19 vs炎の魔王ジュキラ
ドニシャが黒い波動を直線に放出させると炎の魔王ジュキラが真紅の炎を吐く。
波動と炎が衝突すると爆発し威力の殺された黒い波動をジュキラは瞬時に創り出したクリスタルの盾で防ぐ。
この攻防が続いていた。
ジュキラが防戦一方で押されている印象だが実際ダメージは無い。
ジュキラは自身の背中に生えてるクリスタルを掴んで食べるとクリスタルの剣を口から吐き出し右手に装備した。
隙を逃すまいとドニシャが黒い波動を総座に撃つがジュキラが身体を退避させつつ盾で逸らす。
ジュキラは薄ら笑いを浮かべてジリジリとドニシャに接近してくる。
それでもドニシャは余裕の表情で堂々とした態度を崩さない。
「やはり炎の魔王はその程度だったな」
「グフフ、強がりか?」
ジュキラの言う通りドニシャが押されている印象だ。
「いいや、オマエの魔法耐性は十分理解した。力技ですぐに片付く」
ドニシャはそう言うと杖に闇を絡ませ両手で持った。
強く地面を蹴ってジュキラへと突進した。
ジュキラが吐き出す真紅の炎がドニシャを襲うも器用に杖を回転させると炎はバラバラに散って小さくなった。
ドニシャが懐に入ると同時にジュキラがクリスタルの盾を構えクリスタルの剣を振り下ろす。
ドニシャは避けず深く腰を落として杖を構えた。
杖先の槍部分がキラリと光り、高速で滅多突きした。
突きで放たれる直線の闇がジュキラの盾をいとも簡単に貫きクリスタルのボディに傷を付ける。
怯むジュキラだったが、突然足元から紫の炎が噴き出しサークル状に広がっていく。
ドニシャはもろに喰らうも杖を突き続けた。
クリスタルのボディに傷を付ける度、紫の炎が出現しまるで波紋の様に炎のサークルが何度も広がっていった。
ジュキラは魔法を使った感じもしないし、自動のカウンターみたいなものかなと俺は思った。
紫の炎はドニシャにも効果があるようで凛とした顔が崩れて気迫ある顔をしていた。
ドニシャは手を休めず滅多突きを続ける。
「はあぁぁぁッ!!」
「グォォォッ!」
ドニシャの気合を込めた叫びとジュキラの苦痛の叫びが聞こえた。
パリンッ
とうとうジュキラのクリスタルのボディが砕け散り、中の炎が消えて頭部のドロドロした液は飛散して消えた。
ジュキラが死んだからか森から真っ赤な炎が消え緑が戻った。
そして開けた場所の中央付近の地面から戦闘前にジュキラが仕舞った結晶オブジェがニョキニョキと飛び出て来た。
出て来た結晶オブジェの中に水晶玉みたいな球体を乗せた台座があった。
恐らくダンジョンコアだろう。
俺は羽ばたきドニシャの方へ飛行する。
退避していたグスロが結晶オブジェの所まで走って来た。
何が目的か一瞬分からなかったが、走る方向を辿るとダンジョンコアがあった。
魔王が死んだ後のダンジョンコアってどうなるんだろ。
グスロが手に入れたらパワーアップでもするのか。
俺は慌てて叫ぶ。
「ドニシャ!グスロを止めろ!」
ドニシャはゆっくりグスロに歩み寄ろうとしていたがが俺の指示を聞いてすぐに黒い波動を放とうとした。
グスロはドニシャの攻撃を一早く察知しダンジョンコアは諦めて丁度真横にあったアスフィの結晶オブジェにしがみつく。
「ま、まて!女王陛下良いのか!?俺を攻撃したら妹も砕けて死ぬぞ!」
「それがどうした」
ドニシャは冷たくそう言い放つと黒い波動をグスロへ直進させダンジョンコアを含めて周囲の結晶オブジェ群もろとも消滅させた。
「私は闇の眷属だ…」
そう呟き地面に散らばった結晶オブジェの破片を見つめる。
俺が近くの地面に降りて来たのに気が付いて視線を移した。
「流石はエルフの女王だな、1人で魔王を倒してしまうとは驚いたぞ」
これで俺のダンジョンは攻めに行けるようになった。
マハルダと合わせて貴重な眷属枠の2つを埋めてしまったことになるが大きな進歩だ。
「勿体ないお言葉です、イリ様から頂いた闇の力を以てすれば容易い事にございます」
「ドニシャの素質あってこそだ、これからの活躍大いに期待しているぞ」
「闇の限りを尽くしてイリ様のご期待に応えましょう」
頭を下げるドニシャの闇のオーラが少し増大した。
マハルダとどちらが強いのだろうな。
魔法やスキルの威力はどちらも凄いとしか言いようが無く差が分からないがドニシャは魔王を倒した。
ジュキラは魔王の中でも名の通った強者というのがエルフ達の認識だった。
マハルダは魔王を倒してないのだから実績だけで判断するとドニシャの方が強いのかもしれない。
しかしマハルダにはチャンスが無かっただけで倒せなかった訳じゃない。
それで言うとモク爺だって魔王は倒していない。
実績や戦闘の内容で判断で明確な差は分からないが間近で見て明らかにモク爺の方がただならぬ雰囲気を放っているのは感じている。
マハルダとドニシャより数段強いの存在だと思う。
行方不明になったのが残念だ。
今どこで何してるんだろうな。
「ところでモクットという老人を知っているか?」
「仙星のモクットという存在でしたら多くの伝説を耳にしております」
「そう、その仙星のモクットのことについて聞かせてくれ」
「この世界、マースが危機に陥った時に現れ災厄を鎮める逸脱した存在だと聞いています。エルフにとっては特に縁とゆかりのある存在でしてエルフに魔法を授けたのが仙星のモクットなのです」
確かに逸脱してる雰囲気だったな。
管理者というか世直し爺さんみたいなことしてたのか。
だからあの赤黒い蛇に拘ったりしてたんだな。
「具体的にモクットは何をしたんだ?」
「今から約3500年程前の第三次神戦において女神ラチカが過剰に解き放った天使の大群を片付けたり約1300年前の暗黒時代では手に負えない災厄とされていた外来種を一掃したそうです」
いや歳いくつよ。
救世主みたいなことしてたみたいだし人間止めてそうだ。
そんなのを闇堕ちさせちゃったんだよな。
まあ俺は別にこの世界がヤバい事になっても良いんだけどさ。
「ふーん、まあそのモクット、俺はモク爺と呼んでるがつい先日まで俺の配下だったんだけど行方不明になったんだ」
「まさかあの仙星のモクットを従えていらっしゃったとはっ!」
「今何処に居るか知ってる?」
「申し訳ございませんが現在の情報は耳にしておりません」
「そっか、じゃあ帰ろう。俺のダンジョンの位置は把握してるか?」
言ってないのに勝手にインプットされてしまってる情報もある。
俺が闇の魔王だということだったり闇の力やスキルのことがそうだ。
帰巣本能的にダンジョンの位置を知ってるかと気になって聞いてみた。
「凡その位置は分かります」
アバウトではあるんだな。
「じゃあ一緒に帰ろっか」
「お手を煩わせて申し訳ございません」
「いいんだよ、まだ聞きたい事もあるし丁度良い」
ドニシャに付いてくるように言い俺は羽ばたいた。
魔法なのかスキルなのかドニシャも宙に浮き俺達はダンジョンがあるホースクト王国へと向かう。
空を飛んでいると森に赤いトカゲ人間達モンスターの残党と戦うエルフ達が見えた。
ドニシャはモンスターの残党とエルフ達に杖を向け、一筋の闇のエネルギーが杖から照射された。
ズズズッと重い消滅音と共に闇のエネルギーに触れたモンスターとエルフそして地形が消えた。
「よく闇が馴染んでいるみたいだな」
「最高の気分です」
ドニシャが満面の笑顔で答えた。
「それは良かった。ところでマオという異世界人を知っているか?」
「はい、王宮で一度会いました」
「そいつはどんな外見だった?」
「黒髪で眼が細く痩せたヒューマンの男でした」
その特徴は間違い無く地球の東洋人だ。
「マオは何をしに来たんだ?」
「女神が下した神託の黒禍の化物を探しておりましたが、この国に噂の欠片も無いと知ると直に旅立ちました」
「東の方へと行ったんだよな」
「はい、次は東にあるエへシーン国へ向かうつもりだと聞きました」
今度暇な時にでも行ってみるか。
いや行かなくてもホロタとかいうので知れるんじゃないのか。
「ホロタにマオは載って無いのか?」
「今すぐ確認致しますっ」
ドニシャは慌ててドレス風の鎧をゴソゴソしだした。
「いや、それよりも俺専用のホロタが欲しい」
ダンジョンコアの機能でDPを消費してホロタをアイテム購入から買えるかもしれないがもしカタログに無かったら眷属に手間をかけることになる。
今入手しておいた方が良い。
「調達して参ります」
「悪いな、余分に2つ頼む」
ドニシャは空中で軽く頭を下げると猛スピードで近くの木製建物へと入り込み、複雑な文字と図形が入り乱れた水色の金属板を2枚持って来た。
流石はドニシャ、仕事が早い。
「お受け取り下さい」
「この憑依した身体では満足に操作出来ないからダンジョンに戻るまでドニシャが持って居てくれ」
「し、失礼しました」
ドニシャは差し出した掌サイズの板を慌ててドレス風の黒い鎧に仕舞う。
「いやありがとう、ご苦労さん」
俺とドニシャは飛行を再開し、視界に入ったモンスターやエルフを消滅させながらダンジョンへと帰還したのだった。
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