれ」
「ルーキー魔王はどんな奴だ?」
「誕生して3年以内のダンジョンを持つ魔王のことだ、クルクはなるべく3年以内の若い魔王を探して討ち取ってくれたら良い」
「若い魔王だな、わかった」
「それと連絡手段としてホロタを持っていて欲しい。今からエへシーンに戻って調達しに行こう」
ダンの店にも行きたいし。
俺とクルクはダンジョンを出て元来た道を辿って行った。
もう夜になっていて暗いが俺が闇だからかハッキリと見える。
クルクは相変わらず突進してハイスピードを維持していた。
破壊しながら進んでいたおかげで来た道には粉砕された木や足跡が分かりやすく残っており迷わず帰れそうだ。
クルクは鼻が良いから目印が無くとも目的地まで一直線で行けそうだけどな。
元来た道をひたすら進んでいると夜が明けエへシーンの防壁が見えて来た。
防壁の外には衛兵が数多く配置され厳重に守りを固めていた。
あれだけクルクが暴れたんだからそりゃそうだ。
クルクが堀の手前まで来たところで衛兵が気付き角笛が響き渡った。
お構いなしにクルクは堀にダイブし高速で泳ぐ。
対岸から矢や氷の槍に火の球などが大量に撃ち込んできたがクルクには全くダメージは無かった。
泳ぎ切ると陸へ上がりすぐに突進を開始した。
衛兵が雪崩れ込んできたがクルクが殴りまくり正確に頭を粉砕していく。
出た時に防壁に開けた穴から数十人の騎士団と装備がバラバラな冒険者風の5人と水色のシャツに黒いズボンを着た金髪の少年が出て来た。
あの金髪の少年は確かピュマ王子だ。
そのピュマ王子が怒りをあらわにして口を開いた。
「豚ぁあ!よくもクルクを殺したな!ボクはお前を絶対許さないっ!」
どうやら剣闘士のクルクに相当惚れ込んでたみたいだな。
「早くあの豚を殺せっ!ハムにして食ってやる!殺せっ!殺せーっ!!」
ピュマ王子が充血した眼で喚き散らす。
騎乗した騎士団がクルク目掛けて突撃してくる。
クルクも突撃し拳で騎士団の頭部をヘルムごと粉砕し馬をボディで弾き転倒させる。
数十の騎士団があっという間に壊滅した。
「あの豚はレオ団長も殺してるんだ!騎士団じゃダメだ!金の風チームが殺して!さあ早く!」
ピュマ王子がカンカンに怒りながら命令する。
5人の冒険者がクルクに対峙する。
全員ヒューマンの男女で、杖とフード付きのローブを装備した男とメイスに盾を持ったチェインメイルの男、弓と革装備の女、軽装備の女剣士にピカピカの鎧を着た重装備の女剣士といった構成だった。
赤い髪をした重装備の女剣士が剣を構えながら叫ぶ。
「みんな油断しないで!ボス戦のつもりでいつも通りお願いっ!」
赤髪の女剣士に従い他4人が動いた。
盾を持った男がクルクの前に出て詠唱に入り、後方から矢と竜巻の魔法が繰り出され、茶髪で軽装備の女剣士が右サイドからクルクへ剣を薙ぐ。
詠唱が終わり男の盾が不気味に赤く光るもクルクは盾ごと男の頭部を消し飛ばした。
クルクを襲う矢と竜巻を避けもせずまともに喰らった上で横から斬り付けて来た女剣士の首を左手で握って持ち上げ右拳を顔面に打ち抜いて頭部を消し飛ばした。
赤髪の女剣士は長剣に七色のエネルギーを集約させており一気に正面から踏み込んで溜め込んでいた力をクルクへとぶつけた。
クルクの頭に当たった七色のエネルギーが放電しているかのようにバチバチと弾ける。
しかしクルクは傷一つ負わず右拳で思い切り赤髪の女剣士の顔面を殴り破壊した。
「嘘だっ!カナ!」
魔術師の男が棒立ちになり泣きそうな顔で叫ぶ。
クルクは即行で接近し魔術師の男の顔面を殴り消した。
「ひっ…」
弓の女が恐怖で背を向け逃げ出す。
クルクはその俊足ですぐに追いつき女の後頭部を殴り消した。
首から上を失って地面に転がる冒険者チームの死体を見てピュマ王子は流石に熱が下がったようだった。
「カナは聖王国の異世界人なんだぞ!?…こうなったらノージン君に頼むしかない」
ピュマ王子がそう言うと防壁の内部から1人の男が出て来た。
赤茶色くて硬質な鱗の鎧を着て黒いマントを背中に取り付けていた。
2本の角がヘルムの両脇に取り付けられており両刃の長剣を持っている。
これが剣闘士のクルクと戦う予定だったドラゴンハンターか。
「そんな豚なんかドラゴンの魔王より強いわけが無いよ!ノージン殺っちゃって!」
後ろからピュマ王子が叫んだ。
もはや即闇堕ちしそうな勢いだな。
ノージンは青いオーラを長剣に纏わせクルクの前で構えた。
クルクはノージンの顔面目掛けて闇を纏わせた拳を打ち抜く。
ゴンッと鈍い音がしてノージンの長剣とクルクの拳が衝突した。
長剣が砕け散りノージンがよろけて後ずさる。
クルクは瞬時に追撃し拳でノージンの顔面を殴った。
速い。あの巨体でこんなに速く動けたら対処が難しい。
「ぐぅっ!?」
ノージンは吐血し殴られた衝撃で首の骨が折れたのかふらつくことしか出来なかった。
クルクは一撃で粉砕出来なかったことが気に障ったのか両手の拳でラッシュをかけノージンの頭部を殴りまくり粉砕した。
べちゃりと血が飛散し頭部を失ったノージンの身体はドサリと地面に倒れた。
まさかの結果だったのかピュマ王子が驚愕の表情で一歩ずつ後退する。
「そ、そんな、ノージンは元レジェンダリー級の冒険者でドラゴンの魔王を討伐した経験のある凄腕ドラゴンハンターなんだぞっ。どうして豚ごときが…」
ピュマ王子は防壁の内側まで後退し泣きながら叫ぶ。
「なんでっ何でなんだよっ!あと少しでクルクを雌豚奴隷のオナホペットに堕とせたのにっ!全部お前のせいだぞ豚ぁ!」
おいおいなんちゅうクソガキだよ。
最初から性奴隷目的だったか。
剣闘士のクルクは闇に堕ちる以外救いようが無かったな。
それも豚のクルクに横取りされたわけだけど。
まあ人生って残酷だよ。
だから闇があるわけで。
「覚えてろよっ!聖王国の聖女に頼んで勇者に殺してもらうからな!お前なんか秒殺だぞ!!」
勇者ね。やっぱこの世界に居るんだな。
ピュマ王子はクルクの方角に唾を吐きエへシーンの奥へと逃走した。
本性丸出しだな。将来が楽しみだ。
俺とクルクは防壁の穴からエへシーン内部へと侵入し近くの民家を手あたり次第に探っていきホロタをゲットした。
民家の前で立ち止まりホロタを一緒に進めて初期化とユーザー登録を済ませ闇トーークのグループ招待も完了させた。
「何かあったらホロタで連絡してくれ。俺は本体に戻った時にホロタをチェックするから返事は少し遅くなると思っていてくれ」
「わかった」
意外にもクルクは賢い。
この短時間でホロタの操作も問題無くこなせるようになっていた。
地球でも豚はペットにされるほど賢い動物として認知されていたから違和感はあまりない。
クルクはホロタをピタッとした黒いズボンのポケットに仕舞い込んだ。
「それじゃ今から闇市を…」
言いかけたが、クルクが地面に転がっている死体を食べ始めた。
「オデ腹減った。今は食う」
「…終わったら闇市に行くから言ってくれ」
クルクがムシャムシャとヒューマンの死体を貪る。
ガッつくように食べ食事の速度も早かった。
味に飽きたのか民家から赤い石を持って来た。
赤い石から火を起こして折った住宅の木材を燃やし焚火を作るとちぎった腕や足、腹等を焼いて食べたのだった。
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