21 ホロタ
ホロタの一番大きな図形をタッチしたらホログラムが立ち上がった。
金属板の上に様々な大きさのキューブが映し出され中央に文字が浮かび上がった。
ホロタ バージョン4
と表示されている。
今すぐ始めますか はい いいえ
と続いて表示された。
はいをタップした瞬間俺の身体が水色の光に包まれフォワーンというポップな音がした。
俺からすぐに光が消えて新たな文字が表示される。
ユーザー登録が完了しました さあ始めましょう
キューブが消え茶色い革の軽装備をした金髪ツンツンヘアーの冒険者と背景の大きな木の部屋内部が1/10スケール程度に映し出された。
『皆さんこんにちは、エリート級冒険者のリッキーです。今日は実際に冒険者のクエストを実践してみたいと思います…』
リッキーと名乗る冒険者が話始めた。
まるでyootubeだな。
ホログラムの手前には平面的な画面が表示されておりユーザーと画像が沢山掲載されていた。
一番上の画像を見るとエリート冒険者リッキーの初心者向け冒険者講座とある。
サムネみたいなものか。
画像が大枠で括られているしホログラムの内容と一致しているからこれを今選択している状態ということなのだろう。
選択されたサムネの下にはオススメがいくつも並んでおり画面左側にはチャンネルユーザーのアイコンでまとめられ画面右側にはサムネがまとめて表示されている。。
そして最上部にはサーチ枠があった。
サーチをタップすると下に文字群が表示された。
恐らくキーボードだ。
地球の文字ではないが何故かどういう意味か分かる。
俺はマオに相当する文字を入力してみた。
候補のチャンネルユーザーとサムネが出て来るがどれもマオというワードと一致していない。
人だった頃の俺に似た人物は見当たらなかった。
何か手掛かりが見つかるかもと思ったが見当外れだったみたいだな。
ガッカリしつつ俺はホロタをサーフィンする。
トレンドは容姿の優れた王族の日常系と有名冒険者の戦闘、そしてフード系だった。
同じ人間だからか地球と結構趣向が似てると感じた。
でも地球との相違点が一つあって編集みたいなのは無さそうだった。
効果音やエフェクト、各種映像演出みたいなのは一切無い。
しかしそれがかえってリアルで面白いこともある。
冒険者チームが強敵のモンスターと戦うホログラムなんかはリアルさが緊張感を高めるから余計な編集が無くて良かったと思った。
引き続きホロタのサーフィンをしていると興味深いチャンネルを見つけた。
都市伝説系のチャンネルで暗黒時代の謎やドワーフの伝説的な秘宝など様々なトピックが投稿されている。
その中にホロタの裏の世界というのがあった。
タップしてホログラムを再生させると覆面のローブ男がホロタ片手に語りだした。
『─あるんですよ裏の世界が。その名も0チャンネル!ホロタの規約に引っ掛かる情報なんかがここで知れます…』
某掲示板の香りがするな。
都市伝説系の投降者が言う通りにサーチ枠へ文字を入力すると検索候補に0チャンネルというユーザーが1件ヒットした。
タップしてみると表示内容がガラリと変わりユーザアイコンとコメントがセットになった吹き出しがズラリと並んでいる。
吹き出しをタップすると他ユーザーからの反応や意見のコメントが別の吹き出しとして繋がっていた。
0チャンネルは某SNSみたいな感じらしいな。
見つかったら罰せられそうな政治的な愚痴が大半だ。
面白そうなコメントは無いのかな。
タイムラインを暫くスクロールして眺めていると気になるコメントを見つけた。
『1発キメたいなら良いの入ってるよ』
どういうこったい。
この世界にも気持ち良くなる魔法の粉でもあるのか。
いや魔法の粉ってこっちの世界じゃ一般名詞かもしれない。
俺って食の楽しみ消えちゃってるから魔法の粉が俺に効果あるのか気になる。
人間辞めてるし副作用とか怖くないもんね。
ちょっと球で売ってるか見てみるか。
俺はホロタを片手にダンジョンコアの球に聞いてみた。
「アイテム購入リストに気持ち良くなる粉みたいなのってある?」
「幻覚のトラップや程度の低い薬草の香りを楽しむ趣向品ならございます」
「それってアロマでしょ?」
「アロマというデータはございません」
この世界にアロマは無いんかい。
魔法の粉は無さそうだな。
俺はホロタの0チャンネルに視線を戻した。
コメントのアイコンを見るとフードと装飾された仮面を被っており個人の特定が出来ないようにしていた。
そして名前を見るとダンとだけ記載されていた。
リプ送ってみよ。
『どんなの?』
送ったリプライの隣を見ると俺のアイコンは真っ黒になっていた。
名前はイリとある。
自動で名前までインプット出来るの凄いな。
リプライを送って数秒後に返事が帰って来た。
『初見さんかな?今界隈で激熱なハイスピード系の仮想体験型を入荷してるぜ』
『ハイスピード系?』
『光の速度で宇宙を駆け巡るような超爽快な感覚をキメることが出来る。興味あるなら来なよ』
行くっきゃねぇなこれは。
今順調だしちょっとぐらい良いだろ。
マハルダがライバルを潰してドニシャがダンジョンを守る、そして俺は新たな眷属を増やして戦力アップというのが今のやるべきことだ。
相応しい眷属を探すついでに一服するだけ。
『どこに行けば良い?』
『そういう話はグループチャットでしてくれ』
何だその機能はと0チャンネルを弄っているとグループ招待のポップが出て来た。
承諾をタップすると0チャンネルの画面には俺とダンのアイコンだけが表示され今までのやり取りも消えた。
画面下部には通話と書かれたボタンがある。
ホロタで通話も出来るんだな。
『エへシーンの闇市でオレの名前を出して探してくれ、薬は他にもドーピングとか毒もあるからよろしくな』
早速ダンからコメントが来た。
エへシーンって確かドニシャの国の隣だったよな。
マオを名乗る人物もそっちに行ったらしいし。
次の眷属はエへシーンで探そうか。
新しく加える眷属にダンを襲わせて魔法の粉を頂こう。
金を払う気なんか1ミリも無い。
『わかった、気が向いたら行くよ』
そうコメントを返してグループチャットを閉じた。
これは連絡手段に使えるな。
ドニシャとマハルダをグループに誘おう。
暫くホロタを操作しているとホーム画面にグループ作成の項目があった。
俺はグループ名を闇トーークにして作成した。
メンバーを追加をタップしてドニシャとマハルダを検索する。
マハルダはまだホロタのユーザー登録を済ましていないからかヒットしなかったが、ドニシャは見つかった。
闇堕ちする前の綺麗なエルフがアイコンに映し出されている。
アイコンをタップするとホログラムに3次元で姿が表示される。
美しく微笑むその姿は俺にとっては不自然でフォロワーとインプを欲しがってるようにしか思えなかった。
俺は上の階、つまり地下二階へと向かいベッドで寝ていたマハルダを起こしてホロタのユーザー登録だけ済ませるとホロタのグループにマハルダとドニシャを招待した。
早速2人にグループ通話で連絡する。
「ドニシャ、マハルダ、聞こえるか?」
「はい、聞こえております」
「ホロタをご利用になられるとは、我が神は時代を深く御理解されておりますな」
「今から憑依体でエへシーンに行くから、後よろしくな。何かあったらホロタのグループ闇トーークで連絡してくれ」
「畏まりました、ダンジョンの防衛はお任せください」
「偉大なるイリ様、お気を付けてお出かけくださいませ」
俺はホロビを終了させるとコアルームに行き鳥かごを開けて水色の小鳥に憑依した。
羽ばたいて地上に出るとエへシーン目指して北東へと飛行したのだった。
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