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16 炎の魔王の手下達と森で戦闘

「陛下!」


ノーファン護衛団長が迅速に駆け寄り床にへたり込んだドニシャの身体を支える。


ドニシャは王冠を支えるようにして頭を抱えた。


「私は何という事を…ああ御父様…」


「陛下!お気を確かに!嘆いている暇などございませんぞっ」


明後日の方を見て居たドニシャの視線がノーファン護衛団長へと移る。


「グスロはどこに居るのですかっ?」


「部下達にも尋ねましたが昨日陛下と会談して以降あの男の姿を見た者はいませんでした」


「信じていたのに…」


ドニシャが両手で顔を覆う。


「陛下のお気持ちはお察し致しますが、今は炎の魔王ジュキラの軍勢とヒューマンの犯罪への対処を急がなくてはなりません」


ノーファン護衛団長が強い眼差しをドニシャに送る。


「…ええ、そう、そうです。私としたことが取り乱してしまいました」


ドニシャは立ち上がり気を取り直してノーファン護衛団長を直視する。


ノーファン護衛団長はドニシャの覚悟を感じ取ったのか跪いてドニシャを見上げた。


「ご命令を」


「炎の魔王の軍勢には魔法は通用しません、宮廷魔術師達を後退させヒューマンへの対処に当たるよう伝えなさい」


ノーファンが近くの宮廷魔術師に目線を送ると、宮廷魔術師は頷き退室した。


「ジュキラはどうされるおつもりでしょうか」


「ギルドに救援要請を出します」


「ギルドの冒険者達が到着するまで国が持ちませんぞ」


「非常に残念ですが全国民を率いて一旦森を離れ南のホークスト王国近辺の平原まで大移動し時間を稼ぎます」


「国をお捨てになられるのですかっ」


「民の命には代えられません。私が囮になって注意を引き国民が移動する準備時間を稼ぎます」


ドニシャは文官だろうと思われる線の細いエルフに予め用意されていた書類を渡しギルドへの救援要請を命令すると、魔法を口にしてこげ茶色のシワシワな杖を召喚し両手でギュッと握りしめた。


ノーファンは立ち上がると感心したように頷き持って居る杖をくるりと回してから床をコツンんと叩いた。


「ご立派になられましたね…このノーファン、命を懸けて陛下をお守り致します」


「ありがとう」


ドニシャが杖を振るとドニシャとノーファン達護衛団は宙に浮き部屋を飛んで出て行った。


俺も羽ばたき後ろから追いかける。


奥の森が炎上しており広範囲に燃え広がっていた。


飛行途中で撤退している宮廷魔術師達とすれ違ったがドニシャは何も言葉を交わさず飛行し続けた。


ドニシャとノーファン達は炎の進行方向付近のまだ燃えていない森の隙間へと降り立った。


木で見えにくいが近くにモンスターが沢山居る。


黄色い眼をした赤いトカゲ人間に、サイズも形状もバラバラな赤い宝石のような物体を多数組み合わせた4本足の謎存在、オレンジ色に燃える人型のゴーレム等が大勢群れて周囲を燃やしながら行進していた。


「私はエルフの女王ドニシャです!モンスター達よ止まりなさい!貴方たちの目的は何ですか?」


先頭を進む赤いトカゲ人間がドスの利いた低い声で叫ぶ。


「女王が出て来た!リーダーに伝えろ!エルフの女王だ!」


トカゲ人間が叫んだのを合図にしてモンスター達が一斉に炎を噴射して来た。


「陛下!もう少し距離を置きましょう!」


ノーファンはモンスター達との間に水色の透明な障壁を出現させ炎を遮断するとドニシャと共に後退した。


「効果が無い事は承知の上ですが、派手な魔法を撃って注意を引きつけます」


ドニシャが両手で持った杖を頭上に掲げると緑の光が天高く立ち昇って分散し前方の広範囲に緑の光線が雨の様に降り注いだ。


「流石は女王陛下!素晴らしい魔法です」


「炎の魔王のモンスターには意味がありません」


ノーファンの誉め言葉をドニシャはサラッと流した。


事実、光線を喰らったはずのモンスター達は何事も無かったかのように行進を続けドニシャ達に炎を噴射させている。


ドニシャ達は国民が避難する方角と真逆の北方向へと目指して後退していく。


少しして迫りくるモンスター達が横にずれた。


後ろから巨大なトカゲ人間が姿を現した。


「おっと、本当に女王が居るじゃねぇか」


5mはあろうかと思われる巨大なトカゲ人間は他と違って青い肌をしており、猫背に曲がった背中には青い炎が燃え盛っているのにダメージが無いのか平気な顔をしている。


「くそっ!ファブウだ!陛下はお逃げ下さいっ!私が相手をします!」


「いえ、共に戦いながら後退しましょう」


一瞬互いに見が合ったがドニシャの強い意志を感じ取ったからかノーファンが折れた。


「…わかりました、なるべく後方からお願いします」


ノーファンが部下に命令しドニシャの前方を固めると、ファブウと呼ばれた巨大な青いトカゲ人間が突っ込んできた。


間に展開されていた水色の透明な障壁がタックルで粉々に砕け散り光の粉になって消える。


ノーファンが素早く杖を振ると周囲にボウリング球程の大きさをした綺麗な水の球体が無数に出現し、ファブウ目掛けて一斉に射出された。


「オレに魔法は効かんなあっ!」


ファブウの言葉通り魔法の水球がファブウに着弾しても効いた素振りは無く勢いそのままに突進して来た。


走りながらファブウの背中の青い炎が燃え広がり身体全体を包む。


ファブウが力強く地面を蹴った次の瞬間、ノーファンの身体が吹き飛んだ。


腕と肩から上だけになったノーファンがドニシャを通り越して転がっていく。


ノーファンの無事を確認しようとしたドニシャだったが、あの一瞬でファブウは既に真後ろまで来ており護衛団を筋肉で膨れ上がった太く長い腕で殴り飛ばした。


「…っ!」


ドニシャが素早く杖を振って宙に浮き逃走を図ろうとする。


「逃げんなよ女王様ぁ!」


ファブウの反応は素早くドニシャは空中で足を掴まれ地面に叩きおとされた。


「あ゛ぁっ」


杖を落とし身体を強く打ったことで魔法が解除されドニシャが宙に浮かなくなった。


ファブウがドニシャの胴を鷲掴みして連れ去る。


「げほっ、ぐぅっ」


ドニシャがもがくもファブウの尋常では無さそうな握力に阻まれ意味を成さなかった。


殺されるのはまずいぞ。


ファブウの後ろを俺も付いて行く。


炎の海が行く手を塞ぐも、ファブウが近寄るとスッと炎が割れて通り道が出来た。


奥に進むと下に車輪が取り付けられた檻があった。


ドニシャは赤いトカゲ人間に手錠を嵌められてから車輪付きの檻に入れられた。


何故かファブウ含めてモンスター達がドニシャを置いて奥へと消えていく。


そして直に誰かがやってきた。


それは集団だったがその内1人は俺もよく知る人物だった。


「グ…ス…ロ?」


ドニシャから弱々しい掠れた声が漏れたのだった。

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