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18 ファブウと戦い呪われた炎の森のダンジョンに侵入

ドニシャは変貌した。


長い髪が金色から銀色に変わり瞳は黒く肌は暗い灰色となった。


着ていた白いドレスは闇が作り替えドレス風の気品ある黒い鎧になっていた。


手錠は粉々になっており背筋をピンと伸ばした堂々とした態度で立って居る。


そして全身から膨大な闇のオーラが立ち昇っていた。


「偉大な闇の魔王、少し離れて下さい」


ドニシャが威圧の増した声で俺に言った。


正体を明かして無いのにドニシャは俺が闇の魔王だと理解している。眷属化は成功したようだ。


俺は檻の隙間から出て近くの木の枝に止まった。


直後、黒いエネルギーの塊が一気に膨張し檻が吹き飛んだ。


丁度檻の中を覗き込んでいたヒューマンの武装した男も檻と一緒に吹き飛んだ。


ヒューマンの男が地面に衝突して転がるとボロボロと身体が崩壊し黒い塵になっていった。


黒いエネルギーの塊が小さくなっていくとドニシャが姿を現した。


「素晴らしい力だな」


俺は木の枝から少しだけ声を張ってドニシャに声を掛けた。


「ありがとうございます、これも全て偉大なる闇の魔王の賜物にございます」


ドニシャが片膝を付いて俺に頭を下げた。


「好きに呼んでくれて構わないが俺の名はピーではなくマヨミヤイリだ、よろしくなドニシャ」


「偉大な闇の魔王に相応しい崇高なお名前です、まだ眷属となったばかりにございますがイリ様とお呼びさせて頂きます」


ピーと呼んでくれても良かったんだぞ。


「ああ、そうしてくれ」


「イリ様、早々に申し訳ございませんがどうしても先に頂いたお力を存分に振るいたいのです」


ドニシャが闇に満ちた眼で俺を見る。


それは闇として当然のことだ。


「行ってらっしゃい。俺は少し見学させてもらうけどこの身体は憑依しているだけだから巻き添えとか気にせず全力でやって良い」


ドニシャの力を知っておきたい。


マハルダと比較して強い方にダンジョンの防衛をお願いするつもりだ。


「イリ様、御理解ありがとうございます」


ドニシャは礼を言うと立ち上がり、右腕に少し闇のオーラを集めて斜め右下にサッと振った。


するとドニシャ手前の床に光る文字のサークルが出現し、シワシワの焦げ茶色をした杖が現れた。


宙に浮いている杖をドニシャが掴むと杖全体が闇に包まれ形を変える。


杖は真っ黒になりシワの凹凸が消えてドニシャの背丈を少し越え先端が槍になった。


ドニシャは俺に背を向けると左手で腹に触り宙に浮いた。


魔法かスキルか分からないがドニシャは空中を飛行し燃える森の方へと進む。


俺も羽ばたき後ろを付いて行く。


飛行しながらドニシャが右手に持つ杖を掲げると、黒いエネルギーの波がドニシャを起点に勢い良く発生し、行く手を阻む全てが消滅した。


削り取られた大地の上空を進むと奥に青いトカゲ人間のファブウが見えた。


グスロや他のモンスター達は居らずファブウだけだった。


ファブウはドニシャの姿を見て驚いたのか少し動きを止めたが、おぞましい咆哮を上げてドニシャに向かって猛進して来る。


「どうやったか知らねぇが逃げ出しやがって!今度は身動き出来ねぇぐらいに全身の骨をへし折ってから檻にぶち込んでやるっ!!」


ファブウの背中の青い炎がより一層燃え上がると長く大きな口をパックリ開き青いマグマの様な、周囲の空気を屈折させるほど熱されたドロっとした液体を上空のドニシャ目掛けて噴射した。


ドニシャは避けようとせずそのまま空中を進みながら杖を持つ右手をサッと横に振った。


ブゥーンという鈍い音と共に黒い波動が前方に射出され青い液体を消滅させるとそのままファブウ目掛けて突き進む。


「な゛にっ!?しかしオレ様に魔法は…」


ファブウは恐れず突っ込んだが意気込んでいる途中で黒い波動がファブウの上半身を通過し触れた全てを消し去った。


残されたファブウの下半身は地面に転がり断面から黒い塵になって全てが消えた。


流石は元女王の眷属だけあって十分な力がある。


これはマハルダよりも強いかもしれない。


俺はファブウの死に様を確認してそう思った。


ドニシャは見もせずそのまま飛行を続けている。


燃える森を黒い波動で消し去りながら奥へ奥へと進んで行った。


いつの間にか先に見える森の雰囲気が変わり茨や針葉樹が多くなっていて燃えている炎が全て真っ赤だった。


そして何故か熱をあまり感じない。


ドニシャはお構いなしに進行方向にある全てを消し去りながら進む。


もっと上を飛んで行けばとも思うが、ドニシャの闇が破壊を欲しているのだろう。


この辺りはやたらとモンスター達が多い。


赤いトカゲ人間達に加えて燃える人型の木やら黒い甲羅を背負った赤い半透明のワニ等がワラワラと居る。


もしかするとこの辺に炎の魔王のダンジョンがあるのかもしれないな。


ドニシャはお構いなしに破壊を続けモンスター達ごと燃える森を黒い波動で消滅させていく。


黒い波動に触れなかったことで残った木の切り株と消滅後に残された黒い塵だけしかない奇妙な道をドニシャと俺は飛行しながら進む。


段々と大きな木が見られるようになった。


木の幹や枝まで太く、よく見ると真っ赤な炎が纏わりついているのに葉や枝が全く焼失していない。


他の背の低い植物や茨も同様に燃えているのに焼失していない。


それでもドニシャの黒い波動が通過すると赤い炎ごと植物は消滅していった。


更に先へと進むと森の中にポッカリと開けた場所を見つけた。


ドニシャは暴れるのを止め開けた場所に降り立った。


草木一つ無く乾燥した黒い地面が広がっている。


中央に何かが居た。


先に進むとそれが(およ)そ人型をした8m程の巨大なクリスタルのモンスターだと分かった。


薄赤い透明なクリスタルボディの中には真っ赤な炎が入っておりまるで心臓のように一定のリズムで大小サイズを変えている。


頭の部分は熱で溶解したガラスのようなオレンジと赤のドロっとした塊になっており、光りを放つ2つの眼と屈折するほどの高熱の空気を吐き出す口がある。


ボディの炎が伸縮する度に頭が変形し膨らんだり波打ったりしている。


両腕と両脚は様々な角度でカットされた赤黒いクリスタルで出来ていて、ボディの炎が膨張する度に血が巡るかの様に何本もの鮮やかな赤い線が現れ、炎が縮むと消える。


暑い。いや熱い。


この開けた場所に入った瞬間からかなりの熱を感じる。


憑依した状態ではあまり感覚が鮮明ではないがそれでも熱いとしっかり感じている。


小鳥の身体では持たない。


俺は開けた場所に一番近い木の枝に止まり傍観することにした。


ドニシャは熱の事など全く気にする素振りも無く背筋を伸ばし胸を張った堂々とした態度で進んでいる。


巨大なクリスタルのモンスターばかり注目して気付かなかったが、巨大なモンスターの周りには結晶化したオブジェが並べられていた。


よく見るとモンスターや人のオブジェだった。


巨大なクリスタルのモンスター付近にはドニシャの妹アスフィに似た結晶のオブジェがあるのを見つけた。


そしてシャボン玉の様な水色の膜を纏ったグスロが巨大なクリスタルのモンスターと話していたが歩み寄って来るドニシャに気が付き会話を止めて顔をドニシャに向けた。


「女王陛下?その姿は一体…いや何故ここに?」


グスロは困惑した表情を見せる。


ドニシャが一歩近づくごとに身体を覆う闇のオーラが肥大化し周囲を威圧する。


「偉大なる闇の魔王の力を得て私は生まれ変わった」


「闇の魔王?」


グスロが巨大なクリスタルのモンスターに視線を投げて反応を伺うも何も返ってこず肩をすくめて視線をドニシャに戻した。


「この闇の力で全てを破壊してやる!グスロお前のようなゴミクズ一つ逃さず全て!」


ドニシャが歩きながら両腕を広げてアピールし闇のオーラをより一層増大させた。


「ははっ、何を言うかと思えば馬鹿なことを!2500年前のアラモド時代からこの地に君臨し続けられた炎の魔王ジュキラ様の前でよくそんな事が言えるなぁ」


「馬鹿はお前だ、ジュキラもグスロも闇の力を以てすればゴミ同然!今すぐに消し去ってやる!」


グスロが反論しようとしたがジュキラがクリスタルの手で制して止めた。


そしてジュキラが足を踏み鳴らすと結晶オブジェが地面に吸い込まれて消え口を開いて喋る。


「エルフの女王よ、オマエが欲しい。オマエから才能を感じるのだ、ワタシの下へ来る気はないか?」


「笑わせないでくれる?ジュキラお前は今から私に殺されるの!」


「威勢がいいな、面倒だが力で分からせねばなるまい」


そう言ってジュキラが一歩前に進むと一気に温度が爆上がりした。


俺が居る場所でも熱の上昇が十分分かる。


グスロは危険を感じたのか2人から離れた。


ドニシャが両手で杖を掲げ目の前に圧縮された黒いエネルギーの球体を出現させると線となって放出されジュキラの方へ伸びる。


同時にジュキラは口から真紅の炎をドニシャに向かって放射した。


黒いエネルギーと真紅の炎がぶつかり衝撃を生む。


こうしてダークなエルフの女王と炎の魔王の戦いが始まったのだった。

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